はじめに

  ”空想の宝石・結晶博物館”をネット上に公開して23年目に入りました。
 一般的とは言えない宝石学の分野で、多様な訪問者の方々から年間100万を超えるヒット数にもなるとは当初は考えもしませんでした。  
 当初の構想は1000点余りに達していた宝石のルースと数百点の宝石結晶とをきちんと整理したい。
 ついてはそれぞれの宝石の素性、名前の由来、特性、産地、産状、地質、発色の仕組み等々、広範な視野から宝石と鉱物についての多彩な情報を網羅して整理したいという単純な動機でした。
 率直なところ、誰かがそんな情報を整理した本でも書いてくれたら助かるのだが、と甘い期待を抱いていました。
 しかし日本では鉱物の本すら見かけることは稀。
 まして宝石の本となれば大半は宝飾品の写真の羅列でしかなく、記述される内容といえば身もふたもない誕生石の由来やら、神秘、魔力、ヒーリングと、虚妄を並べ立てるだけで、専門的な視野に全く欠ける、恐るべき代物が大半です。

 時たま、鉱物学や結晶学の専門家による新書タイプの本が出版されます。
学術的に貴重な情報を得られのですが、しかしカラー写真がない宝石の本というのも欲求不満が募るばかりです。
 その上、専門家でさえもが、本気で信じているわけではないでしょうが、お付き合いか惰性なのか、誕生石云々等について臆面も無く徒にページを割いている例が少なからず見られます。

 そんなわけで写真も含め、広範な情報を網羅する本格的な宝石の本は永久に現れる気配するありませんでした。
 それなら自分でやるのみ、と思い立ったのが20年余り前のことでした。
しかしながら、”本”という形での出版は不可能と思い知らされました。
 まず5000枚を越える写真だけでもプロの専門家に依頼すると最低でも億円単位の出費がかかります。
 そのうえ、本という形で出版すると膨大な外部の資料の著作権も問題となります。
 構想をまとめて、写真等を添付して、出版社に送っても、返事さえありません。
 一般に人気のない宝石の、しかも無名の素人の本など、当然のことながら検討する価値もないということでしょう。
 膨大な時間と費用とを費やして構成した情報を内容を誰にも伝えられず,眠ったままにままにしておくとは、こんな空しいことはありません。
 そんな折に出現したのがインターネットでした。
誰でも自由に世界に向けて情報を発信出来る、あるいは逆に世界中から情報を得ることも出来るとは、まさに奇跡としか思えません。
 グーテンベルクの印刷術の発明をはるかに凌ぐ、人類史上最大の技術革新であるといっても過言ではありません。
 そしてデジタルカメラの出現によって、銀塩カメラでは不可能であった宝石の写真も、素人でも容易に撮れるようになったことも決定的な要因でありました。

宝石と鉱物について公開する傍らで、その他、庭の薔薇や野の花、姿や色合いが気に入った貝の標本、さらに、人生の様々な局面で出会った、絵画、建築、文学作品、音楽、映画、オーディオ機器、そして、心に残った天文学や、最先端技術・・・・・等々心躍らせる様々な美しい事柄についても書き残したいと、いわば、自らの墓碑銘のつもりでホームページとして残そうと考える次第。 
 
    主要な参考資料 ;

    1.Gems & Gemology ( 宝石と宝石学 )
 
1934年1月創刊号 1947 Spring 1967 Spring 1981 Spring 2009 Summer  2018 Summer
 アメリカ宝石学協会(The Gemological Institute of America)が年4回発行する季刊誌 Gems & Gemology (宝石と宝石学) です。
 1934年の創刊時のB5版白黒版以来2度の変更を経てA4版の完全カラー版となった 1981 年Spring を経て75周年を記念する 2009年 Summer に至る 320 冊余の情報の蓄積は世界の宝石学を首導する代表的な資料です。
 とりわけ完全カラー版となった1981年からは、世界の第一線の宝石、鉱物、結晶等の専門家達の執筆と、Harold & Erica Van Pelt夫妻、Tino Hammid,Maha Tannous, Robert Weldon, Jeff Scovil等々、屈指の専門家による写真とで充実した内容が満載です。詳しい内容を知りたい方々にはぜひ購読をお勧めします。

