新着宝石展示室 (NEW
Gemstone Gallery)
September 2016 : スターサファイア・ルビー (Star Sapphire
& Ruby)
天然のピンクスターサファイア 4.31ct (ビスマス・ガラス含浸処理) 火炎溶融法合成スタールビー(5.95c)、サファイア(4.49ct) |
天然ピンク・スター・サファイア
4.31ct 12.0x8.3mm Montepuez, Mozambique | ||
加熱 ビスマス・ガラス含浸処理 |
アフリカ産との表示でしたが、透明度の高さと色合いとから、まず2009年に発見された新産地、モザンビークのモンテプエス産と考えられます。
つい先日、BS-TBSで毎週土曜日の午後5時から放送されている ”麗しの宝石物語” という番組でこの産地が紹介されていました。
宝石学の専門家による産地訪問でしたから充実した情報が得られました。
この産地は8億年~5億年前に起こった大規模な地殻変動により、角閃岩層に貫入した熱水にて生成された斜長石との反応によりルビーが生成したと考えられます。
初生鉱床と、その後風化して流され、堆積した二次鉱床とからなります。
とりわけ初生鉱床の豊穣さは大変なもので、露出した岩盤の一面に透明度が高く濃い色合いの、最大では2㎝に達する大きさのルビーの結晶が散乱している様子が見られます。
おそらく1立方メートル当たり、優に 10 ㎏を超える宝石質のルビーと ピンク・サファイアが得られることは確かです。
しかも、最上のルビーはビルマのモゴク産に匹敵するとのことですから、空前のルビー産地です。
ただし、今回入手したものは、ビスマス・ガラスによる含浸処理をしたもので、専門機関委による鑑定メモもついています。
中々美しいスター・サファイアで、アクセサリーとして使用する分には問題ありませんが、宝石としての価値は有りません。
天然のルビーやサファイアの加熱処理は普通に行われていますが、ビスマス・ガラス含浸のスター・サファイアがどんなものか?
実物を確認するために入手したものです。 率直に申し上げると、外観からは、ビスマス・ガラス含浸ということは全く分かりません。
こういうルースを、まともな宝石商が扱うことはありませんが、ネット市場等には、含浸処理を明記せず、宝石として売っている業者も少なからずありますから、要注意です。
モザンビーク北東部のルビー産地 角閃岩に貫入した斜長石脈 角閃岩中のルビー結晶 宝石質のルビー結晶
火炎溶融法合成スタールビー・サファイア
火炎溶融法合成スタールビーと スターサファイア | |
5.95ct 11.2x9.5mm | 4.49ct 12.1x9.7mm |
火炎溶融法によるスター石は、アメリカのリンデ社が商品化したものが1940年代に登場しました。
酸化アルミニウムにかなりの量の酸化チタンを混入して結晶させるため、鮮明なスターが出るのですが、しかし、石の母体の透明度がすっかり失われて、如何にもプラスティックの偽物にしか見えないため、早々と市場から姿を消してしまいました。
ところが、この数年、透明度の高い母体に鮮明なスターが出る、美しいルビーとサファイアが姿を見せるようになりました。
一体、どのような技術が用いられるのか不明でしたが、 ”Gems & Gemology Summer 2015” 号に酸化チタンを拡散処理する方法で、透明な母体を持つスター石を実現することが可能になったとの記事が掲載されました。
拡散処理とは、酸化チタン結晶を、ルビー結晶の内部に浸透させる方法です。
おそらくは、カボションにカットしたルビーやサファイアを酸化チタンの粉末に包んで高温で加熱処理し、酸化チタンをルビー結晶内部の表面近くに拡散させ、その後に再研磨することで、本体の透明度を損なうことなく、鮮明なスターが浮き上がるものです。
拡散処理に再研磨と、多少の手間はかかりますが、元が殆どただ同然の合成ルビーですから、カラット当たりせいぜい数百円の手ごろな値段です。