鵠沼蘭(クゲヌマラン)・ 蝦夷白山蘭(エゾノハクサンラン)


森に3株、庭のあちこちに3株と、合計6株が咲いていた
一見鈴蘭の仲間を思わせる花ですが、よく観察すると、1cm余りの大きさの蘭の花


単子葉植物綱 ユリ亜綱 ラン目 ラン科 キンラン属 クゲヌマラン種
Liliopsida Lliidae  Orchidales  Orchidaceae  Cephalanthera cephalanthera erecta (Thunbergii)
Blume var. shizuoi Ohwi


 5月末のわが森に20cm余りの背丈の見慣れない3株の白い花が咲いているのに気がつきました。
鈴蘭に似た花ですが、鈴蘭は名前こそ蘭ですが、実はユリ科の花です。
 この花をよく観察すると、蘭の花です。 よくよく庭を探してみると、実は2〜3年前から庭のあちこちに合計6株ほど咲いていたことを思い出しました。 が初めて見る花で何なのか見当もつきません。
 いつものように 1132種を」擁する ”北海道の野の花” をしらみつぶしに探して、ようやく、この花が鵠沼蘭、らしいとわかりました。
 鵠沼蘭とは銀蘭の変種で、1935年に神奈川県の鵠沼で発見されたとのこと。
ユーラシアの、主として冷温帯域からアフリカ北部まで広く分布する野生の蘭です。
 よく似た仲間に、 笹葉銀蘭、 祐瞬蘭、 銀蘭、 があります。
それぞれ、下記の写真のように葉、花序(花のつき方)、距(花の萼や花冠の基部の突出した部分)が微妙に異なります。


鵠沼蘭(クゲヌマラン) 銀蘭(ギンラン) 笹葉銀蘭(ササバギンラン) 祐瞬蘭(ユウシュンラン)
Cephalanthera erecta var. shbizuoi Ohwi Cephalanthera erecta Cephalanthera longibracteata Cephalanthera erecta var. subaphylla Ohwi
いずれも銀蘭の近種ですが、花のつき方、葉の大きさ、位置、距と呼ばれる、花冠の基部の突起の有無や大きさが少しずつ異なる

  我が森の花は、当初、銀蘭かと思いましたが、よくよく観察すると、花の基部の突起が殆んど見られないことから、近種の鵠沼蘭と判断しました。
 しかしながら、静岡で発見された鵠沼蘭が何故、寒冷地の北海道の森に出現したのか ?
更に調べてみると、鵠沼蘭と呼ばれる種は、実は既に1900年に Finet による北海道で発見の報告があり、当時はエゾノハクサンランと呼ばれていたことが判明しました。
 そしてこの種は北海道では普通に見られるとのことです。
となると、先に発見された蝦夷白山蘭 (エゾノハクサンラン)の方が正当な名前と思われますが、一般には鵠沼蘭の名が通用しているのでいたし方ありません。
 実際、我が家の周囲を散歩の際に、注意深く観察すると、東に200mほど行った道沿いの日陰に庭に30株近い群落を見つけました。 更に我が家から西に100mほどの日陰の藪の中にも2株ありました。
 背丈が10〜20cmほど、花の大きさが1cm余りと小さく目立たない花なので、長い間見過ごしていたようです。
 ともあれ、清楚な佇まいの野生の蘭が我が森に根付いただけでも嬉しい出来事です。
でも、どうやって我が森に辿り着いたのだろうかと不思議です。
 残念ながら、2〜3年咲いて、その後姿を消してしまいました。 これが野生の花の宿命というものでしょう。
何時の日か再び森に根付くのを期待するのみです。
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