注目 ***  

2013年4月から創刊以来のバックナンバーが最新号をも含め、全てネット上で無料で読むことができるようになりました 

2.The Journal of Gemmology

 
 アメリカのG&G誌と権威を競う宝石学の老舗イギリス宝石学協会が発行する季刊誌です。
  1940年代末に創刊と歴史は古く、G&G誌の広く一般読者をも対象にした編集方針に対抗して、アカデミックな内容が特徴です。
 すなわち学会の研究発表がそのまま掲載されています。
研究者には歓迎されるかも知れませんが、率直なところいささか退屈です。したがって私も3年間ほど購読して止めてしまいました。頑固なイギリス人が編集方針を変更したとは考えられませんから、恐らく昔のままでしょう。
 因みに、イギリス宝石学協会が主催する宝石学の試験内容を見たことがありますが、その難しさには呆れました。私は間違いなく不合格です。
 香港、シンガポール、オーストラリア等、かつての英連邦の国々の人々に混じって、結構日本人の合格者が多いのには感服するのみ。
B4版の大きさの本誌 1991年から年一回添付の
宝石と宝飾品ニュース
   

3.Revue de Gemmologie A.F.G

 
 1901年に創設されたフランス宝石学協会発行の季刊誌で1960年代半ばに創刊されました。
 仲間内で楽しくやっているサロン的な雰囲気が特徴ですが、地理的、歴史的な関連が深いマダガスカル、コンゴ等旧植民地を含むアフリカやブラジルの宝石産地の詳しい情報が得られます。
  さらに、世界各国の金やダイアモンド産出の量や鉱山毎の品位等の詳細な情報が定期的に掲載されるのも貴重な存在です。
 フランスのナント国立大学には宝石学の講座がある程。
  宝石に含まれる微量の放射性元素の分析でエメラルドの産地別の特徴や生成年代の測定等の最先端の宝石学の成果の特集が時々組まれます。
1972年 6月号 1976年 6月号  1992年 6月号    

4.LAPIS

 
 ドイツにも他の国同様の宝石学協会がありますがLAPIS誌は民間の独立した出版社の鉱物専門誌です。
 私自身はこの雑誌を昔から知ってはいましたがドイツ語で読むのは大変なので敬遠していました。
 池袋ショーで見かけて、内容の充実振りに驚いて一大決心をして読まねばならぬと5冊も買ってしまいました。  
 丁度トルマリン・シリーズを始めたところで大いに参考になりました。 
 さすがはドイツ人で、徹底したアカデミズムに裏打ちされた内容は参考になります。
 それにしてもドイツ語の特徴で専門用語は複数の語彙を組み合わせる長々とした造語が続出し、手持ちの13万語を擁する辞書に載っていない単語が続出し、なかなか読み進めません。
 最近は英語版の鉱物別、産地別の特集が出ています ;

 Beryl, Tourmaline, Calcite, Madagascar, Pakistan, Elba et
c.
  
 
トルマリン特集号 ルビー・サファイア・
コランダム特集号
 
5.The Australian Gemologist

 1945年創刊と、古い歴史を持つオーストラリア宝石学協会の季刊誌です。
  かつてはB6版と小型でしたが現在はB5版へと大きく、見やすくなりました。
 内容はアメリカのG&G誌に準じる傾向で世界中の宝石学者の寄稿による多彩な
 情報満載です。
 ダイアモンド、金、サファイア、オパール、鉄、鉛、亜鉛等々世界的な鉱物産地故、詳細な現地の産地のレポートや珍しい南極産のガーネットなど、オーストラリアならではの記事が見られます。
 さらに世界中の鉱物・宝石雑誌の記事のダイジェストもあるので、重要な情報をいち早く得ることが出来ます。
 
