新着宝石展示室
(New Gemstone
Gallery)
May 2016
: 蛍石 (Fluorites)
蛍石(Fluorites) 1.38 - 6.85ct |
ナイジェリアの蛍石(Nigerian Fluorites)
6.51ct 15.0x10.1mm 4.75ct Ø10.2mm Joss Plateau, Nigeria
ナイジェリアの蛍石は主に中央部のジョス高原産の紫色を帯びたものをよく見かけます。
というよりこの産地の他の色合いを見たことがありません。
この二つは異なる時期に異なる経路で入手したものですが、似たような色合いで、
しかも上部が盛り上がったチェッカー・ボード・カット仕上げがされている点でひょっとすると
同じカッターの手になるものと思われます。
柔らかく劈開性の強い蛍石の、この完璧なカットは極めて秀逸な水準です。
インド、スリランカ と ブラジル?の蛍石 (India, Srilanka and Brazilian ? Fluorites)
6.85ct 15.4x10.3mm 4.08ct 10.0x7.3mm 1.38ct 8.1x6.0mm India Srilanka Brazil ???
インドでは時折ラージャスタン州から素晴らしくきれいな色合いの蛍石が出てきます。
この 6.85ct の蛍石の正確な産地は不明です。
ルースを二分する強い色むらがあり、テーブル面からは暗青色の殆ど不透明な、とても
魅力的とは言えないルースですが、稀に見るインド産として、コレクションに加わった次第です。
4.08カラットの何の変哲もない蛍石は、しかし初めて見るスリランカ産です。
世界屈指の宝石産地ですから蛍石を産しない筈はありません。
しかしスリランカの宝石の殆どは漂砂鉱床から産します。
すなわち、かつて結晶した宝石が気の遠くなるような10億年もの年月を経て周囲の岩盤が風化し、川の中に流れ出して地中に堆積したものが採掘されるのです。
蛍石のような硬度が低く,劈開性の高い鉱物はその過程で粉々に砕け散ってしまったに違いありません。スリランカでエメラルドが採れないのも同様の理由です。
おそらく、この4.08カラットの蛍石は漂砂鉱床ではなく、初生鉱床で結晶のまま発見されたと考えられます。
これまで写真でさえもスリランカ産を見たことがなかったほどの、稀少な標本です。
1.38 カラットのルースはこれで3個目の朱色の蛍石で、ブラジル産とあります。
この数年、この色合いの透明度の高い蛍石のルースがブラジル、あるいはエチオピア産として時折市場に姿を現しますが、これらの地域で宝石質の朱色の蛍石結晶を産したという報告は皆無です。
この色合いの蛍石結晶は主にスイスとフランス・アルプスの熱水性の鉱脈に産し、気の遠くなるような高価な値段で取引されています。
それらの結晶からカットしたルースとなれば恐ろしい値段になりそうですが、実際には
10カラット近いルースが、高くてもカラット当たり数千円程度で売られていますから、到底スイスやフランス特産の高価な結晶からではありません。
あれこれ検討した結果、この色合いは、天然にはありふれた青や紫の蛍石に放射線照射をした、人為的な発色のものと判断しています。
朱色の蛍石の発色については別項の ”ピンクと朱色の蛍石” を参照ください。