新着宝石展示室 (New Gemstone Gallery)

November 2018 : 珪線石 (Sillimanite)



 
インドとスリランカの珪線石 (Sillimanites from India and Srilanka) 1.11 - 3.50ct 

シリマナイト結晶 ( Sillimanite Crystals )
           
 18x9x4mm 11.6x2.9x2.7mm  30x6x4mm  Willimantic, Windham  East Hampton  花崗斑岩中の珪線石 52mm 
Pyin-Oo-Lwin,
Mogok, Buerma
Ratnapura
Srilanka 
Hakurutale
Srilanka 
Connecticut, U.S.A.  三重県熊野市加田
(Kada, Kumano City Japan) 
 珪線石は後述のように、世界の変成岩地帯で広範に発見される鉱物ですが、一般には結晶形を示さない、ただの白い塊の産状のため、かなりの鉱物愛好家でも、産地で遭遇してもそれと識別するのは困難でしょう。
 アメリカのコネチカット州のペグマタイト地帯からは繊維状の集合体やはっきりと結晶形が分かる標本を産します。
ビルマではモゴク周辺に小さいながら宝石質の結晶を産します。しかし宝石としてカットされたルースを見たことがありません。
 市場でごく稀に見かけるルースはかつてはスリランカ産のみ、2000年代になり、インド産が姿を見せるようになりました。
スリランカ産は、大半が漂砂鉱床にて発見される水摩礫をカットしたものですが、写真は稀な結晶形を止めた宝石質の標本です。
 最近の Mindat には各鉱物ごとに、世界各地の時には100点を超える鉱物標本の写真が掲載されるので、大変参考になります。

       
3.50ct 10.3x8.9x6.50mm  1.11ct  7.8x5.5x3.6mm 2.68ct 9.8x5.8x5.3mm  4.38ct
10.1x8.3mm 
 4.67ct
11.9x9.1mm
India  Srilanka  

 シリマナイトは、珪酸アルミニウムというありふれた成分が高温の変成作用で結晶する鉱物です。
こうした条件は珍しくはありませんから、シリマナイトは世界中で広範に発見されます。 
 珪線石という和名は、しばしば繊維が集合したような産状で発見されるためで、Fibrolite とも呼ばれます。
透明な繊維状の結晶は、カボションカットするとキャッツ・アイ効果を見せ、スリランカからは、時折、クリソベリルやアレクサンドライト・キャッツアイと比較しても遜色のない美しいものが発見されます。
 市場に姿を見せる宝石質のシリマナイトの大半がスリランカ産ですが、それも極めて珍しかったので、1980~90年代には、少しでも報告されるとG&G誌のジェムニュース欄に紹介されるほどの希少な宝石でした。
 2000年代に入って、ようやくインドのオリッサ州とアーンドラ・プラデシュ州から10カラット、時に50カラットにもなる大きなルースが姿を見せるようになりました。
 しかし、インド産は大きいだけが取り柄で、宝石としての魅力にかける、コレクター向きの標本級の品質です。

 したがって、宝飾品として使える美しいシリマナイトの産地はスリランカのみです。
とは言え、あまりにも数が少なく、地味な宝石ですから、実際に宝飾品に使われるのは、クリソベリル・アレクサンドライトを偲ばせるキャッツ・アイぐらいなものでしょう。
 今回入手したキャッツ・アイは灰色であまり美しいいとは言えませんが、以前入手したものは、写真のように、くっきりとキャッツ・アイが浮かび出るまことに美しい淡紫色のシリマナイトでした。
 1980年代、バブル時代には、宝石種を明記せず(即ち高価なクリソベリルやアレクサンドライトと思い込ませるためですが)、単にキャッツ・アイとして、カラット当たり5万円もの法外な値段で売る宝石商がいたほどです。 それでも、”キャッツ・アイがカラット当たり5万円なら安い!” と、ホテルで開催されている宝石大展示即売会で10カラットで50万円もするシリマナイト・キャッツ・アイを買い漁っているご婦人のグループに遭遇したことがあります。  因みに、当時、4~5カラットの淡紫色の美しいシリマナイト・キャッツアイのまともな宝石商の売値は1個1000円程度でした。

   アレクサンドライト・キャッツアイと比べて遜色のないほどの美しさですが、知名度が全くないためにタダ同然という実情なのです。


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