1991年8月号 B6版 1994年 9月号 A5版 1995年 50周年記念号
  
6.Gemmology(ジェモロジイ)
   日本の代表的な宝石鑑定機関である全国宝石学協会が発行する、なんと1970年以来の
 月刊誌というのはそれだけでも表彰ものです。
 月刊ゆえ、内容の密度が薄まるのは止むを得ませんが、ロシアやオーストラリアの
 ダイアモンド鉱山のレポート、アカデミックなダイアモンド生成理論、地質などの論文、日本産宝石鉱物の産地のシリーズ等高い水準の連載もあって、鉱物ファンも楽しめます。
 さらに宝石の加熱処理や、樹脂加工、合成宝石やイミテーション等、宝石業界にとっての関心事も毎月の連載で紹介されるなど健闘しています。
 こうした記事が日本語で楽に読めるのが何よりです。
 
 
 * 全国宝石学協会は2010年10月に破産・閉鎖されました

  7. Gem & Crystal Treasures
 
 鉱物学者の Peter Bancroft がなんと世界の100ヶ所の古今東西の著名な鉱山や鉱物産地を自ら訪ねて紹介した貴重な本です。
 各地の鉱山に残された貴重な写真と詳細なレポートはそれぞれの産地の一流のプロの手になる代表的な鉱物・結晶の写真と共に、後世に残る記 念碑的な本となりました。
 鉱物ファンなら絶対に見逃せない一冊。
 アメリカ Mineralogical Record の本です。

写真はカナダ、ケベック州 Asbestos の Jeffrey Mine の1879年当時 の写真です

     
  
   
8. Gem Profile The First 60 & The Second 60
 
 アメリカの商業宝石誌 ”Modern Jeweler”に 1983年来、ジャーナリストの David Federman のレポートとTino Hammid の写真とで連載された宝石毎の流通と価格、さらに宝石業界の実態とをレポートしたシリーズが2冊の本にまとめられました。 
 普通の宝石学会の季刊誌では決して取り上げられる事のない、宝石毎の価格水準が明記されているのが特徴。
 宝石業界を巡る様々な逸話が満載されていて、宝石の世界の異なる側面が凝った 文章で描かれています。

9. Fred Ward Gem Series

 アメリカの宝石ジャーナリスト、Fred Ward のシリーズで他に、真珠、
 ダイアモンド編と翡翠の5冊からなる。
 これらのシリーズはかつてナショナル・ジェオグラフィック誌の国際版
 に掲載された内容を再編集したものです。
 優れた宝石専門家でもあり、宝石ジャーナリストでもあるフレッド・ウォードが、
 それぞれの宝石の歴史、産地、鉱山の実情、宝石取引の 実態、宝石の加工、研磨、 合成宝石等、広汎な視野からのレポートです。
  膨大な情報を手際良く整理して盛り込んだ、大変読み応えがあるシリーズです。

10. Chasseur de Pierres (宝石の狩人)

 
 フランスの宝石学者であり宝石商でもあるパスカル・アントルモンが世界の宝石産地を巡 る冒険レポート。
 自らスリランカとオーストラリアに宝石鉱山を持つ著者は、宝石を求めて世界中に冒険 の旅に出る。
 1980年代に幻の“カシミールのサファイア”の産地を訪れた外国人は彼以外にはい なかったはず。
 パリのルーヴル美術館の近く、幽霊の出そうな Passage Verdeau(パサージュ・ヴェ ルドー:パサージュとは歩道をガラスの屋根で覆ったショッピング・アーケード)にあ る宝石研究室件宝石店に行けばカシミールのサファイアがあります。

 左の表紙の写真はタイの宝石産地での著者


11.I Minerali della Provincia de Sondrio VALMALENCO
   (ソンドリオ地方、マレンコ渓谷の鉱物)

 
 スイス東南部のサンモリッツからアルプスを隔てて南側のイタリア側、マレンコ谷はデマントイド・ガーネットの産地として世界的に有名です。
 激しい造山活動によりアルプスには熱水鉱床、熱変成鉱床、交代鉱床、ペグマタイト鉱床等々、多様な鉱床が発達し、多彩な鉱物を産出します。
 この本は、豊富な鉱物写真と地質図等によりアルプスの代表的な鉱物産地の実態を教えてくれます。 
  数少ない鉱物の本の中で山岳性の鉱床についての稀少で貴重な資料です。

