エゾエンゴサク (蝦夷延胡索)
(Corydalis fumariifolia)


 
北海道では4月中旬の雪解け後2週間ほどで林の中に花が咲き始め、ひと月もたたないうちに根を残して姿を消してしまう 、典型的な春の妖精
 
 
     
 花が終わって10日ほど経って小さな鞘いんげんのような実が出来ていた  さらに一週間後、熟した実


angiosperus eudicots  Ranunculales  Papaveraceae  corydalis  Corydalis fumariifolia
被子植物  真性双子葉類   キンポウゲ目 ケシ科  キケマン属 蝦夷延胡索 種
 
 エンゴサクの北海道変種だが、日本全国にミチノクエンゴサク、ジロボウエンゴサク、ヤマエンゴサク、キンキエンゴサク、フウロケマン等の青、淡青、薄紫、黄色の良く似た花や葉の形の
同種の花があります。

 延胡索の名は、中国名を音読みしたもの。 中国語では yan fu suo と読まれます。
キケマン属の学名 corydalis はギリシア語の Korydalis (ひばり)に由来しますが、この花の距(きょ)をひばりの距(けづめ)に擬えたとのことです。
 根茎にアルカロイドを含み生薬として鎮痛剤等に古くから用いられていたために漢方薬の古名がそのまま花の名として残っています。

 ケシ科の花には多量のアルカロイド類が含まれ有毒種が多いのですが、エンゴサクは量が少ないため花や茎は古くから食用とされて来ました。
 ただし、よく似たキケマン(黄華鬘 : Corydalis heterocarpa var. japonica) 、ミヤマキケマン(深山黄華鬘 : Corydallis pallida var. tenuis)、ムラサキケマン(紫華鬘 : Corydalis incisa) 等は毒草です。
キケマン(黄華鬘) ミヤマキケマン(深山黄華鬘) ムラサキケマン(紫華鬘)

  初めて北海道で春を迎えて野山を散策すると、山の林床や道端に園芸種のような可憐な色と姿の蝦夷延古索の群生を見かけて感激したものです。
 北海道なら春先に何処にでも見かけるありふれた花ですが、雪解けを待って弱々しい芽と茎と葉とが10cm余りに育ち、華やかな風情の花を咲かせたと思うと、忽ちの内に地上から姿を消してしまう、スプリング・エフェメラル (春の妖精 : Spring ephemeral ) を象徴する花と言えるでしょう。 地上に姿を見せているのは一年のうち一月余りの儚さです。
 何処にでも見かける花ですからわが森にも現れないかと、長らく期待していたのですが、2010年にようやく一株が根付き、2015年には6株に、2018年には20株にまで増えていました。
 今年初めて気が付いたのですが、花の後にマメ科の植物のいんげんのような鞘に入った実がなっていました。
この実がばらまかれて増えてゆくのですね。 これからは、毎年根茎が育ち、10年もすれば、春の大群落が楽しめそうです。

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