コエンドロ
(Coriandrum sativum)


     
庭や市街地で見かけるコエンドロの花


       
茎から新しい蕾が次々と出てきて
一か月近い長期間花を楽しめる 
乾燥した実 コエンドロの根  植物誌に描かれたコエンドロ 
       
       
  真性双子葉類    キク類   セリ目  セリ科   コエンドロ属    コエンドロ種 
 Eudicots  Aste  Apiales  Apiaceae   Coriandrum   C.sativum 

 地中海東部沿岸原産の一年草で古代エジプト、ギリシア等で古くから香草として料理に使われていた。
 日本には10世紀頃伝来したとのことで、朝廷での生魚を使う料理に必ず使うようにとの記載があるとのこと。 コエンドロの呼称はポルトガル語に由来するとのこと。 そんな昔にポルトガル語由来の言葉がどうして日本にまで伝わったのか大いに興味があります。
 古代ギリシア語のコリアノン (Coriannon) に遡り、ラテン語の coriandrum からフランス語の coriandre, ポルトガル語 (Coentro) やスペイン語のシラントロ (cilantro) さらに英語のコリアンダー (Coliander) へと伝わった。 日本では現在は英名のコリアンダーが一般的かと思います。
 古代ギリシア語の呼び名については様々な説があるが、独特の匂いがカメムシに似ているため、同様の匂いを持つトコジラミ(南京虫)のギリシア語でのコリス (koris) とアニスの実 (anon) に因むという説がもっともらしい。種名の sativum は栽培するの意味。
 さらに中国ではシャンツァイ(香菜)、タイではパクチー、ヴェトナムでザイムイ、インドでダンヤー、と呼ばれている、
こうした呼び名は、エスニック料理が一般的になった近年では何処かで聞いたり味わった方も多いと思う。
  かくして、たった一種の植物の呼び名を古今の10ヶ国語余りで知る機会があるというのも嬉しいことです。

 近年、庭や街角で初夏によく見かけるこの花が、実は東南アジアの料理に使われている香菜やパクチーであったとは、実は今回調べるまでは分からなかった。
 花の咲き方からセリ科の花の園芸種であったとは分かっていましたが、カレーの香料の主要な成分のコリアンダーであり、さらに香菜やパクチーと同じものとは ! 
あの独特の匂いの草がこんなに繊細で華麗な花を咲かせるというのも嬉しい驚きでありました。


  コエンドロの独特の匂いは葉、茎や未熟の実に含まれる数種のアルデヒド類に由来します。
ただし、成熟した実にはリナロールと呼ばれるスズラン、ラベンダー、ベルガモット等にも含まれる精油を多く含むため芳香性があり、様々な料理にスパイスとして使われます。

 この強烈な匂いを好む人と嫌いな人との間には、遺伝子の違いがあると判明しています; 
 味覚受容体遺伝子のクラスター内にあるOR6A2と呼ばれる遺伝子がアルデヒド類の化学物質に感受性の高い受容体と結びついていて、コエンドロの匂いの好きな人と嫌いな人との間に、この香りを爽やかと感じるか、嫌な匂いと感じるかの差ができるとのことです。
 匂い化学者の研究によると好き嫌いには民族間で大きな差があり、東アジアの21%、コーカソイドの17%、アフリカ系の14%がコエンドロの匂いに不快感を感じるのに対し、食材としてコエンドロに人気のある地域の民族集団では、南米が7%、ヒスパニックが4%、中東では3%しか不快感を感じないという結果が出ているとのことです。
    


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