ロードライト・ガーネット(Rhodolite Garnet)

パイロープ・アルマンダイン・ガーネット : Pyrope Almandine Garnet

 

ロードライト (Rhodolites ) 0.7ct - 3.58ct Ring 8.04ct


3.78ct 10.6x8.5mm
Srilanka
1.64ct 8x8mm
Srilanka
1.64ct 8.2x6.9mm 2.05ct 8.2x6.5mm
Tanzania
2.26ct 8.9x7.1mm
Tanzania


 
2.74ct 10.4x6.6mm 2,25ct 8.4x7.0mm 2.96ct 9.0x7.9mm 2.72ct 9.4x8.3mm 2.33ct 8.1x7.2mm 5.00ct 9.60x8.16x7.47mm 

 
8.04ct 13.8x9.5mm  3.26ct 9.2x8.2mm 1.82ct 8.2x6.1mm 2.18ct 8.9x7.2mm 2.21ct 8.2x7.0mm

   
 0.7〜0.8ct(6mm)  1.42ct(Ø6.6mm) - 1.90ct(Ø7.2mm)  1.54ct Ø6.9x4.80mm
Bahia, Brazil
1.29ct Ø6.0mm 
Tanzania

 

化学組成
Composition
結晶系
Crystal System
モース硬度
Hardness
比重
Density
屈折率
Refractive Index
 (Mg,Fe)3Al2(SiO4)3  等軸晶系
Cubic system
 7‐7½   3.74〜96  1.742〜780
 
 古代から愛好されていたにも拘わらずガーネットは比較的に地味なと言うより,二十世紀になってからは殆ど忘れ去られた存在でした。
 しかし二十世紀後半に入って鮮やかな色合いの新種がアフリカ各地で次々と発見されるようになって、ガーネットが宝石の世界で再び脚光を浴びるようなりました。
 とりわけ、メルロ−種のサンテミリオンを思わせる赤紫の葡萄酒色のロードライトは、豊富な供給と手頃な値段とでガーネットを代表する宝石となっています。


 Although well appreciated since ancient times, garnets have been almost forgotten in 20th century. The discovery of new specimens with splended colors, mainly in Africa, again spotlighted garnets in gemstone world, late 20th century. Particularly, reddish purple Sainte Emilion wine colored rhodolite represents garnet group gemstone for ample supply, thus affordable price.

  ロードライトは化学組成から分かるように、鉄礬柘榴石(アルマンダイン)と苦礬柘榴石(パイロープ)との固溶体です。
 鉄分とマグネシウム分との比率により、色合いが赤褐色から紫を帯びた葡萄酒色へと連続的に変化し、紫色を帯びた葡萄酒色に見えるものがロードライトと呼ばれます。
 インドのオリッサ州のロードライトの例ではパイロープ成分比が80mol.%と高い場合に鮮やかな赤紫色となり、56〜65%程度になると赤褐色味が強くなります。
 鉄分,即ちアルマンダイン成分比が高いものはパイロープ・アルマンダインと呼ばれて、ロードライトとは呼ばれません。

Rhodolite is a solid solution in between almandaine and pyrope garnet, as seen from chemical composition. According to the proportion of iron and magnesium, color changes gradualy, from reddish brown to purplish red, and purplish wine color type pyrope-almandine specy is called rhodolite garnet. In case of rhodolite from Orissa state, India, bright purplish red color type has 80 mol % pyrope component and if pyrope component drops to 56〜65 mol %, color turns to be reddish brown, which is called pyrope almandine and not rhodolite garnet. 