 右の写真は中央がマレンコ峰(標高3438m)で下の図は中腹から山頂に至る多様な鉱床の存在を示しています。
 機会があれば現地を訪れてみたいものですが、鉱物採集には熟練した登山技術の習得が必須の条件となるでしょう。

12.Habachtal/Pinzgau 
 ハーバッハタール/ピンツガウの鉱物、地質とエメラルド鉱山
 
 オーストリアのザルツブルグから南へおよそ100km、アルプスの標高 2300m の地点にローマ帝国時代から知られていたエメラルド鉱山があります。
 アルプスのエメラルド鉱山という意表をつく存在は、それが一体どのような場所で、どんな地質の条件でエメラルドが結晶したのか、長い間の謎であり、何とか詳細を知りたいものだと探していましたが、1996年に発行されたこの本で、ようやく永年の謎が解けた次第。
 B5版、60ページ余りの小冊子に必要にして十分な情報が満載されています。
 ハーバッハタールはスイスやフランスアルプスに劣らず、大変美しい土地でもあります。
 右の写真は19世紀末から20世紀初頭にかけて活発なエメラルド採掘が行われた鉱山跡
13. Minerals & Gems : The Smithsonian Treasury
14. Gems & Crystals  : 
   From The American Museum of Natural History

 13. Minerals and Gems

世界で最も豪華な鉱物と宝石のコレクションを持つ、アメリカ・ワシントンにあるスミソニアン博物館の自然誌博物館のコレクションを中心に、一般向けに鉱物学や地質学の基本から、各宝石の簡単な紹介を豊富なコレクションの写真付で解説した本です。

 14.Gems & Crystals

 スミソニアンと並ぶニューヨークのアメリカ自然史博物館の宝石ホールのコレクションを宝石別の簡単な解説付で紹介した本です。
 アメリカ自然史博物館の宝石ホールはモルガン財閥の創始者J.P.モルガンのコレクションを中心に、世界で屈指の内容を誇ります。
 因みにセントラルパークを挟んでアメリカ自然史博物館と向かい合うメトロポリタン美術館の重要な所蔵品も、史上最大のコレクターと呼ばれたJ.P.モルガンのコレクションの大半が寄贈されたものです。

15. Gemstones And Their Origins

 
  アメリカ、ロス・アンジェルスの自然史博物館の宝石ホールは、
 テキサスの石油王F.C.Hixonが寄贈した、Hixon Collection と呼ばれる宝石のルースを中心に世界でも屈指の水準です。
 Hixon は 1970年 当時に100万ドルと新しい宝石ホールの建設費を寄贈し、コレクションは1978年に一般公開されました。 
 それに先立ち Gems & Gemlogy 誌の 1977 年春号は全ページをカラーでその全容を紹介する異例の特別号となりました。 
 本の著者の Peter.C.Keller は永らくこの博物館の宝石部門の研究員を務めた宝石学者です。
 世界の主な宝石産地の、主として地質学的な側面からの詳細なレポートが紹介されている貴重な資料です。
 内容は Gems & Gemology 誌に既に掲載されていますが、こうして一冊の本にまとめられと壮観です。
 
宝石写真の第一人者の Erica & Van Pelt 夫妻の手になる写真で宝石の魅力が余すところなく捕らえられています。
 表紙  アーガイル・ダイアモンド鉱山
オーストラリア
同鉱山の地質図  

16.宝石の世界

 
 1971年オーストリアで発行されたこの本の著者 Dr.Hermann Bank はドイツ宝石学協会の初代の会長であり、世界的な宝石学者として知られています。
 この本は宝石の定義からその成因、産状、採掘、選鉱、特性から分類、名前の由来、さらには宝石の加工、エンハンスメントと呼ばれる、色の改良、有名なダイアモンドの逸話、合成宝石、著名な宝飾品等々、およそ宝石に関する広汎な視野に立って全情報が網羅されています。
 宝石学が急速に発展した現在においても、その内容は古びるどころか、未だに最もスタンダードな資料として第1級の宝石の本といっても過言ではありません。
 そうした本が1974年に日本でもいち早く翻訳され、発行されたと言う事実もまた驚異的です。
 この本にある多彩な宝石の美しい写真こそは、私の生涯に渡る宝石収集への願望に火をつけたに違いありません。
 50年前の未だ貧しかった時代の日本では、宝石のコレクションなどは夢のまた夢でありました。
 
