閃亜鉛鉱(Sphalerite・ Blende)

世界の閃亜鉛鉱 0.61- 15.0ct

 

4.31ct 10.7x7.8mm     2.5ct 7.6x7.6mm         15.0ct 15.0x12.0mm  13.5ct 13.5x12.3mm
Aliva Mine, Picos de Europa, Spain

4.44ct 11.3x9.2mm 4.02ct 8.9x8.9mm 1.18ct 8.5x5.6mm 2.40ct 10.6x6.6mm
Picos de Europa, Spain

       
 2.09ct 8.7x6.8mm 2.01ct 8.1x6.2mm 1.66ct Ø6.9x4.3mm  1.65ct Ø6.9x4.3mm   1.37ct Ø6.6x3.7mm
Picos de Europa, Spain Brazil
 現在市場に流通するカットされた宝石質の閃亜鉛鉱のルースの殆どはスペイン北西部、アストゥーリアス地方のピコス・デ・エウロパ山産です。
 透明度が高い橙色や金色のルースが眩い輝きを放つ第一級の産地です。
8.46ct 15.1x10.75mm 5.81ct 17.1x9.5mm 3.41ct 11.2x7.6mm 2.71ct 10.2x7.5mm      0.61ct 6.6x4.5mm
Bulgaria
 東ヨーロッパでは1000年以上昔から主要な金属鉱山が各地に存在し、現在に至るまで採掘が行われています。 
 上記のブルガリア産ルースの正確な産地は不明ですが、恐らく Madan 鉱山かと考えられます。
やや緑色を帯びた暗褐色の閃亜鉛鉱ですが、強い光が入ると虹色の閃光が煌きます。
宝石質の閃亜鉛鉱結晶 (Gemmy sphalerite crystals)
Cleiophane 22mm
苦灰岩上の結晶 2mm 大理石中の双晶 8mm
糖蜜色の結晶 幅 10cm 方解石上の結晶 67mm
Banska Stiavnika, Czecho Binn Valais, Swiss Carrara, Italia Tenagh, Ireland Picos de Europa
Spain

様々な産状の閃亜鉛鉱 (Sphalerite of various occurences)
鉄を多く含むスカルン型 8cm
 岐阜県神岡鉱山 (Kamioka
)
熱水鉱床型 9cm
新潟県入広瀬村白板鉱山
(Niigata)
黒鉱型 65mm
秋田県阿仁鉱山
(Ani Mine)
方解石を伴う閃亜鉛鉱 12x8cm
Spahleraite with calcite
水晶上の結晶
12mm
Japan Elmwood Mine, U.S.A. Cavnic Romania


 化学組成 
(Formula)
結晶系
 (Crystal system) 
結晶形
(Crystal form)
モース硬度
(Hardness)
比重
(Density)
屈折率
(Refractive Index)
分散
(Dispersion)
ZnS 等軸晶系
(Cubic)
 31/2 - 4   3.9 - 4.10   2.37−47  0.156
 
産状(Occurence)

 閃亜鉛鉱は熱水鉱床、黒鉱、堆積鉱床、スカルン、残留ペグマタイト鉱床と多彩な産状で生成され、世界中で広範に発見される鉱物です。
 全世界で毎年7百万トン程消費される亜鉛の殆どが閃亜鉛鉱を精錬したものです。
したがって鉱石として閃亜鉛鉱は年間数千万トンも採掘されますが、大半は写真のようにかなりの量の鉄分を含む不透明な濃褐色-黒の団塊として産出します。

様々な名前(Various names

 スファレライト (Sphalerite) の名はギリシア語の ”sphaleros = 嘘つき、だます人 ” に由来します。
閃亜鉛鉱が結晶形や色合い、光沢が良く似た硫化鉛の方鉛鉱 (PbS) と共に産し、見分けが付きにくいためです。 英語でBlende 或いは Zinc Blende とも呼ばれるのはまさに、鉛 (Zinc) の主要な鉱物である方鉛鉱 (Galena) と紛らわしい鉱物であることを示すものです。
 この他にも色合いや成分の違いにより、様々な名称があります ;

マルマタイト (Malmatite)  : 
コロンビアの産地 Malmato に因む鉄分を26%程度まで含む
クリストファイト (Christophite)  : ドイツの産地 Sankt Christphに因む 更に高濃度の鉄を含む
プリブラマイト (Pribramite)  :   チェコの Pribrum の町に因む。カドミウムを2.5%ほど含み
赤味を帯びている
グムシオナイト (Gumucionite)  : ボリビアの鉱物収集家 Julio Gumucio に因む. 1%前後の
砒素を含み木苺の様な赤味い色で
ボリビアとチリから産する
クレイオフェーン (Cleiophane)  : 鉄やマンガン等の不純物が少なく透明度の高い結晶 

