自然誌館
(Nature
Hall)
貝の展示室
(Shell
Gallery)
左 チマキボラ 72mm と イトカケガイ 18 -
46mm (left) Japanese Wonder 72mm & Wentletraps 18 - 46mm |
世界には10万種を超える貝があります。南北に長く暖流と寒流に挟まれる日本は1万種と多彩な貝が見られます。
写真の貝はいずれも日本の南岸から太平洋・オセアニア・インド洋に生息する貝です。
優雅な姿と自然の造形美の素晴らしさとを代表する貝で世界の愛好家の垂涎の的となり、空前の高値を呼んだこともありました。
動植物の命名について
4000種余りしかない鉱物はもっぱら化学組成と結晶構造を基準にすれば分類はいたって簡単です。
と言っても私自身が見ただけで見分けがつくのはせいぜいその10分の1もあるかどうかですが。
一方1000万種以上にもなる動物と植物の分類は極めて困難な作業となります。
現在では18世紀にスウェーデンのリンネによる分類法が基本となり全ての動植物の分類が行われています。
例えば貝類は動物ですから動物界(Kingdom : Animalia)、軟体動物門(Phylum : Mollusca)の大分類に続き更に個々の特徴により下記のような詳細な分類によってそれぞれの種と名前が付けられます。
綱 亜綱 目 超科 科 亜科 属 種 Class Subclass Order Super Family Family Subfamily Genus Specy 腹足綱 前鰓亜綱 新腹足目 イモガイ超科 クダマキガイ科 チマキボラ科 チマキボラ Gastropoda Prosobranchia Neogastropoda Conoida Turridae Thatcheria mirabiris 腹足綱 前鰓亜綱 翼舌目 アサガオガイ超科 イトカケガイ科 オオイトカケ Gastropoda Prosobranchia Ptenoglosso Janthinoidea Epitoniidae Epitonium scalare
チマキボラ(千巻法螺): Japanese Wonder : Thatcheria mirabiris Angas
チマキボラ(Japanese Wonder) 72mm
産地不明(Locality unknown)遠州灘で網にかかったチマキボラ
(Dragnetted Japanese Wonder)
Ensyunada, Shizuoka, Japan
写真提供 : MIYOSHIの貝殻の部屋チマキボラの和名は姿が笹の葉を巻いたちまきのような法螺貝の意味です。ただし法螺貝科の貝ではありません。
学名のミラビリスと英名のワンダー共に,この貝の驚異の造形美を伝えるもの。
バベルの塔を思わせるこの貝が18世紀に初めてヨーロッパに伝えられた時は余りにも風変わりな形に当初は奇形かと考えられたとのこと。
こんな姿をした貝は他にはありません。
”日本の驚異”と世界に名を馳せたチマキボラは日本の中部以南からオーストラリアにかけての暖かい海の水深100〜400mに生息しています。
海岸に打ち上げられた貝殻は淡褐色に褪色していますが生きている貝は柔らかなピンク色。
右の写真は遠州灘海底から網で引き上げられたチマキボラ。生きている時は更に鮮やかな紫色であったとのこと。
オオイトカケガイ(大糸掛貝) : Precious Wentletrap : Epitonium scalare Linné
マニラ湾産のオオイトカケ等 Precious Wentletraps, 46mm, 22mm, 18mm Manila Bay, Philippine |
伊豆黄金崎の海岸を歩く ホソチャマダライトカケ 10mm A live Epitonium Glabratum on the seashore 10mm Koganezaki, Izu, Japan Photo courtesy by Vin |
イトカケガイ科の貝は日本近海には120種余が生息しています。
写真の3つはいずれも20年ほど昔ツーソンの鉱物フェアの会場で貝の専門業者のブースで求めたもの。
フィリピン・マニラ湾産のエピトニウム・スカラレと記載されているのみです。
大きい貝は確かにオオイトカケに違いありません。
が、他の小さな二つはその幼生か或いはよく似たヒルイトカケ、ナマクライトカケ、ホソチャマダライトカケ等の別種なのか、貝については全く素人の私には分かりかねます。
イトカケガイはその名のとおり、いずれも螺旋状に巻いたチューブを細い糸が繋ぎ止める構造を持っています。
とりわけオオイトカケは数あるイトカケガイの中で絶妙なバランスと純白の優雅な姿から人気が高く、博物学全盛の18世紀のヨーロッパで一時は異常な人気を呼びました。
例えばロシア王室では1個のオオイトカケに4千ギルダーも支払ったと文献にあります。
そのため中国人が米の粉や蝋細工で作った精巧な贋物まで横行したとのエピソードがあるほど。
残っていれば工芸品として高く評価されるでしょう。
オオイトカケの標本はフィリピン近海で大量に発見されるため、現在では1個1千円程度の手頃な値段で入手できます。
ちなみにツーソンで求めた写真の貝のラベルには3個で8ドルの値札が残っています。
日本でも東京湾以南の暖かい海で発見されます。水深20〜50mの細砂の海底に生息する貝です。
純白のオオイトカケが生きている時はどんな色なのか見たことがありません。
近似種のホソチャマダライトカケが伊豆の海岸を歩いている貴重な写真をVinさんのHPで見かけ使用の許可をいただきましたので紹介いたします。
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