 
17. La Grande Encyclopedie des Mineraux (鉱物大百科事典)
 この鉱物事典は1986年にチェコ語版、ドイツ語版、フランス語版等とが出版されています。
  鉱物事典はありそうでなかなか良いものがなく、この事典は451点のカラー写真と、鉱物名の由来や
 化学組成の詳細、化学特性、結晶形、産地、類似鉱物等、必要にして十分な情報があります。
  写真の鉱物は大半がプラハの博物館や大学のコレクションで、東欧産の珍しい標本が見られるのも
 嬉しいことです。
 東ヨーロッパは、チェコ、ポーランド、ルーマニア等、知る人ぞ知る鉱物の宝庫でもあるからです。
  外国の資料の難点は、鉱物名が日本語では何というのか、特に新種の鉱物など分からないことです。
  日本では今や鉱物学は全く忘れ去られているに等しく、鉱物図鑑など、トンとお目にかかりません。
 わずかに堀秀道さんが孤軍奮闘しているのみというのが実情で、情報の大半は海外の資料に頼らなければ
 ならないというのは本当に情けない話です。

18 Minerals (鉱物)
 

  上記と同様にチェコの鉱物学者が編纂した英語版の鉱物事典です。
写真付きで取上げられた鉱物種は 600 種を越え、それぞれの化学組成や
特性、産状と産地等の説明があり、大変役に立ちます。
 大判 (30x22cm) で全てカラー写真付きの鉱物事典で値段が US$15.98
と格安なのも何より。
 

19 LAROUSSE des pierres précieuses (ラルースの宝石事典)

  百科事典で名高いフランスのラルース社が満を持して出版した宝石事典。
 200を越える宝石名について、名前の由来、特性、産状、産地、歴史、研磨、合成技術等広範な視野の記述が 豊富な写真と共に紹介されています。 
 それぞれの宝石の代表的なルースが世界のどの博物館にあるか、さらに世界の宝石博物館と主な収蔵品のリスト、主な宝石の合成品の出現の年代別の一覧表、イミテーションやエンハンスメント等も豊富な写真や図表等でしっかりと 説明してあります。
 フランス語版ですが空前絶後の内容を誇る宝石百科事典です。
 当然のことではありますが、宝石のパワーだの誕生石云々といった非科学的な側面は一切取上げない、という毅然としたアカデミックな姿勢を貫いているところも小気味良い限りです。

 

20 Gemstones (宝石)

 宝石学者でもあり、屈指の宝石コレクターでもあったスイスのギューベリン博士のいわば
 集大成ともいえる本です。
 宝石の写真はこの世界の第一人者、Erica & Van Pelt によるもの。
 宝石産地や宝石結晶、博士の専門分野であるインクルージョン、さらに世界の王室や
 博物館の代表的な宝飾品等、 広範な分野の情報が貴重な写真付きで紹介されています。

21 1. 光る石 
 
   ガイドブック 〜蛍光鉱物の不思議な世界〜 山川倫央[著] 誠文堂新光社 2008年9月出版

   2蛍光鉱物  光る宝石 ビジュアルガイド 
    
光る石を楽しむデータ・ブック          山川倫央[著] 誠文堂新光社  2009年5月出版


     リンクしている ”鉱物たちの庭”の山川倫央さんのホームページで取上げている蛍光する鉱物について 独立した内容でムックスタイル、A4版の本が出版されました。
 蛍光や燐光を発する鉱物の発光の仕組みについて、長年かけて蒐集された見事な鉱物標本の美しい写真 と博覧強記の山川さんならではのテキストとで 見応えと 読み応え充分の出色の本となりました。
 光る石の様々な仕組みについての説明も分かりやすく、かつ本格的な資料とデータ とが豊富に揃っている のも流石です。
  山川さんの ”光る石”好評に続く矢継ぎ早の光る石シリーズ第2弾 !!!
   前著で収めきれなかった山川さんの薀蓄が怒涛の如く溢れ出した第2作。
 美しい鉱物の写真を楽しむのも善し、本格的でありながら分かりやすい光の理論になるほどと肯くのも善し、世界の鉱山の逸話を読むのも善し、手際よくまとめられた膨大な資料のデータブックとして活用するのも善し。 
 
