中南米のオパール
(South American Opal)
原石(33x28mm)と研磨品 San Patricio Peru |
原石(65x50mm)と研磨品 San Patricio Peru |
9.8ct 17x14mm Lageado ? |
8.1ct
15x11x8mm Salto de Jacuí |
ホワイト・オパール 1.5〜8.4ct Piaui Brazil |
Rio Grande do Sul, Brazil |
中南米のオパールはメキシコが余りにも有名ですが、その他、ホンジュラス、ペルー、ブラジルとそれぞれに美しく、特徴のあるオパールを産出しています。
一般の宝石市場ではオーストラリアのホワイト・オパール、メキシコのファイアー・オパール、それと途方も無く高価なブラック・オパールが代表的なオパールとして出回っています。
しかし実際には世界にはその他に実に多彩なオパールが存在し、とりわけ中南米各地からは近年多様なオパールが発見されています。
中米ホンジュラスのオパール (Honduranian Opal)
中米のホンジュラスにはそれぞれホワイト・オパールとマトリクス・ブラック・オパールとを産する二つの産地があります。
レンピラ郡のタブロン鉱山のオパールは黒い玄武岩中にオパールが散在するマトリクス・オパールです。
これはオーストラリアのライトニング・リッジ産や、黒化処理されたアンダムーカ産のマトリクス・オパールに似ています。
グラシアス・オ・ディオス鉱山からはファイアーを示すホワイト・オパールを産します。
マヤの遺跡からオパールの宝飾品が出土しますが、それらは恐らく、数百年前から採掘されていたホンジュラス産のオパールであると考えられています。
いずれも産出量が極めて少ないうえに宝石質の原石の歩留まりが低いため、市場に流通することは稀です。
24.53ct 24x13x10mm Tablon Mine, Erandique
Lempira DeptGracias O Dios Mine
Gracias O Dios Dept.
ペルーのオパール(Peruvian Opal)
上 7.6ct 14x13mm
Acari Mine Peru左手前 5.2ct 16x11mm
Acari鉱山 Peru半透明のルース 17.58ct
Lily Mine Ica地区 Peruオパールの彫刻 72ct 53x28x12mm
恐らくLily鉱山産のオパール
狭い坑道入り口
Acari鉱山12kgのオパール原石を持つ鉱夫
Acari鉱山掘削用のエアー・コンプレッサー
Acari鉱山カーバイド灯を持つ坑道内の鉱山主
Lily Mine Peruペルーでは1977に太平洋岸南部、巨大な地上絵で名高いナスカの町に近いサン・パトリシオのアカリ銅鉱山からオパールが発見されました。
鉱山といっても水も電気もない砂漠地帯のアンデス山脈の奥深くにあります。
アカリ銅山では丘の中腹から幅2m、深さ60mのトンネルをジーゼル・エンジン駆動のエアー・コンプレッサー駆動のドリルで掘り進み、たった4人の鉱夫が手で鉱石を運ぶ零細営業です。
アンデス山脈には至る所に銅の鉱脈が発見されます。
国際資本が興味を示さないような零細な鉱脈を村人が勝手に掘って鉱石を売って暮らしている例は珍しくありません。
標高1600mのアンデス山中にあるアカリ鉱山は、断層で出来た空隙に高品位の黄銅鉱と赤銅鉱、クリソコーラ(珪孔雀石)、赤鉄鉱等の晶洞があります。
この晶洞をレンズ状にくるむようにしてオパールが発見され、毎月250kgほどのオパールが掘り出されています。
不透明ながらクリソコーラやトルコ石のような青緑、”アンデス・オパール” の名で彫刻や宝飾用として出回っています。
緑青色は銅による着色です。
公式な報告は全くありませんが、マンガン着色と思われる珊瑚のようなピンクのオパールも1980年代末のツーソンで緑青色のオパールと共に同じ業者が扱っていました。恐らく同じ鉱山か、近くで採れたものでしょう。1993年には同じ地域に新たにLily鉱山が開発され、2〜3ヶ月毎に10トン程の青緑色のオパールを採掘しています。
このうち宝石用の品質は1〜2kgでしかありません。
写真の半透明のルースは最上の標本で、クリソコーラを思わせます。
しかし比重は1.45〜1.47、屈折率は2.11〜17と低い値で、クリソコーラ着色の玉髄の比重1.54、屈折率2.60とは容易に識別が可能です。
クリソコーラ・カルセドニーの美しいものは最上級品ではカラット当たり200ドルにもなります。
一方こちらのオパールはカラット当たり10ドル程度です。それが肉眼では専門家でも全く識別出来ず、比重と屈折率を調べ、その上念のためにX線解析により、ようやく確認されたということです。
即ちペルーのオパールは美しさの割にはお買い得ということになります。
因みに珊瑚のようなピンクのオパールはカラット当たり4ドルでさらに割安でした。
もしファベルジェの時代にこんな色のオパールが発見されていたなら、まちがいなくその製品に使われていたに違いありません。
ブラジルのオパール(Brazilian Opal)
上 白い砂岩中のオパール 下 黒化処理されたオパール Piaui |
オパールのペンダント 6cm Piaui |
