新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


 May   2019  :  アフガニスタンの宝石(Afghan Gemstones) 


 
Morganite 2.85ct  Aquamarine 3.96ct   Kunzite 5.61ct


     
ヌーリスタン地方のペグマタイト  Paprok ペグマタイトの衛星写真  Paprok ペグマタイトでの採掘光景 

     
クリーヴランダイト(曹長石の平板状結晶)上のモルガナイトと煙水晶 13.3cm  アクアマリンとモルガナイト 9cm 39x33x38mm  宝石質のクンツァイト  8.5cm
Mawi pegmatite  Mawi pegmatite   Nooristan, Afghanistan  Pech Valley
 Steve Smale collection  Gene Meieran collection    Paradise Woods collection

 アフガニスタンのヒンズークシュ山脈に連なる標高3000mを超える高山地帯に世界的なペグマタイト鉱脈が無数にあります。
 鉱脈の生成はおよそ5000万年前に始まったインド大陸がユーラシア・プレートに衝突している造山運動に因るもので、3400万年~500万年前と、世界で最も新しいペグマタイト鉱脈です。
 この造山運動により、地球内部のマグマからリチウム、ベリリウム、硼素、セシウム等の軽元素に富んだ熱水の貫入が起こり、トパーズ、ベリル、スポジューメン、、トルマリン等々、大きく美しい宝石結晶を含む無数のペグマタイト鉱脈がアフガニスタン東北部からパキスタン北西部の広範な一帯に形成されました。
 アフガニスタンでは冒頭の地図の北に示されるサーレ・サン(Sar-e-Sang)にて7000年の昔からラピスラズリが採掘され、古代メソポタミアやエジプトにて珍重されて来ました。 さらに周辺で採れるルビー、スピネル、エメラルド等も古くからヨーロッパ王室の宝飾品に使われて来ました。
 アフガニスタンにてペグマタイト鉱脈が発見されたのは1960年代、ソヴィエトの軍事侵略の際に、戦略物資となるタンタルやトルマリン(核爆弾爆発時の圧力の測定や潜水艦のソナーの発振に使われる)資源の調査と、その後フランスやアメリカの地質学者の調査により、ここが世界屈指のペグマタイト鉱物の産地であることが明らかになりました。
 ペグマタイト産の宝石結晶の採掘は1970年代末頃から始まりました。 
とりわけ、クンツァイトは数十cmに達する巨大な宝石質の結晶が、一つの晶洞からトンの単位で発見され、20%の高い歩留まりでルースが得られる、世界屈指の産地となりました。
 
 しかしながら、カットされたルースとなると、スポジューメン以外の種類の宝石は殆ど市場で見かける機会がありません。
 この3年余り、ようやく初めてのモルガナイトとアクアマリンを入手しました。
モルガナイト (Morganite)
      アフガニスタンのペグマタイトからは10cm程度の透明な結晶を産しますが、カットされたルースを見た記憶は皆無です。
 一般にモルガナイトの結晶は色が淡いので小さなルースにカットすると殆ど無色になるので宝飾品としての価値は損なわれてしまいます。
 したがって無理にカットせずに、結晶標本として売られる例が大半です。
そんなわけで、アフガン産のモルガナイトのルースは、今回ようやくにして遭遇した稀なる品です。
 色だけを見るとトパーズのようですが、モルガナイトにはピンク以外にオレンジ味を帯びた色合いがあります。が、オレンジ色は不安定で、太陽光や白熱光にさらされると短時間で退色して淡いピンクに変わります。 
 2.85ct 9.0x7.0mm  

アクアマリン (Aquamarine)
     パキスタンと並び、アフガニスタンもアクアマリンの大きく美しい結晶を産します。 従って高級宝石用のルースがあっても不思議ではありませんが、ついぞアフガニスタン産のアクアマリン・ルースを見た記憶がありません。
 おそらく美しいルースはコレクター市場ではなく、全く別のルートで宝飾市場へ直行してしまうのでしょう。
 アクアマリンも、モルガナイト同様、価値の低いルースにカットするよりは、人気のある結晶標本として取引される例が大半です。
 このルースは爽やかで美しい色合いですが、微細な包有物がかなり含まれているため、コレクター市場に出てきたものと思われます。 
 3.96ct 19.1x7.5mm  

クンツァイト (Kunzite)
       クンツァイトは、アフガニスタンが世界で最大、最良の結晶を産します。
数十cmにもなる宝石質の結晶が採れるため、ルースも大量に供給されるようになりました。
 5.6カラットのルースも、この大きさとしては例外的に濃い色合いの逸品ですが、10年前ならカラット当たり50ドル~100ドルはしていたものが、今や10ドル以下とダンピング状態になり、ふんだんにあるために誰も見向きもしないような有様です。
 かつての高値を知っている身としては、こういうルースが捨て値のような水準で出てくると思わず買わずにはいられず、コレクションに収まった次第です。
 近年、グランディディエライト、フォスフォフィライト、等々、まるで美しくないのに珍しいだけが取り柄の稀少な宝石に途方もない値がつけられています。
 が、安かろうが、大量にあろうが、クンツァイトや紫水晶のような美しい石であればこそ、宝石としての存在価値があるのです
 5.61ct 15.0x7.2mm  
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