 

 22 水晶 瑪瑙 オパール ビジュアルガイド  砂川一郎 著 2009年 誠文堂新光社刊

               
                わが国を代表する鉱物、結晶学者の砂川一郎著の石英系鉱物のビジュアルガイド。
30cmx21p の大判のムック形式で出版された。
 中身は大学の鉱物学や結晶学の講義そのもので専門性が高く、気合を入れて
読まなければならないが、127ページの全ページがカラーで、写真や図がふんだん
に使われているので、眺めているだけでも楽しい。
 鉱物や宝石の本は、こうでなければならないと、常々思っていたような本がようやく
現れたかと、感慨が深い。
 これに続いて柘榴石や緑柱石の本でも出てくれたら嬉しかったのだが、残念ながら
砂川先生が2012年に御年88歳で亡くなられた。
 この本は世界で屈指の鉱物、結晶学者の遺作となってしまった。


23. Colored Stone
・ Lapidary Journal (Jewelry Artist)

 
 いずれもアメリカの宝石商業誌で、購読料が極めて安いのが嬉しい。
  Colored Stone は年間 6 冊で US$34.95、Lapidary Journal は年間 12冊
 で US$42 (いずれも船便での郵送料込みの定期購読料)
   Colored Stoneは宝石のビジネス面を中心の内容が充実していて、世界の
 新発見の鉱物、宝石情報、鉱山の経営や宝石市場の動向、宝石フェアの情報、
 宝石の価格など満載。2009年に休刊となりました。

   Lapidary Journal は宝石の研磨、加工等、宝飾品のデザイン等の情報誌。
 頻繁に宝石毎の特集が組まれて産地や市場の動向等が分かります。
  さらに鉱物学の重鎮、F.Pough 博士の Mineral Notes が連載され、鉱物や
 宝石の興味深いエピソードが紹介されていて、これを読むだけでも購読する
 価値がありました。  
  ポー博士亡き後は、後継者による鉱物紹介の記事。
 その他アメリカの鉱物産地の紹介もあって、毎月の到着が楽しみでしたが、
 これも廃刊となりました。

 

24 The Mineralogical Record


 1968年来、アメリカで年間6冊の割合で定期的に発行されている鉱物誌。。
 世界中の鉱山を訪ねて地質、産状、鉱物学、結晶学等の面からの詳細な報告が掲載されています。
  創刊号以来の編集者の鉱物学者の Wendell E. Wilson  が現在は編集長を担当している他に、アメリカの名だたる鉱物学者や、世界の有力な鉱物ディーラーがほぼ全員フェローとして関与し、さらに Jeff Scovil 等一流の鉱物・宝石写真家の手になる鉱物写真が満載。
  その上、世界的な鉱物コレクターの標本の特集号が別刊として定期発行に加わります。
 世界各地の鉱物ショーのレポートや新産地情報等、コレクターには定期購読必至の鉱物雑誌と言えましょう。
 創刊以来のバックナンバーもありますが、次第に在庫がなくなっています。

 2010年来、ミュンヘン・ショー、ダラス・ミネラル・ショー、ツーソン・ショー、さらに鉱物シンポジウム、著名なコレクター
鉱物商コレクション等の特集号の別冊と2時間のDVDの付録が付いています。
 それで3年間の送料込み購読料がUS$249とは破格の値段です。


