フェナス石(Phenacite・Phenakite)


 
 Phenacite 0.21 - 5.55ct

 

 
フェナス石 12.1mm 5.55ct 2.15ct 14.1x8mm     0.48ct 6x4o Mogok, Burm
 Miask、Ural Mtns. Anjanabonoia, Madagascar  Mogok, Burma 

 

       
 2.45ct 8.61x8.26x5.68mm  0.33ct 4.70x4.70x3.20mm  0.61ct 7.2x4.7x2.8mm  0.29ct Ø3.9x2.3mm  0.21ct Ø3.8x2.1mm  0.41ct Ø4.5x3.0mm
Brazil  Saõ Miguel de Piraçicaba, Brazil 


フェナカイトの結晶
     
26x15mm
25x14mm  18x10mm
16x9mm  高さ 15o   5x4cm
Anjanabonoia, Madagascar 


   
 19世紀の図
水晶中のフェナカイト

Cornwall, England
 幅1.6p
Saõ Miguel de Piraçicaba
Minas Gerais, Brazil


 

化学組成
(Formula)
結晶系
(Crystal System)
屈折率
 (Refractive Index) 
比重
(Density)
モース硬度
  (Hardness) 
 BeSiO  三方晶系 (Trigonal)  1.654−670  2.91−3.00  7½ー8

 

 A・フェルスマン著”面白い地球の化学”の中に、フェナス石について二ヶ所、それぞれ一行づつの短い引用があります : ・・・日にさらすと数分間で色があせてしまう、火のように赤いフェナサイト、・・・

  フェナカイト はその美しくて赤い色が太陽に照らされると数時間後に色あせてしまうという理由で名づけられました。 
 採れた時は赤くて、たちまち色が褪せる石とは一体どんな鉱物なのかと、大いに興味をそそられたのでした。
 フェナカイトの名はギリシア語の ”Phenax=うそつき、紛らわすもの” に由来しますが、フェルスマンの説の他に、水晶等他の鉱物の結晶と酷似した形態で産出するため、という説もあります。
 珪酸ベリリウムというありふれた化学組成ではありますが、生成条件が限られているためでしょう、稀少鉱物の一つで、ペグマタイト脈、熱水鉱床、アルプス型山岳鉱床に燐灰石、水晶、トパーズ、緑柱石等と共に産します。 
 産地はオーストリアのハーバッハタール、スイスの Reckingen、 ノルウェーの Klagerö 、ウラル山脈のタコワヤ川、ブラジル、ミナスジェライスの Saõ Miguel de Piraçicaba,  ナミビアの Usagara, アメリカ、コロラド州の Mt. Antero、 メイン州の Lord's Hill、 ニュー・ハンプシャー州の Berlin、メキシコの Durango 等、数えるほどで産出量も非常に少ない鉱物です。
 そして宝石質の結晶となると、ブラジルが殆どで、その他ウラル山脈産が稀に市場に出るくらいでした。

 上記の写真の、ブラジル、ミナス・ジェライスのサン・ミゲル・デ・ピラシカーバからはかつて10x3cmもの素晴らしい宝石質のずんぐりした結晶を産しましたが、現在ではすっかり枯渇してしまっています。 
 フェナカイトは産地により、柱状面、菱面、四面などの発達の異なる単結晶や双晶等、多様な結晶形を示し、何故か一緒に産出する、水晶、微斜長石、トパーズ等に似た結晶形を示し、結晶研究者にとっては興味が尽きない鉱物です。 ”偽りの” という命名はこうした産状に由来するのかもしれません。 
 アメリカのスミソニアン博物館・自然史博物館の宝石ホールにはスリランカで発見された 1470ct の原石からカットされた 569ct のルースが展示されています。 
 前述のように、かつては稀少な鉱物で、結晶、ルース共に滅多に市場で見かけることはありませんでしたが、近年、マダガスカルにて豊穣な鉱脈が発見されたため、宝石フェアでは稀に遭遇するようになりました。
 アメリカのショーではクリスタル・パワーのあるヒーリング宝石として、怪しげなカルト風の業者が買い占めてかなりの値段で売られていたりします。
 どんな宝石であれ、結局はただの石に過ぎませんから、“パワー”などあるわけもありませんから、それで値段が吊上がるのはコレクターにとっては、いい迷惑です。
 しかし、まっとうな業者を通せばカラット当たり20ドルと、稀少な石にしては格安な水準です。
 さて、冒頭の火のように赤いフェナカイトは、かつてロシアのウラル山脈から産出したということです。
太陽光で色が褪せる宝石は紫水晶やトパーズ等他にもありますから、今となっては驚くこともありませんが、しかし火のように赤いフェナカイトとは一度で良いから、たとえ写真だけでも見てみたいものです。
 一般には無色ですが、麦藁色、淡いピンク、淡青等もあるとのこと。
 なお、ロシアの熱水法等の合成エメラルドにはクリソベリルと共にフェナカイトの結晶がインクルージョンとして見出され、天然との識別に利用されます。 高温高圧下で長い時間をかけて成長する間に合成エメラルドは一部が分解を始めてクリソベリル、フェナカイト、トリデイマイト (SiO2) へと分離するためです。 

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