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March 2025 : クロムトルマリン (Chrome Tourmaline)
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0.57ct Mozambique | 3.02ct Tanzania | 0.76ct Madagascar |
クロムトルマリンは、ウヴァイトードラヴァイト系のトルマリンに微量のヴァナジウムやクロムが含まれ、エメラルド・グリーンの発色を見せるトルマリンです。
ドラヴァイトは1883年にスロヴェニアのドラウ川 (Dobrova)近辺で発見され、Dobrova 川に因んで命名されました。
ウヴァイトは1929年にスリランカの茶の名産地ウヴァにて発見され、地名に因んで命名されました。
19世紀末にビルマ北部のシャン高原を流れるサルウィン川西岸のサレンニにてエメラルドグリーン色のウヴァイトが発見され、クロムによる発色と考えられて、クロムトルマリンと呼ばれるようになりました。
ただし、ウヴァ産のウヴァイトもビルマ産のドラヴァイト共に宝石質ではありません。
1990年代になって、タンザニアから透明な宝石質の結晶が発見され、発色の原因もヴァナジウムよりクロムが多いことが判明し、ようやくその名にふさわしい、エメラルド・グリーン色のクロムトルマリンが登場しました。
しかし数量は極めて少なく、大きさも1カラット程度の小さなルースが稀に姿を見せる程度の、稀な宝石です。
冒頭の写真はタンザニア産の3カラットを超える異例の大きく、透明度の高いルースと、未だに公式な産出の情報が無い、マダガスカルとモザンビーク産のクロムトルマリンという組み合わせです。
これらが本当にクロムトルマリンなのか否か、まず、屈折率を測定して、いずれもトルマリンの上限に近い,
1.654、1.675,1.686 が得られました。
さらに白熱光下でチェルシーフィルタ反応を調べたところ、いずれも赤色反応を示し、間違いなくクロムトルマリンと確認できました。
実は、屈折率の値と、エメラルドグリーンの色合いとは、同じタンザニアで採れるヴァナジウム発色のツァヴォライト・ガーネットと良く似ていますが、ツァヴォライト・ガーネットの方が、明るいエメラルドグリーンなので、外見上から識別が可能です。
タンザニアのクロムトルマリン
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3.02ct 11.2x8.0x5.0mm | 26x11x7mm | |
Landanai, Simanjaro District, Manyara Province, Tanzania |
クロムトルマリンの殆どがタンザニアのランダナイ鉱山からです。
写真のルースは、クロムトルマリンとしては3.02カラットと大きく、その上、殆ど内包物を含まない、稀に見る最上の宝飾品級の逸品です。
ネットオークションのページには日本宝石科学協会のソーティングが付いていて、単にグリーントルマリンと記載してあったのですが、脇石として1.35カラットのダイアモンド付きと(刻印)表示があり、指輪の状態でソーティングに出された品と考えられます。
思うに、二つで1.35カラットと大きな、おそらく主石のトルマリンより高価なダイアモンドで飾られた指輪は、数十万円級の高級な宝飾品であったことでしょう。
それがなぜ、指輪から外して、ルースとしてネットオークションでカラット当たり3000円の超破格で競争もなしに落札されるような事態になったのか、不思議としか言いようがありません。
推定ですが、ほぼ同じ寸法のサファイア、アレクサンドライト、エメラルドといった、より魅力的なルースに出会ったので、クロムトルマリンを外して乗り換えたのかと、想像してしまいます。
おかげで、極めて稀な、大きく美しいクロムトルマリンを入手することが出来たというもの。
マダガスカルとモザンビークのクロムトルマリン
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0.76ct 5.5x5.4x4.0mm | 0.57ct 7.3x3.8x2.9mm | |||
Madagascar | Mozambique |
宝石質のクロムトルマリンがマダガスカルとモザンビークからとれるという情報は未だにありません。
当然のことながら、詳細な産地情報もありませんが、しかし単なるアフリカ産とではなく、産出国が記載されていたということは、まずこれらの国で新しく発見されたとしても不思議はありません。
いずれも1カラット未満の小さなルースですが、素晴らしく透明度の高い美しいものです。
本場のタンザニア産のルースも大半は1カラット未満ですから、新しい産地が発見されたという嬉しいニュースです。