難波津 (なにわず、 蝦夷鬼縛り、 蝦夷夏坊主)


雪が解けたばかりの4月の森に早くも花開く難波津の花


雪解け後の蕾 確かに沈丁花属の花 夏の終わりの青い実 熟した赤い実

双子葉植物綱   バラ亜目 フトモモ目 ジンチョウゲ科 ジンチョウゲ属      オニシバリ
Magnoliopsida    Rosidae    Myrtales   Tymelaeaceae     Daphne      Daphne pseudomerezereum
 
 この花は、7〜8年前から森に姿を見せていて、毎年少しずつ群落を増やし、今では3m四方に20株余りに増えています。
 雪解けを待って、房のような蕾が膨らみ始め、鮮やかな黄色の花が開いて、微かな芳香を放ちます。
 背丈が15cmと低く、花期が終わると全く目立たなくなってしまうので、長い間名前すら分からずにいました。

 いつものように、1100種余りを収める ”北海道の野の花” 図鑑をしらみつぶしに開いて、ようやく殆んど最後に近いページにこの花を探し当てました。

 表題のように名前が沢山あるのは、本州の東北地方南部から九州、四国に自生する難波津(鬼縛り)の蝦夷変種で、本当の学名は (Daphne kamtschatica jezoensis ) が正しいようです。
 変種ですが、母種とは殆んど違いがありません。 
温暖な本州では高さが1m余りに育つようですが、2m近い雪が積もるわが森では、半年もの雪の間、雪に押しつぶされているので大きくなれず、せいぜい15cmくらいにしかなりません。

 正式な名前は、 鬼を縛れるほどの丈夫な樹皮に因んで オニシバリ と呼ばれるそうですが、長野地方の方言の ナニワズ の名の方が一般に通用しているとのこと。
  難波津、とは古今集の手習いに用いられたり、競技かるたの開始時に序歌として詠まれる ;

   難波津に咲くや此の花冬ごもり今を春べと咲くや此の花

 の、序歌として余りにも有名な歌の地名を喚起させる名前だからとのこと。
 ただし、此の歌に詠まれる花は、ナニワズ ではなく、梅の花です。

 もう一つの名前、夏坊主とは、夏に落葉することから。 
秋には葉の無い枝に実がなり、赤く熟します。 おいしそうな実は、しかし有毒です。

 ジンチョウゲ属といわれれば、確かに花の形や咲き方、そして微かな微香も沈丁花にそっくりです。
 因みに、学名の Daphne とはギリシア語で月桂樹のこと。 
沈丁花の学名は Daphne Odorata、すなわち芳香を放つ月桂樹 と言う意味です。

 

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