新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)

September 2020 : 柘榴石 (Garnets)


 
インドと ブラジルの柘榴石 (Indian and Brazilian Garnets)  4.30 - 11.83ct

  カットされた赤い柘榴石の種類を外見から識別するのは不可能です。
柘榴石のルースとしてはなかなか大きく美しい、しかしカラット当たり100円ほどの妥当な値段のルースを見かけて産地を問い合わせたところ、それぞれ、インド産とブラジル産とのこと。
 これらの正体が一体何だろうかと好奇心から入手して比重と屈折率とを測定してみました。

インドの柘榴石 (Indian Garnets)
        ネット上の写真ではかなり橙色味が強く、鉄礬柘榴石(Almandine)
かと期待して入手しました。
 アルマンダインは珍しい種類ではありませんが、宝石質は意外と少なく、
30年以上昔に入手した数個しかなかったので久しぶりに大きなルースを
コレクションに加えるのを楽しみにしていました。
 が、届いたものは写真とはずいぶん異なり、赤みが強く、外見からは
どの種類なのか正体が全く分かりません。
 測定の結果は、4.30カラットのルースがスペッサータイン、5.10カラットの
方はパイロープと、同じ産地から届いたものが全く別の種類でした。
 一般に柘榴石は多様な種類が混ざった固溶体が多いのですが、測定値
から判断すると、珍しいことですが、いずれもほぼ純粋な種類と考えられます。
  4.30ct  10.12x7.70x5.57mm 5.10ct 12.07x10.69x5.67mm   
 比重(S.G.) 4.155  3.919   
屈折率(R.I.)  1.802 1.724   
種類  満礬柘榴石 (Spessartine) 苦礬柘榴石 (Pyrope)   

ブラジルの満礬柘榴石 (Brazilian Spessartine Garnets)
          この二つは見事なほど特性が揃った、典型的な満礬柘榴石です。
クッション・カットの9.18カラットのルースは一見すると鉄礬柘榴石の
のような橙色ですが、測定してみると、ほぼ純粋なスペッサータイン
でした。
 ステップカットの10.67カラットのルースも同様に外見からは全く判断
が付きませんが、前者とほぼ同じ値の、純粋なスペッサータインと
判明しました。
 本当に外見から柘榴石の種類を識別することはほぼ不可能であると、
改めて思い知らされました。
 それにしても、柘榴石としては稀な10カラット級の大きさなのに、カラッ
ト当たり100円程度の値段には驚かされます。
 かつてツーソンショー等では数倍から10倍はしていて、それでも5~10
ドルと、割安感があったのですが、今となってはかつての値段は何だった
のかと思ってしまいます。
 稀少な種類の宝石には途方もない値段がまかり通っている一方で、
柘榴石のような全く人気のない宝石では、殆ど捨て値で売られているのが
日本の市場の不思議なところです。
  9.18ct 13.35x10.52x6.04mm  10.67ct 14.12x10.36x6.22mm   
 比重(S.G.) 4.154  4.208   
屈折率(R.I.)  1.813  1.813  

ブラジルのパイロープ・アルマンダイン ガーネット (Brazilian Pyrope・Almandine Garnet)
        前述のガーネットを出品していた同じ業者が、新たな柘榴石を出品していた
ので、購入して調べてみました。
 手始めに屈折率を測ってみたところ1.764の値が得られました。
これは同じブラジル産のスペッサータインより遥かに低く、しかしパイロープの
上限を超える値です。
 改めてアルキメデス法による比重を測って3.835の値が得られましたので、
これらの値はロードライトのそれですが、紫色を示しませんから、同じ成分の
しかし、クロムを含まないパイロープ・アルマンダインであると判明しました。
 
11.83ct 15.6x12.3x7.6mm   
 比重 (S.G.) 3.835   屈折率 (R.I) 1.764   


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