ロサ・グラウカ(Rosa glauca : Rosa
rubrifolia)
高さ2m、灰色がかった紫の葉のロサ・グラウカ | 中心部が白く抜ける直径3㎝程のピンクの花 |
10年ほど前から、薔薇園の一角に灰色を帯びた紫という不思議な色合いの葉と小さな棘のある、薔薇と思しき
灌木が生えてきました。
もちろん植えた覚えはないし、野薔薇のようだが、一体何だろうと眺めていました。
しかし、一向に花が咲く様子はなく、とはいえ、正体不明のまま切ってしまうのももったいなく、5年ほど前に、他の薔薇と同様に、周囲の雑草を抜き、肥料をたっぷりと与えたところ、小さいながらピンクの花が一面に咲きました。
北海道では一般の薔薇が咲くのは7月初旬ですが、この薔薇は6月中旬から咲き始め、7月初めには花が終わってしまいます。
どうやら、花が咲かないと思っていたのは、毎年、薔薇が咲く7月初旬に北海道に来ることにしていたため、この薔薇の花季を見逃していたようです。
そんなわけで、これが薔薇であると分かったものの、その正体は昨年まで不明でした。
ひょんなことから、近所のホームセンターで売られていた灰色を帯びた紫の薔薇の苗に付いていたラベルからようやくにしてこの薔薇の名がロサ・グラウカ,(別名 Rosa rubrifolia : 赤い葉)であると判明しました。
グラウカとは、ギリシア語の "glaukos" からラテン語では "glaucus" となり、 フランス語の "glauque"になった言葉で、フランス語では " 海緑色、青緑色" を示します。
下の写真のように、ロサ・グラウカの初夏の若芽は青緑色で、次第に灰色を帯びた紫に変わります。
名前が分かり、調べてみると、ロサ・グラウカはピレネーからアルプス山脈、アルバニアに至る南部ヨーロッパに自生する野薔薇とのこと。 1820年に発見された 野薔薇なのだそうです。
ヨーロッパでは春に花を咲かせ、秋に多数の実を付けるとのことですが、ここ北海道、札幌郊外では他の薔薇より2週間ほど早く6月中旬から3週間余り無数の花を咲かせ、花の後には直ちに無数の実が付きます。
ペルシャやアラビアからヨーロッパでは紀元前から愛好され、品種改良が行われていたヨーロッパで一見地味とは言え、美しい葉と、無数のピンクの花を咲かせるこの野薔薇が19世紀初めまで見過ごされていたとは信じられないことではあります。
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さて、このロサ・グラウカは無数の花が終わると、その後に大きな実がたわわに付く種類のようです。
知る人ぞ知る、花と、灰色を帯びた紫と実とを楽しめる薔薇として、今日では園芸用に人気が高いとのこと。
きっと小鳥が運んで来たのでしょう、何時の間にかわが庭の薔薇園の一角に定着して満開の花を楽しませて
くれる上に、10mほど離れた2か所に2本の苗が定着して、そのうち一層華やかに庭を彩ってくれそうです。
ルドゥーテの薔薇図譜
ベルギーに生まれたピエール・ジョゼフ・ルドゥーテ
(Pierre-Joseph Redouté :1759 - 1840)は10代後半からパリの工房にて兄と共に装飾画家として働いていたが、 当時の植物学者に才能を見出され、挿絵画家として博物画の世界に入った。 ルドゥーテの植物画はその正確さと美しさから次第に園芸家から評価され、やがて 王妃の蒐集室付素描画家、さらに自然史博物館付き素描画家として名をあげ 、数々の植物画集を出版した。 とりわけナポレオンの妃、ジョゼフィーヌがパリ郊外のマルメゾンの城に、世界中 の薔薇を集めて薔薇園を作ったのを機に、薔薇の絵を描くことを申し出て許可を得た。 1817年から1824年にかけて出版された3巻の ”薔薇図譜”に収められた169種の薔薇 の絵は単にルドゥーテの最高傑作であるだけでなく、植物学の面からも貴重な資料として 高く評価されている。 実はこの図譜の中に、恐らく発見されて間もなかったであろう、ロサ・グラウカの絵が 含まれている。 この絵では、Rosa rublifolia : 赤みを帯びた葉の薔薇 として描かれている。 実の形が少し違うが、花の色や葉は正にロサ・グラウカ、あるいは極めて近種の野生の 薔薇であることは間違いありません。 |
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Rosa rubrifolia | Rosier à feuille rougeâtre |