新着宝石展示室
(New Gemstone Gallery)


November 2017 : トパーズ(Topazes)


 
180.15ct 43.6x31.6 188ct 45.1x26.8mm   205ct 36.5x31.2mm
 Brazil  Volodarsk-Volynski, Ukraina   Xilingol, Nei-Mongolia 

 新着のトパーズはウクライナの何とも不思議な色合いのトパーズのみですが、既出のトパーズと共に200カラット前後のトパーズが並ぶと何とも壮観です。
 他の宝石で200カラット級の大きさは、水晶と蛍石と緑柱石くらいしかありませんが、時に巨大な宝石質の結晶が採れるトパーズならでは、こうした事が可能になります。

ウクライナのトパーズ(Ukraina Topaz)
     
188ct 45.1x26.8x18.6mm、cut by Michael Gray
 Volodarsk-Volhnia, Ukraina

 ウクライナのペグマタイトの詳細は ”ロシアのトパーズ”参照ください。
18世紀前半にトパーズや水晶が発見されて以来、ウクライナの首都キエフの真西200㎞にあるヴォロダルスク・ヴォリィーニヤのペグマタイト鉱床は最深で600mもの深さまで掘られて、水晶、緑柱石、トパーズ等の巨大な結晶が採掘されてきました。
 1990年代には朱色と水色の二色のトパーズや、融蝕作用を受けたものの、透明度の高い30㎝を超える宝石質のベリルの結晶が発見される等、世界でも稀有な宝石や結晶標本の産地です。
 今回入手した素晴らしく透明度の高いトパーズがどのような産状で得られたものかは不明ですが、Coast to Coast の Michael Gray  の手になるカットは何時ものことながら全く見事な水準。
 この色合いが、どんな仕組みで起こるのか調べたのですが、不明です。
何故か、トパーズの様々な発色については、未だに解明されない謎が残っています。

内モンゴル、Xilingol のトパーズ
(Topaz from Xilingol, Nei Mongolia)
     
205ct 36.5x31.2㎜ 

 この大きなトパーズを20年近く昔、ミュンヘン・ショーで入手したとき、内モンゴルの Xilingol(錫林郭勒盟)という地名は、一体何処なのか、どんな産状なのか、皆目分かりませんでした。
 何かの資料で、ここではかつて数メートルもの巨大な緑柱石の結晶を産したことがあった、というほんの数行の記載を読んだ記憶があります。
 現在は、グーグル・アースで検索すると、北京の真北、およそ500㎞の地に錫林郭勒盟と、中国語の地名があり、地図を写真に切り替えると、町の周囲に巨大な露天掘り鉱山が数多くあるのが見られます。 ただしこれらは石炭や、金属鉱山と考えられますが、中には真っ白な露頭もあり、そのいずれかはペグマタイト鉱脈かも知れません。
 宝石質か否かはともかく、巨大な緑柱石が採れるのであれば同様にトパーズを産しても不思議はありません。
 入手時は淡い朱色を帯びていたのが、次第に退色し、無色になり、それから微かに水色を帯びるという不思議な色の変化が進行中です。


スーパー・ブルー・トパーズ
(Super Blue Irradiated Topaz)
     
180.15ct 43.6x31.5x20.6mm 

 こんな鮮やかな色のトパーズは、天然には存在せず、放射線照射と加熱処理により、発色させたものです。
 中でも最も濃く鮮明な発色で人気のあるスーパー・ブルーと呼ばれる発色です。
この処理は強い放射線と高温の加熱処理とで、石自体も高温になりますから、内部に気泡や水泡、亀裂、他の鉱物の包有物等を含む結晶は処理の途中で割れてしまいます。
 したがって、ほぼ完全無欠の結晶を処理する必要がありますが、如何に大きな結晶が採れるトパーズでも200カラット近い大きさのルースが採れるような完全無欠の原石はそう簡単には得られるものではありません。
 天然の青いトパーズの色は不安定で、時間とともに褪色してしまいますが、人為的に処理したトパーズの青は安定しています。
 この青い色の発色の理由は未だに解明されていません。


ブラジル・オウロ・プレトのインペリアル・トパーズ
(Imperial Topaz from Ouro Preto, Minas Gerais, Brazil)

 
 結晶 615ct 332.74ct 89.53x20.56x19.15mm

 冒頭の3つのトパーズは、この30年間に自ら入手したトパーズです。
いずれも異例の大きなルースですが、カラット当たり1ドルから15ドル程度と、一介のコレクターでも躊躇わずに買える水準でした。
 が、最後のブラジル・オウロ・プレト産のインペリアル・トパーズは、ただただ眺めて感嘆するのみの極め付きの逸品です。
 最近、アメリカ宝石学協会のネット上の情報欄に掲載されました。
 左の結晶は大きさ、色合い、内部の傷のなさ、といずれをとっても、間違いなく史上稀に見る超一級の標本です。それをほぼそっくり、54%の驚異的に高い歩留まりでカットしたのが右の作品です。
 所有者は、これは販売したいと言っているそうですが、一体どんな値段が付くのか ?
例え、100万ドルと
いった水準になっても、驚ろきません。
 これは空前絶後のトパーズなのです。
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