世界のオパール

オーストラリアのオパール
(Australian Opal)


 
 オーストラリア産の様々な種類のオパール
(Australian various type of opals)

 

     
オパール化した巻貝
Coober Pedy
ボールダー・オパール
Cragg Mine Queensland
  ブラック・オパール
Lightning Ridge
  ホワイト・オパール
Mintabie
  マトリクス・オパール
Andamooka

 

 世界のオパールのおよそ4分の3はオーストラリアからの産出です。
オーストラリアでは1863年にヴィクトリア州で初めて宝石質のオパールが発見され、さらにクインズランド州での発見が続きました。
1890年からは大鑽井盆地(Great Artesian Basin)の最南端に位置するニュー・サウス・ウェールズ州のホワイト・クリフスで大規模な採掘が始まり、1903年からはブラック・オパールで名高いライトニング・リッジ、1910年代半ばからはサウス・オーストラリア州のクーバー・ペディー、1921年にはミンタビー、1930年には最後の大手の産地であるアンダムーカと、20世紀の前半にはオーストラリアの主要なオパール鉱山が次々と開発され、たちまちのうちに世界の宝石市場を席捲してしまい今日に至っています。
 1970年代にはミンタビー鉱床で採掘の大規模な機械化が導入され、それまで最大であったクーバー・ぺディーを抜いて世界最大のオパール産出地となりました。
オーストラリアのオパール産地 昔ながらの地下の手掘り光景 機械化された地下での採掘 ミンタビーのオパール鉱床跡
  オーストラリアのオパール産地はいずれも上の地図で淡水緑色に塗られている大鑽井盆地の周辺に存在します。ここは7000万年〜2億年昔のジュラ紀から白亜紀の時代には内陸に深く入り込む浅い海であった地帯です。3700〜7000万年昔の古第三紀の時代に地球の気候が変わって海が後退し、海だった盆地は砂漠に変わりました。表面の30mほどは堆積した灰色の頁岩、泥岩、石灰岩と砂岩とで覆われています。この層の中にオパールが発見されます。 
 オーストラリアのオパールの成因については様々な説がありますが、研究者の多くは、白亜紀の時代の主に長石類の岩石からなる堆積物が風化して分離されたシリカに由来すると考えています。雨水に溶け込んだシリカが岩の空隙や、埋もれている木や貝、動物の骨等に侵入し組織を置換したと思われます。非常に長い時間をかけてゆっくりと蒸発して固化したために、シリカ球が整然と並ぶ宝石質のオパールが出来たのだと考えられています。


ライトニング・リッジ(Lightning Ridge)のオパール


”Queen of Gular"
Black Opal
42.8ct 35x27mm
Lighting Ridge
ブラック・オパール
原石 2cm
1907年当時の地下での採掘光景 車のエンジンが動力の選鉱機械の導入
1958年
  数あるオパールの中で最も高く評価されているのが、暗い色の地に遊色が浮かび上がるブラック・オパールです。
オパールの美しさは遊色にあるわけですが、白っぽい地ではそれが余り目立たず、魅力が半減してしまいます。
興味深いことですが、初めてブラック・オパールが発見されたのは1880年代でしたが、20年ほどは放置されていて、20世紀初めの頃にようやく採掘が始まったものの、最初は品質の劣るマトリクス・オパールの類と考えられたのだそうです。
 オパールは日本では最も人気の高い宝石ですが、とりわけブラック・オパールの85%が日本向けに出荷されるほど需要が突出しています。
 そのブラック・オパールの殆どはライトニング・リッジから産出します。
ライトニング・リッジとは”雷の尾根”の意味です。かつて嵐を避けていた羊の群れに落雷して300頭もの羊が死んだことから名付けられた地名です。
 オーストラリアの他のオパール産地も同じですが、砂漠の中での採掘は困難を極めました。何よりも絶対的に水が存在しません。したがって食料もなく、原住民のアボリジニーも近づかないような過酷な条件の土地です。
 鉱夫達の労働条件は週給たったの2ドルの低賃金でしたが、それでも食事付だったので、それを目当てに食い詰めた流れ者が大都市から1000kmも離れた砂漠の鉱山に押しかけ、連日喧嘩や殺人が絶えなかったとのこと。
 きちんとした給水設備が整備されたのは実に1970年代の終りであったといいますから、長年にわたり想像を絶する状況下でオパールの採掘が続けられていたわけです。
 鉱山にはそれぞれ”Three Mile Field”、”Four Mile Field”、”Poverty Point”、”Hawks Nest”、”Butterfly”、”Indian Lookout”、”Frying Pan”、”Old Chum”、”Six Mile”、”Nine Mile”等々の名称がありますが、どんな場所か想像がつこうというものです。

