彼岸花・ヒガンバナ・曼珠沙華
(Lycoris radiata)


 
 仙台中心部を流れる七北田川河岸の50万本の彼岸花の群落
   
 大半が深紅色 稀に白い花がある  鐘馗水仙(Lycoris traubii) 


       
花芽   開花前の蕾 満開時の彼岸花  開花後、晩秋に葉が姿を見せ


 単子葉類   キジカクシ目   ヒガンバナ科   ヒガンバナ 属   ヒガンバナ種 
 Monocotrs  Asparagales Amaryllidaceae  Lycoris  L.radiata 

 中国大陸原産ですが、日本、韓国、さらに東南アジア、南アジアの一部にも広く自生しています。
日本には恐らく縄文時代には渡来していたと考えられ、日本全国に大群落を見かけます。
 日本に自生する彼岸花は染色体が3倍体のため、ほとんど種ができない種類なので、鱗茎が分裂して増殖します。
 大群落となるのは、含まれるアルカロイドの毒性が他の植物の繁殖を妨げて駆逐してしまうためです。
名前について

  地面の温度が下がる9月の彼岸の季節に花開くので彼岸花と呼ばれますが、曼殊沙華という呼び名も一般的です。 この呼び名はサンスクリット語の ”manjusaka” の音訳で、赤い花の意味でもあり、さらに法華経では釈迦が法華経を説かれた際に天上から赤い花が降ったという言い伝えがあり、天上の花とされているとのことです。
 学名の Lycoris はギリシア神話の海の精 Lycorias (リコーリアス) に因み、種名の radiata は放射状に花の咲くさまを意味します。 英語の呼び名は Spider Lily です。
 日本の全国至る所に大群落が見られ、数百を超える呼び名があります ;
幽霊花、地獄花、葬式花、墓花、火事花、蛇花、狐花等々、不吉な呼び名が多いのは、この花に含まれる主にリコリンを主とするアルカロイドの有毒性のせいかもしれません ; かつては飢饉時の非常食として澱粉質に富む鱗茎を水に晒して水溶性のアルカロイドを除いて食用にしたとのことですが、解毒が不十分な場合は吐き気や腹痛から神経性の麻痺から死に至ることもあるという毒性による被害が全国各地で記憶に残されたためでしょう。 

白い曼殊沙華

  赤い彼岸花の群落に交じって白い花を見かけることがあります。
これは、鐘馗水仙と呼ばれますが、水仙ではなくヒガンバナ科の黄色の花を咲かせる種類との交配種とのことです。
 赤い彼岸花と黄色の鐘馗水仙との交配種が白くなるのは不思議に思えますが、遺伝学の専門家によるとあり得ることとのことです ;
 交配された親主にはそれぞれ赤と黄色の発色を起こす遺伝子がありますが、交配時に発色を担う遺伝子のDNAのコピーが欠損するミスが起こるために、子の花が発色せずに親とは異なる白い色の花になるとのこと。
 花に限らず白いライオン、カラスや蛇、白い鱒等々、生物全体に稀に起こるのだそうです。


日本各地にみられる彼岸花の大群落
 
埼玉県日高市高麗本郷巾着田の500万本の群落  愛知県知多半田八勝川堤防  岐阜県養老町津屋の群落 

   かつては不吉な花として忌避されていたことが多い彼岸花ですが、しかし日本の各地で多いところでは数百万本にもなる大群落が見られ、現在では花の名所として人気が出ています。 
 彼岸花に含まれる毒性のアルカロイドにはアレロパシーと呼ばれる、他の植物の成長を阻害する作用があるため、彼岸花だけの群落が発達するためですが、葉が出る前に茎が伸び、大きな花だけが密集して咲くために赤い絨毯を敷き詰めた様な壮観な景色が出現するのです。 


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