豊穣の森


一人静(ヒトリシズカ : Chloranthus japonicus)

近種のフタリシズカ
(chloranthus serratus)
5月初旬の北海道の森に咲くヒトリシズカ コショウ
(piper nigrum)


センリョウ(千両 : Sarcandra glabra) チャラン(金票蘭 : Chloranthus spicatus)
写真提供 : ボタニックガーデン
植物界 被子植物門 双子植物綱 コショウ目 センリョウ科 チャラン属 ヒトリシズカ
Plantae Magnoliophyta Magnoliopsida Piperales Chloranthaceae Chloranthus japonicus
 長々と学名を連ねるのは別に衒学的な知識を披露するつもりではありません。
 膨大な植物の分類は素人には不可能な作業ですが、庭や野山で見かけた植物を調べようと植物図鑑を紐解いたところで、葉や花の形、構造等々多様極まりない植物の姿に一層困惑が深まると言うのが現実です。
 結局分厚い図鑑を片っ端から見ては見当をつけると言う手間のかかる作業の繰り返しとなってしまうのでした。
それでは余りにも能率が悪く、どんな風に分類されているのか、まずは身近な植物から始めようと思った次第です。
 センリョウとかチャランといわれてもピンと来ませんが、コショウ目とあればそうかと思います。
実際、胡椒がどんな植物なのか調べてみると写真のようにヒトリシズカに似ていて、なるほど同じ系統に属する植物であると納得が行きます。
 ヒトリシズカの和名は ”一人静”、別名 ”吉野静” とも呼ばれます。
静御前が舞う姿を髣髴させる典雅な名前の高さ 10〜30cm の野草です。
 学名はギリシア語の "chloros : 緑色の と anthos : 花" に因みます。
アンソロジー (anthology : 詞華集、作品集) の語源はギリシア語の花に由来する言葉なのですね。 
 良く似た花にフタリシズカがあります。30−50cmの大きさに育つ野草です。
ヒトリシズカに似た花穂が2本〜5本付くことから命名されましたがヒトリシズカのような華やいだ雰囲気はありません。
 同属のセンリョウとチャランは草本ではなく常緑の低木ですが確かに葉や花の咲く様子が良く似ています。
初めは3本の苗から5年間で数十本の群落に増えたヒトリシズカ
 初めてヒトリシズカを見かけたのは熊笹の茂みを駆除して間もない頃でした。
森から谷へ落ちる急斜面の縁に高さ20p程の群れがひっそりとありました。
 初夏になると周囲の野生のウドや鬼アザミなどの巨大な葉の陰に隠れてしまいます。
2年目以降は周囲の雑草を駆り払って日当りを良くしたところ次第に群落が大きくなり
4年目には5mほど離れた場所に新しい群落が出来ました。
 さらに5年も経てば森の一角にヒトリシズカの大群落が出現するものと楽しみです。


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