 オーストラリアのオパールの原石の殆どは香港やタイ、中国で研磨されますが、ライトニング・リッジだけは、自前で研磨が行われています。
 最上品ではカラット当たり1万ドルを超える高級品のため、他人には研磨を任せられないということでしょう。


クーパー・ペディ(Coober Pedy)のオパール

ジュラ紀の魚竜の骨の化石がオパール化されたもの 同じく白亜紀の単孔類の顎の化石
オーストラリア博物館
同じく貝の化石 69ct
アメリカ自然史博物館

 

巻貝のオパールのブローチ ベレムニテラ 貝の形にカットされた
オパール 10.76ct 18x16x7mmm
イカ石→方解石→オパール
となった”パイナップル”
White Cliffs 1903年発見
  クーバー・ペディーとはアボリジニーの言葉で”kupa-pita:穴の中の白人”から名付けられた地名です。1914年に発見されたオパール鉱床ですが、あまりにも過酷な気候で、鉱夫たちが採掘はもちろんですが、地下の穴の中を住居としていたからです。地上の気温は50℃にも達しますが、地下では20℃と低く、虻や蝿も少ないことから過ごしやすいためです。
 水が無いのはここも同じで、はるばると65km離れた場所から大きな木の桶で運んでいました。メル・ギブソンをスターダムにしたオーストラリア映画”Mad Max”はクーバー・ぺディ付近で撮影されました。
 クーバー・ぺディは一般的なホワイト・クリフスと並び、ホワイト・オパールの大産地ですが、堆積層中に多くのオパール化された化石を含んでいることでも有名です。ベレムニテラとは白亜紀に生息していた烏賊の一種の化石です。
 ”パイナップル”とは長い間パイナップルの化石のオパール化したものと思っていましたが、実は形が似ているだけでした。その元となったイカ石も烏賊のことではなく水分を含む方解石の一種で、グリーンランドのイカ・フィヨルドで発見されたために Ikaite と命名された鉱物で、脱水して方解石となり、それがオパールに置換されたものです。
 宝石フェアでは良く貝の形のオパールを見かけますがが、本当の貝ではなく単に貝の形にカットされただけの代物もあります。写真のブラックオパールも貝のオパールと思って入手したものですが、よくよく見るとあまりにも完全で、どうやらただのオパールを貝に似せて研磨したもののようです。値段も数千円で、本物のブラック・オパールには違いありませんから気になりませんが、皆さんご注意下さい。

ボールダー・オパール(Boulder Opal)
オパールを含む鉄鉱石の層 Cragg Mine 褐鉄鉱の隙間を埋めるオパール オパールの層を含む母岩と層を開けた状態

 

   ボールダーとは丸石の意味ですが、ボールダー・オパールと呼ばれるのはオーストラリアのクイーンズランド州産の褐色の鉄分を含む母岩と共にカットされたオパールの呼称です。
 オパール層が薄いため、褐色の母岩と共に研磨されると、遊色が鮮明に映えて美しいので、宝飾品にも使えます。 
 オーストラリア北東部の広大なクイーンズランド州の大半は鉄分を含む白亜紀の堆積層に覆われています。
 オパールは19世紀末に発見され小規模な採掘が行われていましたが、夏は気温が50℃を越える厳しい気候による旱魃のために、他の地域にオパールが発見されて、採掘は放棄されていました。
 
母岩(75x28mm)付のオパールと研磨品 典型的なボールダーオパール  
普通のボールダー・オパール
       
 25.18ct 37x10x7mm  8.61ct 18x12x5mm  3.80ct
13.0x12.3x3.0mm
 3.56ct
13.7x9.0x3.0mm
 1.88ct
14.2x7.0x2.2mm
 1.63ct
10.0x6.7x2.9mm
 0.64ct
7.5x6.4x1.9mm
 1.49ct
11.0x6.5x2.3mm
      1.19ct 8.0x7.3x2.5mm 0.96ct 8.5x6.0x2.7mm


