新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


2019 August : 柘榴石(Garnets)


 
ロードライトのルースと指輪、ツァヴォライトとパイロープ 

 ロードライト(Rhodolites)
       ロードライトは主にパイロープとアルマンダインとの二種のガーネットの成分が混じり合った物です。
 しかし、宝石の世界で珍重されるのはパイロープ成分が80%程度の比率で含まれる紫色に発色するものがロードライトと呼ばれます。
 ロ-ドライトは19世紀末にアメリカのノースカロライナの粉砕された片岩中に破片で発見され、紙やすりの原料として採掘されていました。稀に採れる大きな結晶からカットされたのが、採石場の周囲に咲き乱れるシャクナゲ(ロードデンドロン)に因んでロードライト命名されました。その他にはスリランカの漂砂鉱床から稀に採れるだけの稀少なガーネットとして愛好家の垂涎の的の宝石でした。
 ところが1960年代半ばにアフリカのケニアやタンザニアにて豊穣な鉱床が発見され、現在では年間100トンも採れるため、価格が暴落しました。
 安かろうと、何処にでもあろうと、しかし美しい宝石には違いありません。カラット当た数百円などという値段を見ると思わず買ってしまったのが4.97カラットのルースです。
 恐らくバブル期以前の御木本製の丁重な仕上げの指輪には、しかし、流石ミキモトだけあって、全く内包物を含まない最上級のルースが使われています。ありふれたロードライトですが、8カラットを超える大きさでこの品質となると、やはり貴重なものです。
 このような高品質のルースは宝飾品に使われるのが相応しい。
 8.04ct 13.8x9.5mm  4.97ct 9.10x8.16x7.47mm  


パイロープ(Pyrope)
       ガーネットは色合い等、外観だけではその種類を判別するのが困難な宝石です。したがって美しいルースをネットで見かけると、一体何だろうかと、確認するために思わず手が出てしまいます。何しろカラット当たり数百円程度なのですから、手軽に入手できます。
 比重と屈折率を計ればほぼ同定できるのですが、アルキメデス法での比重測定は結構手間がかかるので、手始めにレーザーによる屈折率換算計にて調べます。 
 このルースの屈折率は1.753 ですから、パイロープと断定出来る値です。
 産地はアフリカとあり、それ以上詳しい情報はありません。
最近は、トルマリン、サファイア、ルビーと共に各種のガーネットも殆どアフリカ産が市場を席巻していて、今回の4個のルースも全てアフリカ産と考えられます。
 4.14ct 10.0x8.6x6.0mm  

ツァヴォライト(Tsavolite)
     最初にツァヴライトが発見されたのはケニアのツァヴォ公園です。その後タンザニアのメレラニ丘陵にツァヴォライトとタンザナイトの大規模な鉱床が発見され、今では合法、非合法を含めて5万人もの鉱夫が固い岩盤に大半は人力で数百メートルもの深さの立坑を掘り下げ、一獲千金を夢見て採掘を行っています。
 メレラニ丘陵は世界で最も危険で悲惨な宝石採掘現場ですが、命がけでも大きな結晶を掘り当てたい鉱夫たちが続々と集まっています。詳細は ”タンザナイト”を参照ください。
 こうして採集されたツァヴォライトは大半が1カラット程の大きさで、宝飾品級のルースはカラット当たり数百~1000ドルとガーネットの中ではデマントイドに次ぐ極めて高価なものです。
 写真のルースは包有物が多く,標本級ではありますが、しかし美しい色合いを見せます。

 
 1.18ct 8x6x3mm  
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