豊穣の森


アセビ・あしび(馬酔木)
(Pieris japonica)


   
4月初旬に房状の白い釣鐘上の花を咲かせる馬酔木 


     
馬酔木の実 


   
秋に黒く熟した実  実が終わった後に伸びる新芽 


 真正双子葉類 キク類   ツツジ目   ツツジ科   アセビ属   アセビ種 
Eudicots   Asterids  Ericales   Ericaceae  Pieris   P. japonica

 日本列島の本州 (宮城県以南の太平洋岸)から四国、九州の、主に山地に自生する常葉緑広葉、1.5~5m の小高木。
 早春に10㎝ 程の房になった円錐花序を垂らし、白い壺状の花を咲かせる。 
  馬酔木と書いてアセビ (あしび) と読む植物があり、その名のごとく、馬が花を食べると酔ったような症状を起こすため、とは子供のころから知っていましたが、さて、それがどんな植物で、どんな花のかは定かではありませんでした。
 仙台の我が家の庭に冒頭の写真のような灌木が数年前から3本生えて来たのは気が付いていましたが、しっかりと硬い葉の木であるとは分かったものの、葉のみから木の種類を探すのは容易ではなく、調べもせずにいました。
 例年になく暖かな今年の春、4月初めに早々と庭の手入れに出たところ、名前不明の木に白い房状の花が咲いてたので、さっそく調べて、これが名前だけは知っていた馬酔木であると漸くにして分かりました。
 ラテン語の学名 Pieris とはギリシア神話の詩の女神の名とのことですが、これには諸説があります。 
 種名の japonica は日本原産の意味ですが、同種の植物は世界に10種あり、英名は Japanese Andromeda と、ギリシア神話で、生贄として海の怪物に捧げられ、ペルセウスによって救われたエチオピアの王女の物語が無数の絵で描かれ、アンドロメダ星雲にその名を残しています。
 馬酔木に限らず、蓮花つつじ、ネジキ等の他のツツジ科の植物にも共通する、グラヤノトキシン、アセボプルプリン等の有毒のアルカロイドを全草に含み、有毒成分が迷走神経を麻痺させ、よだれ、嘔吐、下痢から、重症になると四肢麻痺、痙攣、呼吸困難を引き起こします。
 馬酔木の名は酔ったように足が萎えることから足廃(あしじひ)
»あしび»あせび へとなったのだそうです。
 日本原産種で身近にあり、春に目立つ花を咲かせる灌木だったためでしょう、万葉の時代から
”あしび” として詩に読まれて来た植物で、現在でも この呼び名が広く普及しています。
 庭の3か所にいつの間にか生えていたということは、小鳥が食べた実が糞として庭に撒き散らされたものとしか考えられませんが、小鳥は無事だったのかと気になります。
 もっとも、有毒な ”いちい” も、果肉は甘くておいしく無毒であり、中の種さえ食べなければ害はありませんから、馬酔木も同じなのかもしれません。


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