マンガン鉱脈中のオパール Conselheiro Lafaiete鉱山 Minas Gerais パリ大学マリー・キュリー校博物館 Marie-Curie Museum, Paris |
キャッツ・アイ・オパール Boa Nova, Bahia, Brazil |
ピアウイ州ペドロ二世の町の郊外のPajeu鉱山の採掘光景 (Pedro II, Piaui, Brazil) 30mの堆積土を掘り起こしてオパール鉱脈を露出する 露出した鉱脈での採掘 シャベルやつるはしでオパールを探す ブラジルでは1945年に北東部のピアウイ州の州都テレジーナの北東200km程のペドロ二世の町の周辺にオパール鉱床が発見されました。
1980年以降、オーストラリア、メキシコに次ぐ世界的なオパール産地として台頭してきました。ピアウイのオパールの成因ブラジル北東部は古生代には浅い海で、粘土や砂岩等の堆積岩で覆われていました。
およそ1億3000万年ほど昔の、ジュラ紀後期から白亜紀初期にかけて起こった地殻変動でこの層に輝緑岩や玄武岩が貫入した時に、珪酸分に富む熱水が岩盤の空隙に沈殿してオパール層を形成したと考えられています。
ピアウイのオパール層は時には20cmもの厚さに達することがあります。
この一帯は南緯4度で、ほぼ赤道直下の熱帯雨林気候帯にあります。
オパールを含む層は長年の間に風化したラテライトの場所によっては30mの厚さの堆積土に覆われています。
オパールはペドロ二世の町の周囲に初成鉱床が8ヶ所、鉱脈が風化して周囲に拡散している漂積鉱床が17ヶ所ほど、それがさらに河川で運ばれて下流に堆積している漂砂鉱床が16ヶ所と、半径10km余りの中に大小40余りの鉱山があり、全体ではかなり大掛かりな採掘が行われています。ピアウイのオパールの特徴ピアウイで採れるオパールの多くはオーストラリア産と良く似た、乳白色の地に遊色を示すホワイト・オパールです。
砂岩の中にオパール粒が浸透していて、それが黒化処理されたものはアンダムーカ産とそっくりのマトリクス・オパールになるものもあります。
1974年には Boi Morto 鉱山の初成鉱床から少量ですがブラック・オパールが産出しました。ピアウイのオパールの特徴は水分の含有率が3〜5.7%と極めて低いので、他の産地のようなオパールに特有のひび割れ等が少なく品質が安定していることです。
他の産地のオパールではひび割れのリスクが高いため、上の写真のような大きなカボションがカットされることは稀です。
さらに、オーストラリアと比べて人件費が遥かに低いこと、採掘が容易な漂積鉱床や漂砂鉱床産も多いことから、水晶並みの手頃な値段で質の良いオパールが入手できるのもブラジルのオパールの特徴です。ブラジルのその他のオパール産地質、量ともにピアウイのオパールがブラジルのオパールを代表しますが、広大で多様な地質条件に恵まれたブラジルですから、その他の地域からもオパール産出が報告されています ;コンセリェイロ・ラファイエーテのオパール写真のパリ大学の標本は、ロードナイト(薔薇輝石)で名高いマンガン鉱山に発見されたオパールです。
母岩は水分を含む軟マンガン鉱か、水マンガン鉱と思われます。
マンガン鉱山のオパールは日本でも滋賀県栗東町の五百井鉱山で昭和20年代の昔ですが、見事な遊色を示す宝石質のオパールが発見された報告があります。
いずれの場合も宝石質のオパールがマンガンの鉱脈中に偶然発見されたものです。
何故マンガン鉱床に宝石質のオパールが出来ることがあるのか ?
恐らくはマンガン鉱山の主要な鉱石が熱水生成で水分を含む軟マンガン鉱、水マンガン鉱であることと関連があると思われます。リオ・ブランデ・ド・スール州のオパールリオ・グランデ・ド・スール州は溶岩流で出来た晶洞の内部を埋める紫水晶の産地です。
この晶洞の外部は実は瑪瑙と、宝石質ではないコモン・オパールです。
したがって、条件さえ整えばコモン・オパールの一部が宝石質のオパールとなる可能性があります。
ラジェアードの紫水晶を含む晶洞の一部は遊色は示さないものの、宝石質のレモン・イェロー〜オレンジ〜赤褐色のファイアー・オパールであるという報告があります。
冒頭の写真のまるで黄水晶のように透明度の高い金色のオパールは、ブラジル産ということで入手しました。 正確な産地は不明でしたが、恐らくラジェアード産のファイアー・オパールではないかと思います。
さらに、2007年のツーソン・ショーに同じリオ・グランデ・ド・スール州のサルト・デ・ジャクイ産のトルコ石のような色合いのオパールが登場しました。
この色合いは、微量の鉄と銅のイオンによる発色と考えられます。
乳白色は微細なクリストバル石の結晶による光の乱反射によることがラマン光分析の結果明らかになりました。バイア州のキャッツ・アイ・オパール1990年ごろからブラジル産のキャッツ・アイ・オパールが宝石市場に姿を見せるようになりました。
キャッツ・アイ効果は殆どの宝石に現れるものでそれほど珍しくはありませんが、オパールのような成因の鉱物では珍しく、かつては散発的に報告があるだけでした。
ところが2000年頃から数千カラットと、かなりまとまった、しかも写真のようにキャッツ・アイ・クリソベリルを思わせるような色合いと鮮明なキャッツ・アイ効果を見せるカボションが市場に現れ始めました。
未だに詳細の報告がありませんが、恐らくバイア州北部の Boa Nova 地域産のオパールと思われます。