新着宝石展示室
( New Gemstone Gallery )

   October 2016  : コレクターストーン (Collector Stones)          
 
Rare Collector Stones 0.11 - 3.50ct

 あんまり見映えのしないルースですが、しかし極め付きのコレクターストーンばかりです。
           インドの珪線石 (Indian Sillimanite)

           一見地味な目立たない色合いですが、少し角度を変えただけで緑や朱色等々、様々な色合いの光が反射して、きれいです。
 おそらくインドのオリッサ州のペグマタイトからのものと思われます。
 宝石質のシリマナイトは非常に稀で、時折スリランカ産の1~2カラットの小さなルースを見かける程度です。
 一方インドのオリッサ州からは、灰色のくすんだ色合いの、しかし数カラットから時に10カラットを超える大きなルースが発見されます。
  
3.50ct 10.3x8.0mm  Orissa ? India  


ブルマードの苦灰石 (Dolomite from Brumado, Bahia, Brazil)

     ドロマイトは世界中の至る所にある、ありふれた鉱物ですが、宝石質となると、スペインのフランス国境に近いピレネー山脈中のエウギ鉱山と、ブラジル 、バイア州のブルマード鉱山の透明な結晶をカットしたルースが稀に市場に登場する程度です。
 スペイン産の透明な結晶は1980年以降枯渇しましたから、現在ではブルマードが唯一の供給源といっても過言ではありません。
 ブルマード産の透明度が高いルースは高い複屈折により素晴らしい煌きとファイアーを見せるものがありますが、今回入手したものは透明度が低く、まったく見映えがしません。
 が、ともあれ、稀な産地からの稀なルースとあれば見逃すことはできません。
 
 1.55ct 8.4mm


メキシコの異極鉱 (Hemimorphite from Mapimi, Mexico)
      ヘミモルファイトは一般には団塊状、時に薄片状の結晶として産出します。
結晶標本としてはメキシコ、デュランゴ州から最大でも長さが1㎝、厚さが5mm 程度の美しい結晶群が採れます。
 モース硬度が低く完全な劈開性を持つこの結晶をカットするのは極めて困難なことですが、熟練のカッターが腕試しにカットしたものが10年に一度程度市場に姿を現します。
 0.54カラットと小さなルースもその一つ、30年余りコレクションをしていて、これが
2個目の標本です。 
 0.54ct 7.8x4.3mm
Ojuela, Durango, Mexico
 


天青石 (Celestine from Madagascar)
     天青石という詩的な名を持つ鉱物は(硫酸ストロンチウム:SrSO4)という 化学組成を持ちますが、
ストロンチウムという元素はカルシウムやバリウムとほぼ似たような性質を持ち、重晶石(硫酸バリウム:BaSO4)、硬石膏(硫酸カルシウム:CaSO4)との間で交互に成分を置き換えた固溶体という結晶を生成します。
 したがって、このルースが本当は何なのかは、詳細な成分分析をしない限り分かりません。
 硬石膏の透明な宝石質の結晶は滅多にありませんが、重晶石の大きく透明な結晶は稀ではありませんから見分けるのは容易ではありません。
 が、このルースはほぼマダガスカル産の天青石と考えられます。
本来は名前のように淡青色を帯びていますが、この大きさでは無色になってしまいます。
 これもまた見映えのしませんが、しかし極めて稀な標本です。
 1.01ct 6.8x5.1mm
Sakoany, Madagascar
 

アフガニスタンの斜灰簾石 (Clinozoisite from Afghanistan)
     
   比重と屈折率とがやや小さいということをを除けば、斜灰簾石は化学組成も結晶系も緑簾石と全く同じ鉱物です。
 実は灰簾石とも結晶系の違いを除けば、物理特性はほぼ同じです。
 したがって、この3種の鉱物を識別するのはラマン分光分析などの専門家による精密な分析が必要です。
 今回入手したアフガニスタン産は、しかし斜灰簾石そのものであると判断させるほどの明るく美しい色合いのルースです。
 これ程に透明度が高く澄んだ色合いとなるのは、鉄分の含有量が少ないためと考えられます。
アフガニスタン産とのことですが、国境を接するパキスタンのゼイギーからも宝石質の斜灰簾石を産します。
 アフガニスタン産の宝石の大半はパキスタン経由で流通するため、正確な産地が不明なことが多いのですが、少なくともこのルースはアフガニスタンの新産地からのものと考えられます。
このような明るく透明感に溢れる斜灰簾石の結晶は、かつてイタリアのマレンコ渓谷に産しました。が、カットするには余りにも小さくな結晶にすぎませんでした。
 おそらく、アフガニスタンの何処か、山岳性の熱水鉱床にて鉄分の少ない大きく透明度の高い結晶が生成したのでしょう。
  2.26ct 13.0x5.6mm Afghanistan 


インドのパウウェル石(Indian Powellite)
      どう撮影しても見映えのしないルースは世にも稀なパウウェル石(モリブデン酸カルシウム : CaMoO4)です。
 この化学組成は灰重石 (タングステン酸カルシウム : CaWO4)のタングステンがモリブデンに置き換わった
鉱物であることを教えてくれます。
 タングステンの主要な鉱石である灰重石は比較的に産出が多く、透明な無色、あるいは金色の美しい結晶は
ルースにカットされたものを時々見かけます。
が、パウウェル石は、パリ大学、マリー・キュリー校付属の宝石・鉱物博物館で20年近く昔に4カラット余りの大きさの、
合成キュービック・ジルコニアかと思えるほどカナリー・イエローに光り煌くルースを一度見たのみです。
  
0.11ct Ø2.9mm
Jalgaon, India 
 


モゴクのフェナス石(Phenacite from Mogok, Burma)
      フェナス石は半年余りの長い時間をかけて成長させる、ロシアの合成エメラルドの包有物として見いだされます。長時間の高温の成長環境下でエメラルドの一部が溶けてフェナス石に変わってしまうためです。
 フェナス石は極めて限られた成長条件で生成する鉱物です。
 そのため産地も量もごく限られており、宝石質の結晶は極めて稀にマダガスカルとビルマのモゴクにて発見され、ルースがカットされます。
 モゴク産のフェナス石の多くはかなり濃い褐色味を帯びていることが多いのですが、このルースは小さく、テーブル付近に包有物が含みますが、無色で高い透明度を示す、なかなかに美しいものです。
 
 0.48ct 6x4mm  

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