豊穣の森


ズミ : Malus toringo sieboldii


濃紅の蕾から咲いたほのかにピンクのズミの花 蕾も花も純白のズミ
双子葉植物綱  バラ目   バラ科  ナシ亜科  リンゴ属   ズミ 
Magnoliopsida  Rosales  Rosaceae  Maloideae   Malus  toringo sieboldii

 ズミは北海道から九州の日本全土と朝鮮半島とに野生するバラ科リンゴ属の最大で10m程の高さに成長する潅木です。
 広範に分布するために各地で様々な呼び名があります : ズミの名は樹皮を染色用に用いたために ”染み” からズミとなった、或いは小さなさくらんぼのような実が酸っぱいので酸実、または酢実となったとも。
 またコリンゴ (小林檎 )、コナシ (小梨 )、ミツバカイドウ (三葉海棠) 、さらに青森や岩手ではサナシ (山梨 )等々、多彩です。
 属名の Malus はギリシア語でリンゴを意味する malon に因みます。
種名の toringo の意味は不明です。 が恐らく、幕末期に日本で多数の動植物等を採集し報告したシーボルトがコリンゴを聞き誤ってトリンゴとしたためかと思われます。
赤い蕾が開花するとうっすらと桃色を帯びた花になる が、蕾も花も純白が一般的
 このズミは我が森に自然に生えたものではなく、近所の原生森の針葉樹の日陰に自生していた 50cm 程の幼木2本を移植したもの。
 森と庭とに一本ずつ植えたのがいつの間にかそれぞれが紅白二本のペアに増えていました。
 若木が育って花が咲くようになったのは移植してから7年ほどですが、2m を越すまでに成長した8年目の昨年来、ようやく4本の木が満開の花を咲かせるようになりました。
 林檎や梨の花に良く似た直径 2cm 程の小ぶりな花ですが清楚でかつ華やいだ雰囲気に溢れています。


森の白いズミ 森の赤いズミ 庭の白いズミ 庭の赤いズミ


秋にはさくらんぼを小さくしたような実が鈴なりになるが、酸っぱくて食べられない。小鳥も敬遠するのか何時までも枝に残ったまま。
真冬になり積雪でどうにも食べ物がなくなると、時折ヒヨドリがやって来ては5,6個啄ばんでは飛び去って行きます。


北海道、札幌郊外の石狩川に近い原野に咲くズミ。 大きな木は高さ10m余りのまるで小さな丘のような大群落をつくる。 2009年5月26日
 大昔、日本列島の北海道から九州に至る広大な原野はズミの大群落に覆われ、誰もいない初夏の野は一面ズミの白い花で彩られていたことでありましょう。
 しかしながら、今や九州、四国、関東以西の地方では絶滅危惧種に挙げられるほどに激減しているようです。
 ここ札幌郊外でもほんの十年ほど昔は広大な未開発の原野に見渡す限りのズミの大群落が続いていました。
 けれども、開発によって群落は分断され縮小の一途を辿るばかり。写真のような光景が見られるのもそう長くは無いでしょう。
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