サフィリーン(Sapphirine)
サフィリーン(Sapphirines) 0.09ct - 1.61ct |
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1.51ct 8.0x6.8mm Madagascar |
0.85ct 7.2x4.3mm Srilanka |
0.48ct 5.1x4.9mm Srilanka |
0.09ct Ø2.9mm Srilanka |
最大のサフィリーン 8.64ct Tunduru Tanzania |
化学組成 (Formula) |
結晶系 (Crysral ]system) |
モース硬度 (Hardness) |
比重 (Density) |
屈折率 (Refraxtive Index) |
[(Mg,Al)8(Al,SiO)6O20] | 斜方晶系 (Orthorhombic) |
7½ | 3.45-49 | 1.700-707 |
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サフィリーンの結晶形 | 7x5x3cm Betroka Madagascar |
結晶 1cm | 白雲母上の結晶 幅2cm Betroka Madagascar |
名前と産状 (Name and Occurence)
サフィリーンとは”サファイアのような石”と言う意味です。
1814年に命名されましたから、比較的古くから知られていた鉱物です。
主にスカルン(石灰岩に高温の火成岩が接触して広域熱変成作用を起こした岩脈)やペグマタイト鉱脈に、コーネルピン,スピネル、コランダム等の鉱物と共に産するどちらかと言えば稀な鉱物です。
サフィリーンの宝石質の結晶は主にマダガスカルとスリランカに発見されます。
鉱物標本級のものはドイツの Waldheim、ノルウェーの Snaresund、フランスの Lerc、イタリアの Val Codera、ギリシア、グリーンランドの Fiskernäs, インドの Ganguruvapatti、南アフリカの Transvaal、カナダ,ケベック州の Saint Urbain、アメリカ,ニューヨーク州の Peekskill、南極の Mac Robertson 等々、世界の広汎な地での産出が報告されていますが,しかし量は限られています。
マダガスカルでは島の南部の南北300kmに及ぶ Betroka−Beraketa Belt と呼ばれる広大なスカルン地帯から硬石膏、燐灰石、正長石、コーネルピン、黒雲母,白雲母、柱石、スピネル、スフェーン,ジルコン等の宝石質の結晶と共にサフィリーンを産します。
サファイアに似てるとはいっても、一般にはオーストラリア産の"インク・ブルー”と呼ばれる暗い青のサファイアに似た色合いが殆どです。
この独特の沈んだ暗青色は恐らく二価と三価の鉄イオンによる格子間電荷移動による発色と思われます。
しかし,スリランカやマダガスカルからはこれがサフィリーンかと思うようなルースを稀に見かけることがあります。
上のBetroka産の明るい空色の結晶の色がそれに近いものです。
以前池袋での鉱物フェアでスリランカの業者が数カラットの大きく明るい空色のルースを展示していました。 同じ業者が見事なターファイトを展示していて,そちらを眺めているうちに、空色のサフィリーンが売れてしまって悔しい思いをしたことがあります。
余り見映えのしない宝石ですが、滅多に見かける事のない稀少石のためルースはカラット当り100〜200ドルと高価な水準です。
冒頭の褐色がかった赤橙色のサフィリーンは、1998年にタンザニアのトゥンドゥルーで発見されたもので,当初は比重と屈折率とがほぼ同じ値を示すベスブ石と考えられていました。
ベスブ石の化学組成は珪酸マグネシウム・アルミニウム・カルシウムで通常のスペクトロスコープや、EDXRF (Energy Dispersive X-ray Fluorescence Spectrometry : X線蛍光分析)では識別が不可能です。 GIA (アメリカ宝石学協会)にてラマン・マイクロスペクトロメーター等による分析でサフィリーンであることが判明したものです。
EXDRFによる分析では、この赤橙色のサフィリーンからは主成分の他に鉄、クロム、チタン、ニッケル,ガリウムが検出され、これらの遷移元素が特異な発色の原因と思われます。
タンザニアのトゥンドゥルーからサフィリーンが報告されたのは初めてのことで,しかも8.64ctというのはこれまでに知られている最大のサフィリーンのルースです。
因みに1985年夏の Gems & Gemology 誌に、通常の暗青色以外では初めての例として産地不明の1.54カラットの赤紫色のサフィリーンが報告されています。
どんな色であれ、サフィリーンを見たのはGIAの研究所でさえも当時は3度目であったということですから、サフィリーンが極め付きの稀少な宝石であることには違いありません。