新着宝石展示室 (New Gemstone Gallery )


March 2021 合成宝石 (Synthetic Gemstones )



 
Cubic Zirconia (13.0ct)、GGG (1.85ct)、Synthetic Red Beryls (3.11ct/4.34ct)


                合成ペリドット ??? ( Synthetic Peridot ??? )

        合成ペリドットと称する黄緑色のルースをネットオークションで見かけて
入手しました。
 ペリドットはかつて研究目的で試験的に合成されたことがありますが、
宝石用途として商業的に合成されたことはありません。
 世界中の火山性の岩盤から安定して供給される宝石ですから手間暇かけて合成する意味がありません。
 ペリドットのような色合いですが、これはガラスかキュービックジルコニアの模造品かも知れないと、入手して調べてみました。
 手に取って大きさの割にずっしりと重いので、調べるまでもなくキュービックジルコニアと分かりました。 念のため測った屈折率も 2.157 と正しくキュービックジルコニアでした。
 しかしこの色合いは珍しく、テーブル面がチェッカーボード、背面のキュレット面がラジアンカットと、手の込んだ仕上げがなされています。
 13.0ct 12.9x12.9x7.7mm  


熱水合成レッドベリル ( Hydrothermal Synthetic Red Beryl )
       
天然の結晶に模してカットされた合成品 4.34ct 10.7x6.7x5.8mm 合成レッドベリル 3.11ct 10.3x8.0x4.0mm 
Msde in Russia 
 レッドベリルは1958年にユタ州のトーマス山脈の南、ワーワー山のヴァイオレット鉱区にて、ウラン鉱を探していたハリス一家によって発見され、一家の半ば趣味的な18年間の手作業での採掘の後、ホッジス一家に受け継がれて同様に18年間の採掘が行われました。その間毎年、平均して0.25カラットのルースが得られる結晶が200個、標本質の結晶が1000個程市場に出回っていました。
 1990年代央からは大手の鉱山資本が相次いで大規模な機械化に因る採掘を始めましたが、いずれも経営破綻し、21世紀に入って再びハリス一家が採掘権を取り戻しました。
 しかしながら、彼らの老齢化と鉱脈が枯渇したことで早々に閉山となり、世界で唯一の天然のレッドベリルの産出は永遠に失われてしまいました。
 現在市場で稀に見かけるのは、残された宝石質の結晶からカットされる0.1カラット未満のルースのみです。
 合成レッドベリルはソ連にて1960年代から研究がおこなわれていましたが、商業的な生産は1990年代央になってからです。 とは言え、天然のレッドベリルが余りにも少なく、宝石市場で話題になることすら無かったために合成品が注目されることもなく、おそらくは研究室で出来た結晶の一部がごく僅か市場に姿を見せるのみでした。
 現在ほぼ唯一の流通ルートは、ロシアがタイの企業と合弁でバンコクに設立した企業を通して、おそらくはソ連時代に生産された結晶の在庫品がカットされてネット市場に出てくるものです。

ガドリニウム・ガリウム・ガーネット 【 Gadolinium Gallium Garnet : Gd3Ga2(GaO4)3 】
         ガドリニウム・ガリウム・ガーネットは 自然界には存在しない純然たる人工の結晶です。
 ガーネットと同じ 結晶構造 ”X
3Y2 Z3 の等軸晶系の結晶なのでガーネットの名が付いています。
 1960年代から1970年代にかけて、光学素子、記憶素子、レーザーの発振子等々、様々な最先端技術用途に多彩な人工のガーネットが作られ、現在も多彩な分野で活躍しています。
 GGGも当初はコンピューターの記憶素子として大いに期待されていたのですが、半導体メモリーとの競争に敗れて活躍の場を失いました。
 したがって現在は殆ど製造されていませんが、0.045とダイアモンドを凌ぐ高い分散値と2.03という高い屈折率による眩い煌めきとで、一時はダイアモンドの代替品として市場に出回ったことがあります。
 しかし、ダイアモンドの2倍にもなる比重の高さと、高価な稀元素を原料とするため、製造コストが割高になるため、その後出現したキュービックジルコニアに駆逐されました。
 こうして宝石の世界から消えてしまったGGGですが、恐らくソ連時代に試作された、青や緑の鮮やかな色合いの結晶の古い在庫をカットしたものが散発的に市場に姿を見せます。 
 1.85ct Ø5.6x3.8mm



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