新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


November 2016  : サファイア (Sapphires)

   
スリランカのサファイア 1.21ct とフランス・オーヴェルニュのサファイア 0.33ct  


スリランカのサファイア(Srilankan Sapphire)
      僅かに色むらがありますが、しかしスリランカのサファイアとしては小さいながら透明度の高い上級品質の
ルースです。
 スリランカでも、近年はサファイアが枯渇してきて、この水準のサファイアは滅多には採れなくなっています。
 このルースは宝飾用ではない、コレクション用のルースや結晶標本を扱っている業者が出品したものでした。
 宝飾品ルースの専門業者であったなら、10倍の値段が付いても不思議ではありませんが、何故かありふれた
標本並みの水準で出たという掘り出し物でした。
 業者の写真ではモゴク産の最上級ロイヤル・ブルーカラーに写っていましたが、実物はこの写真の水準。 
 しかし美しいサファイアではあります。
  
1.21ct 7.2x5.7mm 
Ratnapura, Srilanka
 

フランス・オーヴェルニュのサファイア( Sapphire from Auvergne, France )
 
       
フランス中央部に広大な面積に広がるオーヴェルニュ地方の光景  0.33ct 4.4x3.8x1.8mm 
       
 オーヴェルニュ産サファイアの原石とカットされたルース     
   
       オーヴェルニュのサファイアは漂砂鉱床の土砂から碗がけで選鉱されるため
効率が悪く、一般にはごく少量しか採れません。
 が、2009年に、詳細な場所は不明ですが、数千カラットの結晶がまとまって
採集されました。
 写真のように結晶の大きさは 2 - 5mm と小さく、4% 弱、40グラムの宝石質
の結晶から 0.3 - 5 カラットの大きさの1ダースの結晶がカットされました。
 写真を見る限り、透明度や色合い等、いずれも標本級でしかありません。
 
 2 - 5mm  0.3 - 5.0ct  

 フランスの中央部に南北500㎞、東西400㎞、面積26,000k㎡のオーヴェルニュ地方は中央山塊とも呼ばれる山岳地帯です。
 標高が最高でも1855mと、アルプスやピレネー程高くなく、壮大にしてかつ牧歌的な高原と山岳と森と湖と川と人々の暮らしとがしっくりと調和している、知る人ぞ知る、フランス屈指の風光明媚な土地でもあります。
 このオーヴェルニュ地方南東部の数か所の漂砂鉱床から、ガーネットやジルコンと共に稀に宝石質のサファイアが採れます。
 アルカリ玄武岩起源のサファイアですが、スリランカの最上級のサファイアと比べても遜色ない程に美しい色合いを見せるものがあります。 不純物の鉄の含有率が少ないと玄武岩起源のサファイアも十分美しいということです。 
 惜しむらくは最大でも0.5カラット以下、一般には0.2カラット程度と小さく、産出量も極めて少なく、日本の市場には年に1、2個姿を見せる程度です。余りにも数が少なく、ネット・オークションでは限られたコレクター間の壮絶な競争で到底手の出ない高値になるので、いつも断念していたものです。10年がかりで、今回ようやく妥当な水準で入手した次第です。
 一介のコレクターとしては到底法外な水準にはついて行けませんから、じっくりと機会を待つのみです。
 待った甲斐があって、小さいながら、稀少な産地のまことに美しいサファイアをようやく入手できました。
 おそらくオーヴェルニュでも宝石質の小さな結晶が年に数十個採集される程度と思われます。
市場に姿を見せる大半のルースはガードル周囲が多角形の特異なカットが施されているので、おそらく一人のカッターが全てを研磨していると思われます。腕利きのカッターの仕事です。
 実は10年余り昔ですが、フランスの”GEO誌”のオーヴェルニュ特集号にたった数行ですがサファイアの産出の記事があり、それを頼りに探しに行ったことがあります。
 写真の大きな川にせせらぎが流れ込んでいるような場所で椀かけを試みました。もちろん半日足らずでサファイアを見つけるには至りませんでしたが、オーヴェルニュ地方にはすっかり魅了され、その後オーヴェルニュ各地は3~4回程訪れました。
 広大な地帯の何処へ、どの季節に行こうと、それぞれに趣のある土地ですから、慌ただしく走り回ったりしないで、一か所に滞在してのんびりと楽しむのが、オーヴェルニュを訪れるには相応しい過ごし方でしょう。


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