新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


October 2022 : グリーン・サファイア (Green Sapphire)


Australia  0.61ct Chantaburi Thai  0.85ct
 1980年代から90年代にかけて、世界のサファイアの大半を供給していたのがタイとオーストラリアでした。
タイは乱獲、一方、タイ資本の支配下で原石供給者に過ぎなかったオーストラリアは、石油価格の高騰による採掘経費の高騰で採算悪化のため、当時台頭しつつあった、タンザニアとマダガスカルからの原石との価格競争に敗れて、いずれも殆どの鉱山が稼働を停止してしまいました。
 もっとも、アフリカ産の原石はほぼ全てがタイとスリランカの宝石流通網が当初から現在に至るまで支配しています。
 そんな訳で、すっかり市場から姿を消してしまったタイとオーストラリアのサファイアですが、小規模な採掘が復活したようです。
 近年、少量ながらカットされたルースを見かけるようになりました。

オーストラリアのグリーン・サファイア
        グリーン・サファイアとはいうものの、実際にはオーストラリア産のサファイアによくある、緑と青との多色です。
 このような多色性は、結晶中に不純物の鉄の二価と三価の分布が偏って分布しているためです。
 したがって余り美しくなく、かつては商品価値が低かったのですが、近年は、こうした色合いも評価されるようになって、市場に姿を見せるようになったものです。
0.61ct 5.17x4.13x3.40mm     

タイのグリーン・サファイア
        タイのサファイアは一般に暗い青が大半ですが、還元雰囲気の高温処理により多すぎる不純物の鉄成分を取り去って、宝飾品として使用できるようする技術が普及して一時は世界のサファイア供給の大半を占めるほどになりました。
 が、大地が激変するほどの大規模な乱獲により10年足らずで掘りつくしてしまいました。
 それでも近年小規模な採掘が復活して、細々と供給が再開し始めました。
 このやや黄色がかった緑のサファイアはタイ産としては全く珍しいものです。
 この色合いは主に三価の鉄イオンの八面体配位で起こる緑に加えて二価の酸素と三価の鉄イオン間の電荷移動とによる黄色の発色との組み合わせです。
0.85ct 6.11x3.97x3.14㎜  Chantanaburi, Thailand  


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