ヒマラヤのトルマリン (Himalayan tourmalines)


パキスタンとアフガニスタンのトルマリン 0.79−7.59ct
(Faceted Pakistan and Afghan tourmalines)



  ヒマラヤとそれに連なるカラコルムとヒンドゥークシュ山脈は、数千年万年前に起こり、現在も進行中の、インド大陸がユーラシア大陸に衝突して起こった大規模な造山運動によって形成されました。
 これに伴って無数の広域変成鉱床やペグマタイト鉱床、山岳性の熱水鉱床、スカルン鉱床等が生成され、世界で有数の宝石産地となっています。
 紀元前から採掘されてきたラピス・ラズリや、大きく美しいクンツァイトとアクアマリン、量は少ないものの、いずれも最上質のルビー、スピネル、エメラルド、ピンク・トパーズ、さらに19世紀末に発見され、20年足らずの短期間に掘りつくされた、最も美しいカシミール・サファイア等々、列挙に事欠きません。
 ところがペグマタイと鉱脈にはふつうにみられるトルマリンは、黒いショールや標本級の多彩な色合いの結晶こそ採れますが、宝石としてカットされたルースは稀にしか見られません。
 
 The Himalaya and their westward extension into the Karakorum and Hindu Kush, formed with ongoing tectonic movement formed numerous pegmatites, alpine type hydrothermal veins and scarn veins, where varieties of world-famous gemstones are discovered ; lapis-lazuli, spodumen, beryl, ruby and sapphire, spinel, topaz etc., etc.
 However, faceted tourmaline from these area is rarely seen, except spectacular crystal spesimens and schorls.

パキスタンのトルマリン(Pakistan tourmaline)


 
6.15ct  13.8x8.2x7.2mm Achroite 26x8mm 外周部が溶融して中心部が
残された結晶 40mm
35mm 52x40x36mm
Stak Nala
27x12mm 14.4x9.0x5.2mm  16.8x6.2x4.1mm
 Kashmir


35x19mm 30x15mm 22x20mm 25x15mm 23x19mm 19x25mm 26x18mm
Stak Nala


パキスタン最北西部の主要な宝石産地  インダス川上流、Dusso、Shengus 等主要宝石産地の地質図


標高4000m、 Shengus のペグマタイト鉱床 ペグマタイト鉱脈 標高 3000 − 4000m、Stak Nala のペグマタイト鉱床と採掘光景


  パキスタン最西北部、周囲に K2、ナンガ・パルバット等、8000m級の山々が連なる高山地帯の谷間を流れるインダス川上流沿いの急斜面に無数のペグマタイト鉱脈があり、アクアマリン、ガーネット、トパーズ等と共に、トルマリンを産します。
 がトルマリンの大半は黒いショールで、宝石質のエルバイトの産地となると数えるほどしかありません :
 最北部、  Skardu 地方,インダス河上流沿いの Stak Nala, Sabsar,  Hoh、Asad Kashmir 地方, Donga Nar のエルバイト、同じく Astor のピンクや青いトルマリンくらいしか思い当たりません。
 それも結晶標本級が大半です。
 見映えのしない緑柱石のような色合いの 6.15ct の石は、本当はアフガニスタン産かもしれません。 何故ならアフガニスタン産の鉱物や宝石のほぼ全てが国境のカイバー峠を通ってパキスタン経由で世界市場に流通するため、正確な産地を特定することが困難なのです。

 Among numerous pegmatite veins in Pakistan, a few produces gemmy elbaite ; Skardu : Stak Nara, Sabsar and Shengus, Asad Kashmir : Donga Nar and Astor. Most of them are crystal specimen class and not facetable.
 Beryl-like green 6.15ct faceted tourmaline might be from Afghanistan.


アフガニスタンのトルマリン (Afghan tourmalines)
       
7.53ct 14.5x10.6mm 5.0ct 9.7x8.6x5.8mm  2.7ct 8.20x6.94x5.05mm  3.22ct 19.0x4.2x3.5mm  0.79ct 8.1x3.9mm 1.13ct
7.1x5.3mm 
 1.16ct
7.2x5.5mm
           
 
64x33x24mm
Vama, Nuristan
インディゴライト結晶
10x8o

32x6o
25x13o 20x7o 1.18ct 8.03x6.00x4.47mm
           
   m       
 48x14mm  37x33x30mm 紫色のリシア雲母と斜長石を伴う
ピンクのトルマリン 45x32x22mm
Vama, Nuristan 
 水晶と斜長石を伴う
トルマリン 43x22x22mm
 