25 Gem Information
     
       世界で屈指の宝石鑑定機関である日独宝石研究所が年に一回発行する会報です。
世界の宝石産地、新しい宝石、宝石分析技術等々、宝石学の分野の最新の情報が掲載されています。
 近年、宝石のベリリウム拡散処理等々、様々な技術が開発され、ダイアモンド、エメラルド、ルビー、サファイア等々、稀少で高価な宝石程、様々な処理が施されているため、市販される宝石の正体を見分けることが長年の経験を持つプロの宝石商でも困難な状況になっています。
 かつてカシミールのサファイアを入手した時に、添付されていた赤外線吸収特性や紫外線ー可視光吸収特性、加熱処理の有無等の詳細な分析を行ったのが、この日独宝石研究所でした。
 これらの分析なしには、加熱、拡散処理の有無や、産地の特定など、宝石の価値を見極めることは不可能と痛感させられました。 

  26 様々な雑誌に特集される宝石・鉱物関連特集
ダイアモンド特集
1979年 1月号
日本版2002年3月号 フランス版GEO1986年
10月号のダイアモンド
メキシコのGeoMundo
1988年2月号
1993年10月号 2001年5月号
 海外の雑誌には宝石特集号がしばしば掲載されます。
とりわけ National Geographic 誌には、過去に宝石、結晶、ダイアモンド、エメラルド、ルビー、真珠、翡翠と、主だった宝石を殆どカバーする特集が出ています。
 この雑誌はとりわけ写真の美しさが特徴ですから宝石は格好のテーマでしょう。  
 1979年1月号は宝石ジャーナリスト、F.ウォードの記事ですから内容も読み応えがありました。
 2002年3月号の日本版は内容こそいまいちでしたがロシアのダイアモンド鉱山の写真を見るだけでも価値があります。
 ヨーロッパにもナショナル・ジェオグラフィックに相当する Geo 誌がドイツ語やフランス語版で存在し、宝石全般とルビーやダイアモンドの特集が出ています。
  上記はフランス語版のダイアモンド特集で、これも内容はともかくナミビアのダイアモンド鉱床の写真等は見事なものです。 
  メキシコ版の GeoMundo(ヘオムンド)誌も同様の雑誌ですが、たまたまメキシコを訪れたときに町の本屋でエメラルド特集号を見つけました。
  本場コロンビアでは現地の一般週刊誌や新聞にメデジンの麻薬マフィア Nr.2 であるロドリゲス・ガチャとエメラルド鉱山王、ビクトール・カランサとの死闘が詳細にレポートされていました。
 日本では、雑誌に鉱物や宝石が取り上げられることは皆無といえるほどですが、科学朝日の1990年12月号に新潟の翡翠の記事が出ていました。1993年10月号のプルーム・テクトニクス特集は、宝石と鉱物全般の成因等の理解に欠かせない理論です。
 2001年5月号の日経サイエンスにはエメラルドの年代測定の詳細な特集が掲載されました。
 26 新聞の鉱物と宝石関連記事
 新聞で鉱物や宝石がニュースとなることなどまずありませんが、しかし資源や鉱業資本関連の記事は日本経済新聞と日経産業新聞には頻繁に取り上げられます。
 とりわけ世界の巨大鉱業資本間では日常茶飯事で買収や売却が行われていて、その動向が報道されます。
 海外の Herald Tribune、Wall Street Journal、Finacial Times, Figaro, Les Echo (フランスの経済専門紙)等にも鉱業資本の買収や合併、売却等の記事、また De Bias 社や Anglo American 社の動向、決算報告等が掲載されます。
 海外での出張で飛行場での乗り継ぎや長いフライトの合間に読んだ新聞等の興味ある記事をスクラップして保存してありますが、こうした新聞記事は10年単位の時系列で整理して追っていると、その動向がはっきりと見えてきて大変興味深いものです。
 最近では金価格の久方ぶりの高騰、さらにITバブルの影響でインジウムやタンタル、単結晶シリコン、ガリウム、ユウロピウム、イットリウム、ネオジウム、マグネシウムなどの価格の乱高下等が新聞の経済欄をにぎわしています。
  さらに白金族は自動車の排気ガス用触媒やIT産業用の用途に使われ、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムも産出国が限られているため政治的、経済的な思惑から値段の乱高下が起きています。
 こうした金属資源が何故特定の地域に偏在するかと言うことは、鉱物の成因から見ると大変興味深い事実です。