 多彩な色合いのオーストラリアのオパール
ブラックオパール   ファイアーオパール  
       
 Laverton, Western Australia
 2.92ct
Ø10.6x4.2mm
 2.38ct
13.1x6.5x4.0mm
 2.77ct
11.4x9.9x3.9mm
2.52ct
12.0x9.5x5.1mm 
 2.70ct
11.8x8.4x6.0mm
1.9ct
12.0x10.0x2.7mm
1.48ct
11.0x6.6x2.7mm 
 
 1970年代初期になり、ようやくクイーンズランド州各地でのオパール採掘が再会され、1980年代終わりにはクイーンズランド州全体のボールダー・オパール産出額はA$660万と、オーストラリア全体のオパール生産額1.1億ドルの6%を占めるまでに回復しました。
 ボールダー・オパールは写真のように母岩(90%が褐鉄鉱、8%が砂岩)の層に侵入したオパールの薄い層として産出します。
  したがってオパール層だけをカットすることが困難なために母岩ごと研磨されます。中には母岩の層に縞状に入り組んだマトリクス・タイプもあります。 薄い層として張り付いた状態のボールダー・オパールですが、幸いなことにオーストラリアの他の産地のオパールと比べて脱水によるひび割れ率が2〜6%と低く安定しているために、宝飾用途に向いています。また褐色の母岩上に張りついているため、遊色が鮮やかに浮かび上がり、最上のブラック・オパールと比較して遜色の無い美しさが見られます。
 母岩付のために無垢のオパールと比べて桁違いに格安ですが、宝飾品として使う分には美しさは全く変わりませんから手軽に求められるオパールです。

アンダムーカ・マトリクス・オパール(Andamooka Matrix Opal)
       
 普通のアンダムーカ産オパール   処理後のオパール  アンダムーカ・ピーコック
オパール
 10500ctのマトリクスオパール

オーストラリアのアンダムーカからは白いマトリクス・オパールを産出します。マトリクスと呼ばれるのはクリーム色〜灰白色の粘土岩にオパールが粒状に侵入したもので無垢のオパールではないからです。 
 アンダムーカでは1930年代にオパールが発見され、写真のような白っぽい地のマトリクス・オパールが主ですが、中にはブラック・オパールに近いものや、”アンダムーカ・ピーコック”と呼ばれる七彩の遊色を示す高級品も産出していました。
 しかし1960年頃に、シドニーの宝石店が火事になり、グリセリン液に浸してビンの中に入れておいたオパールがブラック・オパールのような黒い地に変化していたことがきっかけで、白い地を黒変させることが試みられるようになり、劇的な効果が得られたため、以降黒変化の処理が行われるようになりました。
 一般には瑪瑙と同じように、砂糖液などに浸したオパールを希硫酸液で処理すると、内部に沁みこんだ糖分が脱水炭化されて黒い地に変化し、遊色が鮮明に目立つようになります。上の写真のようにまさに劇的に変貌し、最上級のブラック・オパールと比べて遜色無い見映えとなります。
 このため人気が出て生産が急増し、1990年頃には出荷額がA$で300万ドルと1位ミンタビーの3900万ドル、2位クーバー・ぺディの2100万ドルに次ぐオーストラリアで3位の産地にまでのし上がりました。 上位との間には大きな差がありますが、それはマトリクスのため価格が安いためで、量的には相当のマトリクス・オパールが出荷されていることになります。

ラヴァートンのオパール(Opals from Laverton, Western Australia)
        2000年代初めにオーストラリア南西部のラヴァートンにて遊色を示さないものの、ファセット・カット可能な透明度の高いファイアーオパールやウォーターオパールの鉱床が発見されました。
 メキシコ産を思わせる、オーストラリアとしては新しい種類のオパールです。
 ラヴァートンの町の北 30 q 程の風化した黒雲母花崗岩とモンゾニ花崗岩とが混ざる地層の1m50p 程の深さにオパールを含む層が発見され、スクレーパーや簡単な道具で掘り出せる様です。
 数量はあまり多くはないようですが、既出の写真にあるように、採掘され、カットされたルースが市場に流通し始めています。  
ファセット・カットされたオパール 0.50-4.39ct  

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