ミスティック・トパーズ (Mystic Topazes)

 薄膜、拡散処理,トリプレット・トパーズ 
(Coating, Diffusion treated and Triplet topazes) 


多彩な色合いの表面着色処理トパーズ 1.24 - 9.50ct
Surface treated topaz in varieties of colors
   天然に比較的大量に採れる無色、或いは淡黄色、淡褐色、淡青色のトパーズは商業価値が殆どありません。
 金色とピンク、シェリー等、限られた産地から稀に採れる色合いのトパーズのみが宝石として珍重されています。
 一方、かつては捨てられていた無色のトパーズに放射線照射と加熱処理とによって濃淡様々の美しい色合いに変貌したブルー・トパーズが1970年代に登場しました。当初はかなり高価だったのですが、元々捨てられていた石を処理するため、大量生産によりたちまち値下がりし現在ではカラット当たり1ドルから10ドルと手頃な値段ですっかり宝石市場に定着しています。
 さらに1990年代末頃から新たな表面処理により多彩な色合いのトパーズが姿を見せるようになりました。
ブルー・トパーズは石全体が青く発色します。
 一方、新たに登場した様々な色合いのトパーズは石の表面、或いは表層下の一部のみが着色されているのが大きな違いです。
 これらの処理がどのようなものか、またその耐久性等をまとめて見ました。

 In nature, topaz generally occurs as pale yellow, yellow brown, pale blue or colorless and they are no commercial value. Topaze in golden and pink colors have been appreciated since long, because of their rarity. In 1970's, blue topazes in pleasing colors appeared in gem trade. They are originally, abandoned colorless and brown topazes, which turned to be attractive gemstone after irradiation and heat treatment. The blue topaz in attractive color has gained much popularity as a gemstone because of the stability of colors and affordable price of UD$ 1.00 to 10 per carat.
 Since end of 1990s, surface treated topaz in varieties of colors began to appear, targeted for volume market, such as chain stores and TV shopping channels.
 

アクア・オーラ(Aqua Aura coating)
両脇がトパーズ。中央二つは水晶
quartz(the two center stones) and topaze
蒸着表面の拡大 12x
Magnified surface
 コーテイング処理された宝石で最も早く登場したのは、アクア・オーラと呼ばれる、主に水晶結晶や、カットされた無色の水晶に金の薄膜を蒸着させたものでした。
 金の薄膜ですが極めて薄いためアクアマリンのような青に見えます。
 1980年代後半に出現し、1990年代を通して見られました。レンズ等への蒸着技術の応用により、他の塗装による着色と比べて日常の使用では簡単には剥がれない耐久性を持っています。

 Aqua Aura treatment was used extensively on quartz crystal and faceted quatz and topaz, which made their  debut in the late 1980s and were seen  throught the 90s. Durability testing showed the coating is relatively hard and chemically inert for norjmal use.



ミスティック・トパーズ(Mystic topaz)

 アクア・オーラに次いで1990年代末から市場に急速に増えてきたのが様々な金属薄膜の蒸着処理による多彩な色合いのトパーズです。
 ミスティック・トパーズとはその代表的なメーカーであるアゾテック・コーティング社の虹色のトパーズの商品名です。
 同社は現在200色以上のトパーズを月産30万カラット余り処理しています。
微妙な色合いの違いでそれぞれ名前がありますが、個々の名前に特別な意味はありません。
 市場で一般的な呼び名が定着しているミスティック・トパーズと呼ぶことにします。
 着色は水晶であれ、ガラスであれ透明であればどんな石にも処理が可能です。
水晶に着色したミスティック・クォーツも最近見かけます。
 素材のコストはいずれもただ同然ですが、***トパーズと命名して宝飾品としてより効果的なアピールが可能なトパーズが選ばれています。

 After Aqua Aura, colorful topaz with surface treatment, using varieties of thin metal film coating, appeared in the trade since end of 1990s, represented by the trade name Mystic topaz, that is a trade name of rainbow color topaz, created by Azotec Coating Technology Inc. of Minesota, U.S.A. 
4.72ct 9.9x9.8mm top 3.86ct bottom 8.08ct 2.02ct 9.1x7.0mm 2.10ct 8.9x6.9mm
 様々な虹色のミスティック・トパーズ
(Rainbow color mystic topaz varieties)
表面処理されたトパーズ (Surface treated topaz)

二色に着色されたトパーズ (Bi-colored topaz)
ea. 1.24ct 10.0x4.1mm
スティック・クォーツ(Mystic quartz)
10.36ct 18x13mm
 これらの多様な色合いのトパーズを作り出しているのは前述のようにアメリカ・ミネソタ州のアゾテック・コーティング社が代表的なメーカーです。  
 社名が示すように半導体産業の薄膜コーティングの専門メーカーです。イミテーション・オパールを手始めに天然のトパーズに薄膜コーティング・ビジネスに進出したのでしょう。  
 この他にも薄膜技術の特許を持つアメリカ・サン・ディエゴのレスリー社も1998年に緑色のトパーズを開発し、その後同様の多彩な色合いに着色されたトパーズが次々に作られています。

 Azotec Coating Technology Inc., Minesota, U.S.A. is one of the representing manufacturer to process the topaze, today about 300,000 carats of topaze over 200 colors are processed a month. Leslie & Co., San Diego, CA, also specialist and patents holder in heat diffusion process in semiconductor industry marketed similar coated topaz business since 1998 with green coated topaz.