27 テレビの宝石関連番組

 実はテレビのプログラムには意外と宝石に関する番組があります。 

 近年放送された番組は ; 地球に好奇心:ダイアモンド, オーストラリア・オパール、ルビー、
 クローズアップ現代 : 紛争ダイアモンド、 地球に乾杯 : タンザナイトの空、 アジア発見 : パイリンの宝石、 ワールド・レポート : 南アフリカ : ルステンブルグ・プラチナ鉱山  : ザイールのタンタル鉱山、アフガニスタンのエメラルド鉱山、マダガスカルのサファイア・ラッシュ等々貴重な情報と映像とを楽しめます。 
 これらの宝石産地はいずれも一般人は絶対に行けない、地理的にも政治的にもまた治安の面からも最も危険な地域ばかりですから、テレビカメラを通して、じっくりと見られるとは願ってもないことです。
  以上はいずれもNHKの番組ですが、NHKはこの他にも ”地球大紀行”や“宇宙・未知への大紀行”等特別なシリーズの中でも鉱物の起源や成因に触れる見ごたえある番組を多数放送しています。
 
2004年にはNHKのハイビジョン番組で各2時間,4回にわたる宝石特集がありました。

 

その他の参考資料
石の思いで  A・フェルスマン 堀秀道 訳 1955年   理論社
新宝石事典  久米武夫 1966年  風間書房
宝石 -その美と科学ー  近山晶  1982年  全国宝石学協会 
宝石の科学  P.J.フィッシャー 1970年  共立出版
新しい鉱物学 結晶学から地球学へ  砂川一郎 1981年  講談社ブルーバックス
ダイヤモンドの話  砂川一郎 1964年  岩波新書
宝石は語る ー地下からの手紙ー  砂川一郎 1983年  岩波新書
人工結晶  犬塚秀夫 1962年  岩波新書
宝石を作る  -人口宝石手帖ー  広瀬三夫 1980年  全国出版
人工宝石   -結晶の神秘ー  崎川範行 1970年  三省堂
石のはなし  白水晴雄 1992年  技術堂出版
宝石のはなし  白水晴雄・青木義和 1989年  技術堂出版
合成宝石  バリツキー/リシツィナ 1986年  新装飾
鉱物採集フィールドガイド  草下英明 1982年  草思社
金色の石に魅せられて −新素材探求の旅ー  佐藤勝昭 1990年  裳華房
ビッグ・コレクター  瀬木慎一 1979年  新潮選書
ジュエリーの話  山口遼 1987年  新潮選書
宝飾品市場 その知られざる世界  山口遼 1991年  日本経済新聞社
ガラスの話  由水常雄 1983年  新潮選書
黄金郷に憑かれた人々  増田義郎 1988年  NHKブックス
金属とはなにか  サビツキ-/クリャチコ 1975年  講談社ブルーバックス
ハイテク・ダイヤモンド
  半導体からフラーレンまで 
 志村史夫 1995年  講談社ブルーバックス
レーザーの世界  ジェフ・ヘクト/デック・テレシー 1983年  講談社ブルーバックス
元素111の新知識  桜井弘 1997年  講談社ブルーバックス
超精密計測がひらく世界 
 −高精度計測が生み出す新しい物理ー
 計量研究所 1998年  講談社ブルーバックス
絵でわかる量子力学  小暮陽三 1990年  日本実業出版社
日本の鉱物  松原聰 2003年  学習研究社
 フィールドベスト図鑑
アフリカ大陸から地球が分かる  諏訪兼位 2003年  岩波ジュニア新書
新しい物性物理  伊達宗行 2005年  講談社ブルーバックス
鉄理論=地球と生命の奇跡  矢田浩 2005年  講談社現代新書
青いガーネットの秘密  奥山康子 2007年  誠文堂新光社
水晶・瑪瑙・オパール ビジュアルガイド   砂川一郎 2009年   誠文堂新光社 

  

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