セレンディブ石(Serendibite)
Serendibite 0.66ct 7.63x5.65mm | |
Sagaing Dist, Mogok, Burma |
現在市場で見かけるセレンディブ石のルースの全てはビルマのモゴク産です。
写真のように外見はジェットかショールをカットしたような黒く不透明な石に見えます。
が、背光に透かして見ると濃褐色の透明な石であることが分かります。
化学組成 (Composition) |
結晶系 (Crystal System) |
モース硬度 (Hardness) |
比重 (Density) |
屈折率 (Refractive Index) |
(Ca,Na)2(Mg,Fe2+)3(Al,Fe3+)3[O2|(Si,Al,B)6O18] |
三斜晶系 (Triclinic) |
61/2 - 7 | 3.39-46 | 1.697-604 |
宝石質のセレンディブ石(Gemmy Serendibite)
0.35ct 4,42x3.80x2.80mm | 0.55ct | 0.56ct 4.89x4.95x2.72mm | ||
Ratnapura, Srilanka | Kolonne, Srilanka |
スリランカの2ヶ所から採集された水磨礫からカットされた3個の小さなルースが宝石に相応しい色合いと透明度を見せています。
3個の石には色合いの異なる写真が存在しますが、ほぼ同じ石と考えられます。
名前の由来
1902年に初めてスリランカで発見され、スリランカのアラビア語の古名、サランディブに因んで命名された極めて稀な鉱物です。
その後1966年にカリフォルニアにて新たな標本が発見されました。
2005年以前に存在した宝石質の標本はスリランカ産の淡青から暗緑青色の0.35、0.55と0.56カラットの3個のルースのみであったという、極め付きの稀少な宝石です。
3人のスリランカの王子が求婚のために宝物を捜しに出かけるという”シンドバッドの航海”にも出てくる民話から
”Serendipity : 掘り出し上手” という英語の言葉が生まれたという逸話があります。
産地と産状
1902年のスリランカでの発見以降、アメリカのカリフォルニアの Riverside 郡、Commercial Quarry にて1939年に、同じく Crestmore Quarry で1983年に、ニューヨーク州の Orange 郡 Amityと Edenville, 同じく Warren郡の Johnsburg にて発見が1932年に報告されています。
その他にマダガスカルの Finarantsoa 地方で1990年に、また Toliara 地方の、こちらは Ianapera エメラルド鉱山、1956年に極東ロシア、サハ共和国のアルダン楯状地の鉄と硼素のスカルン鉱床、1939年にタンザニアの Tanga 等から、1975年にカナダ北東部の Melville 半島からと、世界各地で散発的に鉱物標本級のセレンディブ石が発見されています。
ビルマのモゴクが2005年以降のカットされたルースのほぼ唯一の供給源です。
同じ産地のペイン石の発見に伴って、セレンディブ石も発見されたと思われます。
ただし冒頭の写真のように透明ではありますが、漆黒のショールの様な外見で宝石とは程遠い品質です。
上記の産地情報からすると、セレンディブ石はスカルン性の地質に貫入した硼素に富む高温、高圧の熱水による変成作用で生成した鉱物と思われます。
セレンディブ石結晶(Serendibite crystals)
金雲母と白い大理石上の青いセレンディブ石 (Blue serendibite w/phlogopite in white marble) 4x2cm Johnsberg, Warren Co., New York |
1x0.7x0.7cm Sagaing Dist. Mogok, Burma |
セレンディブ石の価格(Serendibite's market prices)
宝石質と呼べる小さなルースが実質的には世の中に3個しか存在しない宝石です。
1997年にカットされた 0.35 カラットのルースに 5000 ドル (カラット当たりで14,300ドル)の値が付けられましたが、世界初の宝石とあれば如何なる値段でも驚くことではありません。
セレンディブ石が世界の宝石マニアの間で話題となったのは2005年以降ビルマのモゴク産ルースがかなりの量市場に出始めたことで、ようやくこの石の市場相場が形成されたためです。
当初は真っ黒なモゴク産のルースにカラット当たり数百ドルの値が付きました。
どんな値段でも飛びつくマニアはいるものですが、しかし安定した供給により、現在ではカラット当たり10ドルと、石炭のような真っ黒な石の魅力を勘案すれば、ごく真っ当な水準に落ち着いています。
もっとも、インターネットには、世にも稀なる宝石としてカラット当たり200万ドルという無責任な情報が飛び交い、赤やサファイアのような青と色とりどりのルースの写真まで出てくる始末です。
セレンディブ石にそんな色があるのかと、よくよく眺めてみると、実はオーストラリアの世にも稀な赤いダイアモンド(カラット当たり200万ドルと史上最高値で取引された)であったり、最早絶産となったカリフォルニアのベニト石の写真であったりと、宝石に疎い一部の無責任なジャーナリズムが適当な記事をでっち上げ、それらが玉石混交でグーグルの画像ライブラリーに並んでいるというのが実情です。
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