 宝石としてカットできる結晶はクレオフェーンと呼ばれる透明な結晶です。
スペインのピコス・デ・エウロパの鉱山が最も有名ですが、その他世界の鉛や亜鉛、銅鉱山等でも美しい閃亜鉛鉱は発見されます。 
 神岡鉱山等日本各地の鉛・亜鉛鉱山の全盛時代には世界屈指の鉛や亜鉛の産出国でした。
新潟県の白板鉱山産の閃亜鉛鉱は ”鼈甲亜鉛” とも呼ばれ、透明度の高い大きな結晶を産しました。
 
スペイン ピコス・デ・エウロパの閃亜鉛鉱 

 宝石コレクター向けにカットされる閃亜鉛鉱の産地の中では、とりわけ透明度が高く、大きいものでは 20cm余りの宝石質の結晶を産したスペインのピコス・デ・エウロパ(Picos de Europa ) が有名です。
 ピコス・デ・エウロパはピレネー山脈から西へアストゥリアス地方を100kmに渡って伸びるカンタブリカ山脈の中心に位置する標高 2600mに達する山塊です。 この一帯の50平方qの範囲内に10余りの鉱山がありました。
 最も名高いのが鉱山はエスピナーマ(Espinama)村から10km程の道程の標高 1700mの地点にあったアリーバ (Aliva) 鉱山です。
この地域の亜鉛鉱の鉱床はローマ時代から先住のケルト民族によって知られていたとのことです。
 19世紀半ばから欧州諸国をも含めた複数の資本による開発が始まりましたが、険しい高地に至る道路の建設等を経て20世紀始めに本格的な採掘へと拡大され、1990年代初頭に閉山となりました。
 鉱山名は、ラス・マンフォーラス (Las Manforas) と名前が変わりましたが、一般にはこの鉱区の周囲に存在する10余りの鉱山を代表してアリーバ鉱山と呼ばれます。
     
 
   
Picos de Europa alt. 2613m
アリーバ鉱山 1974年 最大級のルース 78.4ct 79ct 2.4x2.4cm

 
ラス マンフォーラ ス (Las Manforas Mine) 鉱山遠景  ラス マンフォーラス (Las Manforas Mine ) 鉱山跡、Picos der Europa, Cantabria, Spain


 多彩な色合いを見せるアリーバ鉱山産の閃亜鉛鉱
     
緑色の閃亜鉛鉱結晶群 1980年発見 6.4p
(Green Sphalerite cluster found in 1980 6.4cm)
色帯を示す研磨された結晶片 9p 
(Polished sphalerite slab showing parallel^growth color zoning)
     
 
 結晶質の石灰岩と苦灰岩から成るカンタブリカ山脈ではおよそ3億年ほど昔、古生代中期の石炭紀の頃ヨーロッパに起こったバリスカン、ヘルシニア造山活動により出来た断層と亀裂に熱水が貫入し、主に閃亜鉛鉱と方鉛鉱とからなる鉱脈が生成したと考えられています。
 主産地のアリーバ鉱山では昔から博物館級の結晶の産出で名高く、鉱夫が持ち出さないように厳しい管理が行われていました。 
  閉山後も蜂蜜色の透明な結晶やルースの人気は高く、鉱山以外にも発見される露頭鉱脈を探すために、大掛かりな爆破作業による採掘が現在でも行われています。
 従って結晶やルースは少量ながら安定して市場に供給されています。 

  モース硬度が低く、その上劈開性の強い閃亜鉛鉱をカットするのは困難で熟練した研磨工にしか出来ません。
  しかし閃亜鉛鉱は屈折率がダイアモンド並に高く、光の分散値が 0.156 と、ダイアモンド(0.044)を遥かに凌ぐ高い値を持つため、上手くカットされた透明度の高い石は見事な煌きを示すコレクター垂涎の宝石となります。
  市場に供給されるルースは大変少なく、稀少な宝石と言えましょう。 しかしながら、硬度が低く傷つきやすいため、宝石としては実用になりません。 従って限られたコレクター用にカットされるだけです。
世界の宝石質の閃亜鉛鉱 

  ピコス・デ・エウロパ産の閃亜鉛鉱は鉄とマンガン、カドミウムを不純物として主に黄色〜橙〜赤の色合いですが、その他の産地からは緑色や青緑の美しい結晶が発見されています。
 下の写真のペリドットのような閃亜鉛鉱は1992年の3月にアメリカ、ペンシルヴァニア州の石灰岩の採石場にて鉱物採集中のコレクターによって発見されました。
  一つの晶洞の中から最大で3cmに達する100個以上の結晶が発見されました。
 下右の写真はカナダのモンレアル(Montreal:英語読みではモントリオールですが、ケベック州の公用語のフランス語ではモンレアルと発音されます)の東30kmにある、サンチレールの町の郊外の山、モン・サンチレールのペグマタイトにて1994〜95年に発見された閃亜鉛鉱をカットしたものです。


閃亜鉛鉱 結晶 1.5cmとルース 3.5ct
Thomsville Quarry Pennsylvania U.S.A.
コバルト着色の閃亜鉛鉱 3.98ct
Mt.St.Hilaire Quebec, Canada
内モンゴル 86.14ct
(Nei Mongolia)

     

Top Gemhall