新着宝石展示室
( New Gemstone Gallery )
June 2020 : 合成ゴールデン・サファイア (Synthetic Golden Sapphires)
合成ゴールデン・サファイア(Synthetic Golden Sapphires ) 4.40 - 19.85ct |
18.40ct 17.85x13.06x8.04mm | 19.30ct 18.06x13.14x8.14mm | 17.10ct 18.00x13.13x8.41mm | 17.55ct 18.26x13.16x7.97mm | 19.75ct 19.89x15.03x7.67mm |
17.50ct 17.92x13.00x6.02mm | 17.50ct 18.00x13.13x8.41mm | 19.85ct 17.0x13.20x7.92mm | 4.40ct 10.8x8.8x6.2mm | 4.03ct 9.7x7.7x4.7mm |
宝石のコレクションをしていると天然、合成を含めて、品質はともかく世界のあらゆる産地の標本を集める必要があります。
ゴールデン・サファイは、しかし、天然で大きく美しいものは稀な存在で、中々出会う機会がありません。
一方火炎溶融法のサファイアはどんな色であれ、簡単に合成できます。
従って、ルビー、ブルー・サファイア、パパラチア・サファイア等々、人気のある色合いの合成コランダムを入手するのは簡単です。
しかしながら、金色のゴールデン・サファイアとなると、まずお目にかかる機会はありません。
それでも30年余り昔、ツーソンの宝石フェアで何とか探し出し入手したのが4.03カラットのゴールデンというよりは黄色の合成サファイアでした。
酸化アルミニウムにごく少量の酸化ニッケルと微量の酸化クロムを添付すれば簡単に出来るゴールデン・サファイアが何故それほど珍しいのかと言えば、答えは簡単: サファイアに限らず、金色や黄色の宝石は今日全く人気がないからです。
まして合成品となると、とりわけ日本では見向きもされません。
しかしながら、かつての日本では合成の宝石に大層人気のある時代がありました; 敗戦後から10年余り過ぎて、ようやく日々の生活にゆとりが出てきた時代です。 日本の津々浦々の宝石店ならぬ時計店が宝飾品を扱い始めたのでした。
様々な色合いの大きく美しい指輪が照明の下で眩い光を放ち、豊かな生活の象徴として大いに人気を博していた時代でした。
が、こうした宝飾品に使われていたのは、天然の宝石ではありませんでした。
大半は天然のルビー、サファイア、エメラルド、アレクサンドライト、トパーズ等を模した合成コランダムとスピネル、さらに合成ルチル、YAG、チタン酸ストロンチウム等のダイアモンドさながらに眩く煌めく合成の代替品でした。
当時の貧しい日本では稀少で高価な天然の宝石を輸入する余裕などなく、それらを扱っていたの、ごく一部の和光、ミキモト、田崎真珠等の高級宝飾専門店に限られていました。
今回入手したのは、写真のように、20カラット近い大きさの合成のゴールデン・サファイアです。
8個まとめて150カラット近い合成サファイアのルースが合計で1800円と、火炎溶融法サファイのロッドの製造原価並みの値段でオークションに出品されていたものですが、他に応札者はなく、昔ツーソン・ショーにて入手した4.03カラット一個分と同じ値段でした。
合成とは言え、昭和30年時代にはサラリーマンの一か月分の給料に匹敵する値で売られていたサファイアの指輪に使われていたものですから、日本の宝石研磨職人の手になる見事な仕上げのルースばかりです。
思うに、かつて戦後の女性を華やかに飾ったこれらの指輪は、時代の推移と共に使われることなく引き出しの奥深くしまわれたまま放置されていたのでしょう。
今となっては20カラット近い合成サファイア等は無用の長物となり、1グラム6000円余りにも高騰した金の指輪のみが溶かされ、どうにも使い道のないルースがまとめてたたき売られたに違いありません。
4.40カラットのペンダントにセットされたサファイアはアフリカ産の天然サファイアとしてオークションに出品されていたものです。
2000円程度の値段でペンダントに天然の素晴らしくきれいなサファイアが使えるはずはありませんから、よくて合成、悪ければガラスと思いましたが、あんまりきれいなのでダメもとで入手して調べたところ、合成のゴールデン・サファイアでした。
前述のように、今日、合成ゴールデン・サファイアは滅多に見かけませんから、きれいな標本が入手できてよかったと、思っていた矢先に150カラット近いルースがまとめてダンピングされたのを見かけたという次第です。