新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


June 2023 : ピンクのカボション ( Pink Cabochons )


 
薔薇輝石、菱マンガン鉱、桃簾石


薔薇輝石 [ Rhodonite : (Mn2,Fe2,Mg, Ca) SiO3
     薔薇輝石は世界のマンガン鉱山で広範に採れる鉱物です。
宝石ルースとしてカットできるほどの透明な結晶は、ブラジル、ミナス・ジェライスの
モロ・ダ・ミーナ鉱山がほぼ世界で唯一の産地です。
 その他オーストラリア、ペルー、ヨーロッパ各地、アフリカ各地のマンガン鉱山から、
なかなか美しい結晶や結晶団塊が採掘され、美しい色合いのものは、写真のように
研磨されて手軽なアクセサリーとして用いられます。
 最近、アクセサリー業者が世界各地のありとあらゆる鉱物を装飾用に研磨した品を
装飾用にネットで販売しているのに気が付きました。
大半はインドで加工しているとのこと。 したがって、産地情報などは不明です。
 日本でもかつては北海道、青森県、栃木県、鹿沼周辺に無数にあったマンガン鉱山から
美しい結晶団塊を産したものです。
  
71.6ct 39x29x5mm   27ct 26x19x5mm  


菱マンガン鉱 [Rhodochrosite : MnCO3 ]

 

        炭酸マンガンという単純でありふれた組成の菱マンガン鉱は世界各地広範に発見される鉱物です。
 ただし、宝石ルースとしてカット出来る透明な結晶はコロラド州のスウィート・ホーム鉱山と南アフリカのチュワネン鉱山から産したもので、いずれも今日では絶産となっています。
 モース硬度が3と柔らかく、さらに方解石同様、劈開性が強いため、宝石用途には使えませんが、色合いや模様の美しさから、カボションに研磨して手軽なアクセサリーに加工されます。
 写真のカボションは、アルゼンチンのカピジータス鉱山産の結晶団塊を研磨したものです。
 この鉱山はかつては銀を採掘していましたがその脈石として、美しい色合いと模様を持つ菱マンガン鉱が注目され、現在は、もっぱら彫刻や装飾用に採掘されています。
 黒い縞模様の部分には銀が含まれ、拡大すると純銀の結晶が光っています。
 大量に採れるので、アクセサリー専門業者が1個数百円程度で売っています。
48.8ct 39x23x5mm  33.9ct 25x19x5mm  銀黒と呼ばれる縞の部分の銀の結晶   
Capillitas Mine, Argentina   

桃簾石 [ Thulite : Ca2(Al・OH) Al2(SiO4)3 ]
      
 19.8ct 23.6x15.3x6.0mm 13.04ct 21x13x8mm
静岡市
 19 - 61mm(18-41g)
糸魚川

 桃簾石とはマンガンによりピンクに発色する灰簾石の一種です。
ヴァナジウムを含んで青ー紫ー赤の多色のタンザナイトとは同じグループの鉱物です。
 世界的に稀産の鉱物で、ノルウェー北部の原産地、Thulé (チューレ)に因んで命名された鉱物です。
接触変成起源の鉱物ですから、日本の糸魚川構造線の北の糸魚川と、南の静岡県からは装飾品級の
桃簾石を産します。
 今回入手した桃簾石カボションは、装飾用のビーズ等を各種大量に扱っている業者で、インドで研磨されたとのみで、産地情報は不明です。


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