 ロードライトの赤紫と、パイロープ−アルマンダインの赤褐色の発色はいずれも二価の鉄イオンの歪んだ6面体配位と、三価のクロムイオンの8面体配位との組み合わせによるものです。
 同じ発色の仕組みでありながら何故色合いが異なるのか、今のところ明確な理由は解明されていません。
 もとのパイロープは暗い赤で、アルマンダインは褐色を帯びた赤ですから、この二つのガーネットの固溶体が何故美しい赤紫になるのか不思議なことです。
 ごく普通の両親から目も醒める美少女が生まれたと言ったところでしょうか。

Purplish-red color of rhodolite and reddish-brown color of pyrope-almandine is both combination of distorted cubic coordination of Fe2+ and octahedral coordination of Cr3+. It is not elucidated yet, why there exists different colors despite same mechanism. It is strange that solid solution of originally dark red colored pyrope and reddish-brown colored almandine create such beautiful purplish red wine color. I would say a splendid pretty girl is born from common parent. 

 宝石質のロードライトの産地は,主にケニア、タンザニア、モザンビーク,マダガスカル、インド,スリランカ,
ブラジル等です。 
産地による顕著な色合いの違いはありません。
 むしろ個々の石毎の鉄分とマグネシウム分との比率の違いによって色合いが異なります。
 市場ではロードライトの産地が明記されることは殆どありません。
 スリランカ産と表記してあっても、アフリカ産をスリランカでカットした石が含まれている可能性が大きいのです。 
写真の標本の大半に産地名が表記してないのはそのためです。

Gem rhodolite come from Kenya, Tanzania, Mozambique,Madagascar, India, Srilanka and Brazil. Color differes depending upon the proportion of magnesium and iron contents of each stone and not from localities of origin. 

 ロードライトは19世紀末にアメリカ、ノースカロライナ州、コウィー渓谷 (Cowee Creek) で発見された当時は片岩中に粉砕された破片として見つかる結晶が、主に紙やすりの原料として小規模な採掘が行われていました。 
 稀に大きな破片が見つかるとティファニー宝石店が買い取り、ファセット・カットされてロードライトと名付けられた稀少で高価な宝石としてコレクターの憧れの宝石となりました。
 その名はギリシア語の”ロードン (rhodon) : 薔薇” に由来する言葉です。
春の谷間を埋め尽くすロードデンドロン(シャクナゲ、つつじ類)の花が紫の霞がたなびく様の詩的な比喩からとられたものです。
 ノースカロライナの小規模な鉱床は,1930年頃までには掘り尽くされてしまいました。
 その後はスリランカらの砂利の中から採れる水磨礫となった宝石の原石のロットの中に時々紛れ込んでいるものがロードライトの主要な供給源でありました。

 事情が一変したのは,1960年代半ばにタンザニアとケニアの各地に鉱床が発見されたためです。
 さらに、1970年代半ばからはインドのオリッサ州でも10ヶ所以上の鉱山からロードライトを産出するようになり、世界の宝石市場にふんだんに出回るようになりました。
 タンザニア、インドともに前カンブリア紀(5.7億年より古い時代)の強い変成作用を受けた岩の中にロードライトが発見されます。

 When first discovered in North Carolina, U.S.A., end of 19th century as broken pieces in schist, rhodolite has been mined as raw material for sand paper. When big and clean piece was discovered, Tiffany bought them up to facette to sell as rare and expensive gemstone mainly for gem collectors.
The name derives from greek "rhodon : rose", a petic metaphor to explain North Carolina's spring valley filled with purplish clouds like rhododendron colonies.
Since small veins of Nortrh Carolina depleted soon, water worn pieces ,occasionaly found from alluvial deposit of Srilanka has been the major supply source.

The situation changed in mid 1960's by discovery of rich veins in Kenya and Tanzania. And in mid 1970's, more than 10 mines of Orissa state, India began to produce rhodolite and supply has increased dramaticcaly. Both in east Africa and India, rhodolite is discovered in pre-cambrian (older than 570 M years) heavily metmorphosed rocks.
世界のパイロープ・アルマンダイン (Pyrope-almandine from world)

建築資材用の花崗岩中のロードライト 右は拡大写真 中央の結晶 8mm
Rhodolite in granite (the lagest crystal 8mm)
 Baveno Italia
水磨礫の宝石質ロードライト 13mm
water worn gemmy rhodolite
Brazil
水磨礫結晶 17ct とルース 5ct
(Waterworn cystal  17ct
and faceted stone 5ct)

