新着宝石展示室
( New Gemstone Gallery )
March 2022 : 柘榴石 (Garnets)
パイロープ、ロードナイト、スペッサータイン・ガーネット |
ナミビアのスペッサータイン
1.38ct 5.9x5.8x4.2mm | 1.47ct 8.5x6.1x3.3mm | 2.22ct 8.5x6.3x4.3mm |
Marienfluss、Epupa, Kunene Region, Namibia |
ナミビアの最北西部、アンゴラと国境沿いに流れるクネーネ川近くにスペッサータイン鉱床が発見されたのは1990年代初頭だった。
ここから採れるスペッサータインは透明度が高い金色やオレンジ色から ”マンダリン・ガーネット”と呼ばれ、高品質のものは、カラット当たり500ドルもの高値を呼ぶ、最上のスペッサータインとして忽ち世界の宝石市場に迎えられたのでした。
しかし、鉱床は最も近い町から900㎞も離れた砂漠地帯の重機の輸送手段も無い辺境の地にあるため、細々と人手による採掘が行われるだけなので、市場の需要を満たすには全く供給量が足りません。
その後、最初に発見された鉱床から10㎞程東に新たな鉱床が発見され、掘りつくされることもなく、ルースが散発的に姿を見せます。
写真の3点も、過去5年間に少しづつ入手したもので、それぞれクネーネ鉱床産スペッサータインの代表的なオレンジ、コニャック色、明るい金色の色合いを示すものです。
パキスタンのスペッサータイン
、 アフガニスタンとの国境沿いに無数のペグマタイト鉱床があるパキスタンからは従来からスペッサータイン・マトリクスの結晶標本を産して来ましたが、宝石質は、ようやく1993年に自由カシミール地域の標高2590mにある Janwai-Folami から結晶とカットされたルースとが報告されました。
スペッサータイン成分が85%、アルマンダイン成分、10%、グロシュラー成分が5%との分析結果が得られていますが、ブランデーのような濃い色合いのルースはしかし、市場に姿を見せることは絶えてありませんでした。
ごく最近、明るい蜂蜜色のルースが姿を見せました。
どうやら新しい産地が発見されたようですが、詳細な産地情報はありません。
1.33カラットのルースは Coast to Coast のMichael Gray の手になる惚れ惚れするほどの秀逸な作品です。
1.33ct 7.4x4.9x3.9㎜
パイロープとロードライト (Pyrope and Rhodolite)
Pyrope 2.732ct 9.2x7.2x5.1㎜ | Rhodolite 1.29ct 6.0x4.3mm Tanzania |
2.732カラットのルースはロードライトといってもよい色合いですが、屈折率が1.739、比重が3.68とほぼ純粋なパイロープの値を示すため、パイロープと判断したものです。
精緻な八角形にカットされた1.29カラットのルースはネット上の写真では殆んど青紫なので、近年姿を見せた、モザンビーク産のパープル・ガーネットが、新たにタンザニアからも採れたのかと入手したものです。
しかし、このルースは蛍光灯下で青紫、自然光では赤紫へと色変わりを見せます。
この色変わりの原因は何か? 精密な化学分析でもしない限り分かりませんが、恐らく鉄礬柘榴石成分の鉄の酸化状態が二価と三価との二つが混在しているのかもしれません。