豊穣の森

朴の木(ホオノキ: Magnolia obovata)

初夏の北海道の森に花咲く朴の木。

手前の淡青色の花は野生の勿忘草。ピンクは撫子。背の高い青い花はルピナス。中央の黄色い花は恐らくセイヨウカラシナ
 朴の木の学名、Magnolia obovata とはモクレン属の中で倒卵形の葉を持つ種類を意味します。

Plantae Magnoliophyta Magnoliopsida Magnoliales Magnoliaceae Magnolia Magnolia obovata
植物界 被子植物門 双子葉植物綱 モクレン目 モクレン科 モクレン属 ホオノキ種

 長い学名の全ての項を飾るマグノリアとは植物の分類に功績のあったフランス・モンペリエの植物学者、ピエール・マニョル (1638-1715 : Pierre Magnol) に因みます。
 分類学の始祖リンネによる命名ですが、マニョル先生の偉業が最大限に讃えられた学名と言えるでしょう。
 日本と東アジア北部に自生するモクレン科の落葉樹で 30m を越える大木となります。
栃の葉に似た形の 40cm 余りの大きな葉と、30cm 余りものややクリーム色の芳香を放つ大きな白い花が特徴です。

北海道にて5月半ばの新芽 6月初旬20cm余の固い蕾 10日ほどかけてゆっくりと花開く ほぼ満開に
満開後、花の命は1日のみ たちまち萎れて枯れてしまう 集合果 秋の終わりの実
 朴の木は大きな葉と芳香を放つ大きな花とが特徴です。こんなにも大きな花を咲かせる木が庭にあるのは嬉しい限りです。
 花が咲くまでに10日あまりもかかりますが、満開の花は1日の命です。
が、大きな木に次々と開く花を3週間余り楽しめます。
 朴の木を庭に植えることは、しかしながら、お勧めできません。
 秋には灰色のワラジムシの死骸の様な巨大な枯葉が庭を埋め尽くし、いささか不気味な光景となります。
 この花を近くで見たいばかりに、密生する熊笹を3年がかり駆除したのですが、開けて陽光が差し込むようになった森の中は思いもかけず、無数の野草が咲く植物園に変貌しました。
 

泰山木(Magnolia grandiflora)
写真提供 : 季節の花300
 同じモクレン科に、” 大きな花 ” と命名された学名を持つ、朴の木と良く似た花を咲かせる泰山木があります。
アメリカのフロリダ半島からメキシコ湾岸の亜熱帯に分布する常緑樹ですが、耐寒性が強く日本でも公園等で見かけます。
 共に大きな花を咲かせる大木で紛らわしいのですが、近づいて観察すると葉や蕾、花弁の形や色が異なります。
泰山木は常緑樹で冬でもつやつやとした緑の葉が楽しめますから、庭に植えるのであれば、こちらがお勧めです。
マグノリア・アシェイ(Magnolia macrophylla ashei: Ashe Magnolia)
     
 9月に20cmほどの芳香を放つ大きな花が咲いた。 葉も50cm余りと大きい。 9月に3個の花が見られた。 北海道札幌市北区百合が原公園の中国庭園前の庭にて
 モクレン科の木はいずれも大きな花が特徴ですが、朴の木、泰山木とともに マグノリア・アシェイと呼ばれるアメリカのフロリダ原産種も大きく美しい花を咲かせます。
 写真の木は札幌市北区の百合が原公園に1本だけある珍しい種類です。高さが4m程度であまり高くはなりません。暖かいフロリダ原産の、現地でも希少な木が寒い北海道に根付いています。
 朴の木同様、この種も花の命は一日二日しかないので、この10年余り。毎年花期の6月には何度も訪ねてはいるのですが、いつも早すぎたり、花が枯れた後だったりと、機会を逃していました。
 ところが今年、2016年の9月11日に訪れたところ、驚いたことに蕾が膨らんでいました。
フロリダでは5月に咲く花で、北海道でも5月中旬ごろに萎れた花を見ていましたが、まさか9月に咲くとは思いもよりませんでしたが、ともあれ、二日続けて通い、ようやく花を見ることができました。
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