Kangala Mine, Tanzania
長崎県美術館の柘榴石 (Pyrope Almandine Garnet of Nagasaki Fine Art Museum)
ブラジル産の柘榴石花崗岩を使用した長崎県美術館 右は屋上庭園
Musem building employes Brazilian granite everywhere
花崗岩中の最大径3cmの
パーロープ・アルマンダイン
pyrope-almandine
in granite max 3cm
スター・ガーネット 15.6ct
Star Garnet
パイロープ・アルマンダイン
(Pyrope almandine)
 1.26 1.38ct
Mozambique
1.86 - 2.33ct
Orissa, India
ロードライト
(rhodolite) 5.17ct
産地不明(Locality unknown)
Kangala mine, Tanzania
 美しい結晶形を見せる宝石質のパイロープ・アルマンダインはまずありません。 
が、鉱物としては変成岩や花崗岩,ペグマタイト中に普通に発見されます。
 写真の花崗岩は、たまたま宿泊したイタリアのマジョーレ湖畔、バヴェノの街のホテルの階段や洗面所等に使われていたものです。半透明の赤紫を帯びたロードライトが一面に入っていて、実に美しいものでした。
 バヴェノは正長石のバヴェノ式双晶で名高い,花崗岩や大理石の産地で,現在でもあちこちで採石が行われています。
 次の写真は2005年4月に開館した長崎県美術館です。
建物の内外装の壁、床、柱、周囲の敷石等が全てブラジル産の花崗岩を使っています。そして花崗岩の研磨面には夥しいロードライトの結晶が見られます。
 中には直径が3cmにも達するような大きな結晶があって透明な断面が宝石のように煌いています。
 水磨礫のロードライトは、ブラジル産のアルマンダインとして入手しましたが,これだけ赤紫色が濃いのは、パイロープ成分比が高いロードライトです。

 Although gemmy crystals are rare, pyrope-almandine is commonly found in metamorphosed rock , granite and in pegmatite.
Photos of pyrope-almandine are examples found in granite used in buildings. First is gemmy rhodolite in granite decoration of hotel at Baveno, Italia. 2nd example is that of Fine Art Museum at Nagasaki, Japan., where we see maximum diameter of 3cm of rohdolite crystals are scattered in ornamental granite.

 タンザニアには初生鉱床のハンデニ、ティリリ、また漂砂鉱床のウンバ川流域等ロードライトの産地が数多くありますが、中でもラズベリー・ガーネットとして人気が高いのがカンガラ鉱山です。
 この輝かしい色合いは、微量に含まれるクロム・イオンが貢献しています。 
カンガラ地区ではルチル結晶のインクルージョンによって、珍しい4本と6本のスターを見せるロードライトも産します。 
 スター・ガーネットは比較的に珍しいもので、アメリカのアイダホ州やインド産のアルマンダインが知られています。
しかしいずれも不透明な褐色味の強いあずき色でスターも貧弱なため宝石としては全く美しくありません

 Tanzania is the most important rhodolite producer, where there are many mines. Among all, Kangala mine is famous for raspberry garnet, which bright color is a contribution of choromium impurity. Kangara area also produces rare four and six star garnet caused by rutile inclusion. Rare star garnets are reported from Idaho, U.S.A. and from Indian almandine, but most of them are opaque,color is dark brownish red and have poor star, therefore are not appreciated as gemstone.
 