35.5x30.4x18.7mm
 アフガニスタンからはアメリカ・カリフォルニアのサン・ディエゴ産と見分けがつかないほど良く似たピンクや、パステル・カラーの青や緑、さらに素晴らしいインディゴ・ブルーやエメラルド色等、魅力的な色合いのトルマリンを産します。
 大きく美しい結晶が採れますが、大半は透明度が低いため結晶標本です。
 例外的に美しい色合いの濃い青やエメラルド・グリーンの透明な部分はカットされ、高級宝飾品に使われますが、ほぼ全てのトルマリンの宝飾品は原産地が明記されることはありません。
 したがって確かにアフガニスタン産トルマリンのルースは滅多なことでは市場に姿を現しません。
 淡黄褐色の石はトルマリンとしてはありふれた色ですが、敢えてアフガニスタン産と明記してあるからには、それを信じるのみ。 金色のルースもトルマリンとしては稀な色合いです。ましてアフガニスタン産としては初めてお目にかかりますが、中々美しいものです。
 7.53 カラットと珍しく大きな多色のルースは10年ほど昔にツーソン・ショーに出品されたもの。こういう逸品が姿を見せるのはツーソンかミュンヘンくらいです。
 0.79カラットと、小さいながら魅力的な青いルースは如何にもアフガニスタン産のインディゴライトです。
 
 Afghan tourmalines resemble that of San Diego ones for their pastel color pink, indigo blue and emerald green, as well as their well terminated forms, ideal as outstanding crystal specimens for lack of transparency as gemstone purpose. Exceptionaly transparent stones are cut for jewelry. Since almost all tourmalines are handled without caring their locality origines, we have few chance to see faceted Afghan tourmalines in the market.
Pale yellow and golden color are rare as Afghan origine tourmalines.
 Rare large 7.53 carat multi-color fafeted stone was offered from Afghan dealer at Tucson.
 Small but attractive blue stone is a typical Afghan  indigorite.
  Two pale brown tourmalines are rare examples with clear definition as Afghan origine.

ネパールのトルマリン (Nepal Tourmaline)

]

Bi-color Tourmalines  
7.82ct Manang 5.63ct Hyakule
Ruby  Sapphire
2ct 
       2ct
Cat's-eye tourmaline
4.71ct
Hyakule
Ganesh Himar  Gauri Shankar
32x4x4mm
Hayakule
Dravite  21x13x13mm
Jajalkot
4.5p 3p
Hyakule Mine
最大の結晶 13.1p
Hyakule  Mine 
ネパール産宝石
(Faceted gemstonesd from Nepal)
紫、ピンク、黄色のトルマリン
4.73−5.69ct


ネパール東部、エヴェレストの東南東60qのHyakule 鉱山
(Hyakule mine, 60km south-southeast of Mt. Everest)
崩落寸前の坑道入口 1985年
Hyakule Mine
 ネパール産の宝石で、現在市場で時折見かけるのは、詳細な産地は不明ですが美しい藍晶石(カイアナイト)のみです。
 資料によると、ガネシュ・ヒマールからルビーが、ガウリ・シャンカールからはサファイアを産しますが、いずれも標本級の低品質のものが報告されています。
 写真のように、トルマリンは稀に宝石質のものがカットされたようですが、市場で見かける機会は結晶標本も含めてほぼ皆無と言ってよいでしょう。
 Hyakule 産の3p余りのピンクのエルバイトと Jajarkoto産の褐色のドラバイトはそれぞれツーソンとミュンヘンとで20年以上昔に入手したものですが、その後はネパール産は全く見かけません。

 Hyakule のトルマリン鉱山はエヴェレストから東南東に60qの急峻な崖の斜面に1934年に発見されたペグマタイト鉱脈です。 1934年の北インドのビハール州北部で起こったマグニチュード8.4の地震による雪崩と地滑りで地下のペグマタイト鉱脈が現れ、その後の20年間に1トン余りの結晶が採集されましたが、大半はインド向けに出荷され、他の地域には殆ど出回わらなかったとのこと。
 その後のモンスーンの大雨による地滑りで鉱脈は埋没し、再開発されずに放置されています。
ネパール西部の Jajarkot 近くのペグマタイトからは褐色の標本級のドラバイトを産し、その他詳細な情報はありませんが、いくつかのペグマタイトがネパール各地に発見され、村人が採集した標本がインドやタイの宝石商経由で、10年に1度くらい、Gems & Gemology , Mineralogical Record 誌といった専門誌に紹介されます。


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