新着宝石展示室
( New Gemstone Gallery )

October 2021 : オーストラリアのサファイア ( Australian Sapphires )


 
0.55 - 2.23ct 


         
0.55ct  4.5x4.3x2.9mm 1.14ct 6.6x5.5x3.6mm 1.42ct 6.7x5.6x3.9mm 0.79ct 5.4x5.2x4.5mm  2.23ct 8.1x6.0x4.5mm 

   オーストラリア東南部の海岸沿いに南北3000㎞に及ぶ山脈のすそ野に拡がる35万平方㎞の Lava Plain と呼ばれる風化した玄武岩堆積中にサファイアが発見されたのは19世紀半ばでした。
 しかし、不純物の鉄分を大量に含む暗青緑色のサファイアが宝石として加工できるとは考えられず、ごくわずかな量のサファイア原石がドイツに送られて加工されたのみでした。
 1960年代末になって、こうした原石を加熱処理加工することで宝飾用途への道が開かれ、1970年代から19870年台にかけて、一時はオーストラリアが世界のサファイア生産の70%を占めるほどのサファイア産出国となりました。
 しかしながら、オーストラリアのサファイアを支配していたのはタイの宝石商であり、オーストラリアの鉱山主達は単に原石を採掘して安値で売るだけの存在に過ぎませんでした。
 1980年代のオイルショックによる石油価格の高騰で採掘コストが高くなっても売値に転嫁出来ずに安く買いたたかれていたオーストラリアのサファイア採掘産業は1980年代末には採算の悪化に伴い殆んど壊滅してしまいました。
 以後、タイヤスリランカの宝石商たちは、新たに発見されたタンザニアとマダガスカルのサファイア原石の買取と加工に力を入れ、オーストラリアのサファイアはほぼ忘れられていました。
 従って、この30年余りオーストラリアのサファイアを市場で見かける機会は、ごく稀にモゴクの最上級品に匹敵するルースが姿を見せる以外にはなくなっていました。
 今回、ほぼ同時期に2,3の業者がごくわずかではありますが、かつて産した、緑、青、黄色等の、なかなかの品質のサファイアを出品していて、ようやく入手する機会に恵まれました。
 新たな採掘が採掘が再開されたのか、あるいは古い在庫が放出されたのか定かではありません。
 0.55カラットの淡黄緑色のルースは非加熱との表示がありました。 膨大な量を産した中には、加熱処理を必要としない美しい原石があっても不思議はありません。
 他のルースは、何の表示もありませんから、おそらく加熱処理されたものと思われますが、加熱されようとされまいと、宝石は美しいことが何よりです。
 青、緑、黄色と様々な色合いが混じる多色のサファイアですが、いずれも宝飾品に使える品質であり、こうしたルースを入手できたのはまことに幸運でありました。


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