新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)
October 2024 : アフガニスタンの宝石 (Afghan Gemstones)
リヒター閃石 (Richterite) | アウイン(Haüyne) | デマントイド (Demantoid) |
アウイン・藍方石 (Haüyne)
アウイン 4.22ct 13.9x10.0x6.5mm | |
Sar-e-Sang, Badakhshan, Afghanistan |
宝石質のアウインは、ドイツのライン河沿いの街、コブレンツの西10㎞に広がるアイフェル山地が世界で唯一の産地でした。
2007年にアフガニスタンの古代からのラピスラズリ産地である、サーレサンからアウインの大きな結晶が報告されました。
アウインは実はラピスラズリを構成する主要な鉱物ですから、ラピスラズリの産地にアウイン単体が発見されても不思議ではありません。
アイフェル産地のアウインは小さな粒状の結晶しか採れず、カットされるルースの大きさは0.1カラットに満たない、ごく小さなものしか得られません。
一方、サーレサンからは大きな結晶が採れますが、不透明なため、宝石としては標本級でしかありません。
2007年に Gems & Gemology に報告された結晶とルースはくすんだ青緑色のアウインらしからぬ色合いでしたが、今回入手したルースは、不透明ではありますが、最上級のラピスラズリのような濃い青の、如何にもアウインという色合いです。
デマントイド・ガーネット (Demantoid Garnet)
0.54ct 5.2x5.2x2.9mm | |
Afghanistan |
アフガニスタンから宝石質のデマントイドが採れるという情報はありませんでしたが、小さいながらまるでロシア産の最上級を偲ばせるルースがネットに登場したのには驚かされました。
隣のパキスタンでは、ごく小さな淡緑色の結晶が採れます。
アフガニスタン国境に近いイランからもデマントイドが採れますが、こちらは色が濃すぎて透明度に欠ける、と宝石質の上質のデマントイド・ガーネットは、依然として稀少な宝石なのです。
写真のルースは、正確な産地こそ不明ですが、デマントイドとしては理想的な色合いと透明度の最上級品です。
リヒター閃石 (Richterite) : Na2Ca(Mg,Fe,Al)5(Si,Al)O22(OH,F)2
0.86ct 9.90x3.83x2.49ct | |
Sar-e-Sang, Badkhshan, Afghanistan |
リヒター閃石は角閃石の一種です。
角閃石は、安山岩中に黒い細粒の結晶として含まれていたり、川岸の砂に光沢を持つ柱状の結晶として発見される、
基本的な造岩鉱物です。
が、角閃石が宝石として使われるのは、古来より中国人が珍重してきた”玉”が永らく唯一の例でした。
しかし、1990年代半ばから、パキスタン、カナダのバフィン島、ヴェトナムのルク・イェン等からヴァナジウム発色の緑の宝石質のパルガス閃石が、さらに2000年代初頭ビルマのモゴクとタンザニアから褐色のエデン閃石が、同じくタンザニアのメレラニ丘陵らはヴァナジウム発色のエメラルド・グリーンの透閃石が発見されるなど、宝石質の角閃石族の結晶が次々と報告されました。
角閃石族の中では稀なリヒター閃石も2001年にアフガニスタンのラピスラズリ産地であるサーレ・サンから長さが 2㎝ 程の宝石質の結晶が報告されました。
一般には鉄の含有量が多く、真っ黒な結晶として発見されますが、サーレ・サンで発見された結晶は透明な淡黄色です。
劈開性が強いため大きなルースを得るのが困難で最大でも 1.8 カラットのルースが得られただけの稀少なものです。
15年ほど昔に 0.36 カラットのルースを入手して以来、今回が2つ目の機会です。
これが本当にリヒター閃石なのか、屈折率を測定したところ、確かにリヒター閃石の屈折率である 1.599-622 の再下限 1である、1.599 の価が得られました。 この低い屈折率は、鉄成分が低いためと考えられます。
そのために、淡黄色の透明度が高い宝石質の結晶となったのでしょう。