 モザンビークからは1990年代になり、、アルマンダイン,パイロープ,スペッサータインとの固溶体型のガーネットの発見が相次ぎました。
 二つのルースはそれぞれ屈折率が1.770と1.776,比重が3.96と3.89と、物理データはパイロープ−アルマンダインですが、赤褐色味が濃く、ロードライトとは呼ばれません。
 最初に発見されたノース・カロライナ州のロードライトはまさに石楠花を思わせる,紫の色合いだったとの事です。
恐らく上の産地不明のものがそれではないかと思います。
 In early 1990, solid solution of almandine-pyrope-spesertine garnet has been reported from Mozambique. Two garnets of photography shows R.I. 1.770 and 1.776 and S.G. 3.96 and 3.89, which match that ofpyrope-almandine but due to reddish brown tint, they are  classified as pyrope-almandine and notrhodolite.
 The first rhodolite discovered in North Carolina, U.S.A. wasw said to have purplish  color which reminded us of rhododendron. Probably 5.17 carat sample of unknown locality seems to be of North Carolina.
ロードライトの価格水準 (Market evaluation for rhodoliet)
  かつては稀少で高価な宝石が新産地の出現によって市場を一変させた典型的な例がロードライトでしょう。
 現在,ロードライトの値段は一般的な2〜3カラットの大きさのものはカラット当り10ドル程度と、こんなに美しく魅力的な色合いの宝石としては破格とも言える手頃な水準です。
 5カラットの大きさでもカラット当り40ドルほどです。
 しかし稀な10カラット超となると美しいものはカラット当り100ドルとなりますが、他の宝石と比較すれば超バーゲンと言えるでしょう。 
 指輪にセットされている8カラットを超えるロードライトはバブル期以前に御木本が仕上げた宝飾品です。
大きさ、色合い、そして全く内包物の無い最上級のルースです。
 このような上質のルースは、一般の宝石フェアでは中々お目にかかれるものではありません。
こうしたルースは、どうやら高級宝飾店に直接持ち込まれる販路があるようです。
 
 冒頭の写真のハート型のような小さなものはフェアのショー・スペシャル価格では1個100円とか、まるでガラスのビーズ並の水準です。
 同じように見える石でも全く内包物を含まない石は数倍の値段になり、高級宝飾品に使われます。
 
ただし、その違いは20倍程の大きさの写真に拡大してようやく識別できる程度のものなので、コレクション用なら色合いさえ美しければカラット当たり100円程度の石でも十分楽しめます。
 いつもの事ながら、鉱物界の重鎮、F・ポー博士の言葉を借りれば、”ロードライトは宝石業界で最も過小評価されているものの一つだ”。
 ロードライトがただ同然なのは東アフリカやインドから大量の安定した供給があるためです。
 タンザニアのカララニ丘陵の一つの鉱山からだけでも,毎日25トンの土砂を処理して50kgの結晶が採れます。
そのうち5% (12,500ct) 程度が宝石へとファセットされると推定されます。
 タンザニアとケニアの全てを合わせると年間の宝石質のロードライトの産出量はどんなに少なめに見ても100トン (5億カラット) を遥かに超えると推定されます。 
 したがって、人気が高騰しても,現在の価格水準が跳ね上がる心配はまずあり得ません。

An evolution of market evaluation for rhodolite is a typical example that an apparition of new producer dramatically changed the price of once rarest and expensive gemstone.
Today rhodolite price level is US$10 for common 2〜3ct range, and US$40 for 5 carat stone, that are unusually low level for such an attractive pretty stone. Even the rarest 10 carat over stone is quoted US$100, but is super bargain price yet, compared with other gemstones. Small heart sahped stones are sold retail US$1 or less at show special and it is as low as glass beads. Dr. Dr. Frederick Pough says "Rhodolite is one of the most undervalued gems in then world. "
This situation will not change long time in the future, because of stable mass production at east Africa and Indian mines.
One mine of Kalalani Hills, Tanzania produces 50kg of gem crystal from 25 tons of rocks per day, of which, minimum 5%, 2.5kg (12,500ct) are estimated to be facetted as gemstone. Tanzania and Kenya only will produce gem quality rhodolite crystal would surpass minimum 100 ton (500 million carat). Such huge and stable supply may suggest easily that present lowest price will be maintained in the future.
Top Gem Hall