豊穣の森
ヘレボルス(Helleborus) : クリスマスローズ
被子植物 | 真正双子葉類 | キンポウゲ目 | キンポウゲ科 | ヘレボレス属 |
Angiosperms | Eudicots | Ranunclares | Ranunclaceae | Helleborus |
名前について
一般にクリスマスローズと呼ばれますが、それはクリスマスのころ白い花を咲かせるニゲル種のことで、今日一般に見かけるのは、早春に花を咲かせるオリエンタリス種が大半ですから、学名ヘレボレス属に因むヘレボルスと呼ぶのが正しいと思われます。
この名前はギリシア語の ”helein : 殺す” と ”bore : 食べ物” に由来しますが、これは紀元前595年にギリシアのデルフォイ軍が敵対するキラ軍の水にヘレボルスの根を投げ込んで戦えなくして勝った故事に因むとのことです。
ヘレボルスは他の多くのキンポウゲ科の植物同様、サポニン、ヘレブリン等のアルカロイドを含み、嘔吐、痙攣、腹痛、下痢等の作用を惹き起こします。
北海道では4月初旬に雪が溶ける前から、凍った雪の下で光を感じた芽が伸びてきて、雪解けと同時にたちまち葉や茎が伸びて来て、2~3週間も経たずして花を咲かせる植物があります。
クリスマスローズはその代表ともいえる植物で、4月中旬頃には大輪の花を咲かせます。
しかも、その花の命が長く、一か月以上萎れることなく花が咲き続けるのです。
なぜこんなに長持ちするのか調べたところ、実はヘレボルスの花に見えるのは、実は愕片が変化したものとのこと、実際の花は愕片の根元の線状の模様となっているとのこと。
もっとも、およそ全ての花は愕片が、虫を呼び寄せるために目立つように変化したものです。
恐らく、寒冷地の虫の少ない早春に咲く地味な色合いのヘレボルスは、長い期間咲き続けることで受粉の可能性を高める方向に進化したのでありましょう。
大輪ではありますが、造花のような地味な色合いの花で、これまでは注目していなかったのですが、今年は庭のあちこちに10株以上が大輪の花を咲かせていて、どんな花なのかじっくりと調べてみた次第です。
下記に主なヘレボルスの種類を取り上げましたが、どうやらわが庭に咲いているのは、オリエンタリス種から交配された、様々な園芸種と思われます。
クリスマスローズ(Helleborus niger)
”ニゲル” とは根が黒ずんでいることから、ラテン語の
”黒い” に因んで命名された種名です。
イタリア、スロベニア、クロアチア、ドイツ、スイス、さらにトルコ、ジョージア、シリア等が原産で、クリスマスのころ白い花を咲かせることから、クリスマス・ローズと命名され、ヘレボルス種の一般的な呼び名となりました。
ヘレボレス・フェチドゥス(Helleborus foetidus)
イギリス、ドイツ、フランス、スイス原産種 フェティドゥス(foetidus) とはラテン語で悪臭を持つとの意味で 全草からひどい臭いを発することから命名された種名です。 背丈が80~90cmと高くなり、淡緑色の花を咲かせます。 |
ヘレボルス・オリエンタリス(Helleborus Ooirientalis)
ギリシア、トルコ、ジョージア、ウクライナ等、ヨーロッパから見ると東方原産 に因んで命名された種名です。 今日見かける、いわゆるクリスマスローズの多くがこの種との交配から作り 出された園芸種です。 別名レンテン・ローズ(Lenten Rose) とも呼ばれます。 レンテンとは古ゲルマン起源の英語で四旬節 (灰の水曜日から復活祭までの四旬節) を意味する ”Lent”のこと。 例えば2023年の四旬節は2月22日(水)~4月6日(木)ですが、ヨーロッパでは この時期に花を咲かせます。 一般に、クリスマスローズと呼ばれる花ですが、種類はこの系統が圧倒的に多く、 咲く時期も早春なので、この種は、属名のヘレボルスと呼ばれるのが正しい。 |
ヘレボルス・チベタヌス (Helleborus thibetanus)
唯一、アジア原産の高山性のヘレボルス | 四川省宝興県標高2100mの産地に咲くチベタヌス |
20種ほどのヘレボルス種がヨーロッパから小アジア原産ですが、唯一中国の四川省にて1869年にフランス人のプラント・ハンターによって発見されたが報告のみで、標本がヨーロッパにもたらされたのはその120年後と遅く、”幻の花” と呼ばれていたもの。
中国の四川省奥地一帯は当時はチベットと呼ばれていたことからチベタヌスと種名がつけられました。
現在は、栽培種が手軽に入手出来ます。
神戸の六甲高山植物園には日本最大級の野生種の群落があり、3月中旬頃が見ごろとのことです。