着色技術の詳細(Color treatment technology)

 着色にはスパッターリング(真空中で金属をイオン化し対象の材料に高速で叩き付けて薄膜を蒸着する)技術が使われています。半導体や金属加工等に開発されましたが、現在では眼鏡や光学レンズの薄膜コーティング等々、広範な分野に採用されています。
 強いエネルギーで材料の表面だけではなく、内部にまで金属イオンを浸透させる技術は拡散処理と呼ばれて半導体製造には不可欠の技術です。数種類の金属皮膜を重ねることで虹のような多彩な色合いが作られます。
 さらに皮膜の耐久性を上げる為にメーカーによっては高温の加熱焼付け処理等が行われています。
このために処理中に50%もの石が破損するとのこと。
 しかし元々のトパーズがただ同然ですからコストはカラット当たり100〜200円程度のようです。

 Color treatment is achieved, using sputtering technology, developed for semiconductor and metal treatment field, which is now widely applied in thin film coating for optical lens etc. Annealing process at high temperature is accompanied, in order to enhance the durability of thin film. This process cause significant number of stones - up to 50 percent - break during treatment.

スワロフスキー社のトパーズ(Coating and Diffusion Processed topaz from Swarovsky)
コーティングされたピンク
(Coated pink)
拡散処理による着色(Diffusion treated colors)
"Summer Blue" "Ice Blue"
 クリスタル・ガラスの工芸品で名高いオーストリーのスワロフスキー社からも前述のトパーズと同様の技術を用いたトパーズが2008年に発表されました。
 それぞれの発色の技術的な詳細が公表されていますので紹介します。
 ピンクの発色はトパーズの表層に 200nm(0.02mm) の厚さで形成された金の皮膜に因ります。
金は内部には浸透していないためにコーティング処理による着色です。
 サマー・ブルーは無色のトパーズを酸化コバルト粉末に埋め、凡そ1000℃にて3時間余り焼きなまして発色が起こります。精密な測定の結果、コバルトはトパーズ結晶内部の80nm〜20nmの深さにまで拡散しています。
 同様にアイス・ブルーも酸化コバルトに酸化クロムを加えて焼きなまし処理をしてコバルトとクロムとがトパーズ結晶の内部の25〜100nmの深さにまで拡散されています。

 The color of pink treated topaz was achieved through the embedding of gold into SiO2. The Color of the Summer Blue topaz was achieved by exposing a colorless topaz to a cobalt oxide powder, accompanied by annealing under well-defined conditions at around 1000℃ for more than three hours. These same procedure were used to treat the Ice Blue topaz, with the addition of chromium.

コーティング処理トパーズの耐久性 (Durability of surface treated topaz)
6.36ct 5.64ct 3.19ct 3.29ct  8.3ct 12x10mm 9.5ct 14x12mm
 写真の石は1990年代末に市場に出始めた頃のコーティング着色の石です。当時の技術は未完成で数々の難点がありました ; 切子の稜線部分が剥れ易い、皮膜の厚さに斑があるもの、或いは皮膜が鏡のように光を反射して不自然な光沢があるもの、スクラッチによって容易に剥れるもの等々。
 何物か分からずに入手した 8.3ct と 9.5ct の青緑の石はレーザー反射計で換算した屈折率が 2.030-044, 2.108-122 と異常な値を示すために、よくよく観察して前述の様々な難点が明らかになり、コーティング処理されたものと判明した記憶があります。
 スパッタリング処理によって形成された皮膜の信頼性と完成度とは現在では実用では全く問題にならない水準にまで改良されました。
 日常の使用での衝撃、或いは修理の際に誤ってトーチの高温の炎が短時間接触したくらいでは剥れません。
 万一表面の一部が剥れても多少の再研磨には耐えられる程と言われます。
もっとも同じ色や寸法の石と交換したり、あるいは新たなアクセサリーを買った方が遥かに経済的でしょう。
 
 When first introduced in the market in 1990s, surface coating topaz had several weak points ; thin film scrathes off easily, particularly on the facet junctions, spotty and uneven surface coloration, unnatural appearance, due to mirro like reflection etc., etc. Two blue-green stones of 8.3 and 9.5ct, which I obtained without knowing it surface treated stone, showed abnormal refractive index of 2.030-044 and 22.108-122, using laser reflectivity equipment, revealed it as treated stone after careful observation.
 Today, however, surface treatment is greatly improved, both in durability and natural appearance.

トパーズ・トリプレット(Topaz Triplet)
紫水晶、シトリン、ルビー,パライバ・トルマリン等を模したトリプレット
(Actualy a topaze-triplet, which colors resemble amethyst, citrine, ruby, paraiba tourmaline etc.)
ガードル部分のみに着色 12x
separation plane at the girdle
 センター・ヒューズ・トパーズと称する様々な宝石の色を模したトパーズがあります。
スリランカで作られているトリプレットです。
蒸着着色を施した無色透明な二つのトパーズの着色面を挟んで熱と圧力を加えて接着しカットしたものです。上から見ると普通の宝石のように見え、ガードル面が見えないように宝飾品に加工すると、一見本物の宝石に見えます。
きちんと告知されなければ簡単にはイミテーションとは見破れない厄介な代物です。

 New twist on coated topaz appeared from Srilanka. So-called "center-fused colored topaz" is actully a topaz-triplet ; new technique involves coating the surface of a piece of white topaz rough with a color-causing agent. Two pieces of topaz are then fused together using heat and pressure so tha the colored layer is in the middle, and when sthe stone is cut that layer is oriented so it's at the girdle of the faceted piece.
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