豊穣の森
3 翁草(オキナグサ :
Pulsatilla cernua)
蕾が開き始める頃の淡い青紫が満開の花では鮮やかな朱色を帯びる。 10日ほど次々に花が咲いた後に白い綿毛に変わる |
植物界 被子植物門 双子葉植物綱 キンポウゲ目 キンポウゲ科 オキナグサ属 オキナグサ Plantae Magnoliophyta Magnoliopsida Ranunculares Ranunculacerae Pulsatilla Pulsatilla cernua
オキナグサの名は花が終わった後の白い冠毛が白髪の老人を偲ばせることに由来するとの事です。
学名はラテン語の "pulso : 打つ,鳴る" を語源とする釣鐘型の花が ”cerunua : 前かがみの” 即ちうつむいて咲く様から命名されました。
ついでにキンポウゲ目の学名 "ranunculares" とは葉の形が蛙の足に似ていることからラテン語の "rana : 蛙 " に因みます。
園芸植物のラナンキュラスとは正にキンポウゲの学名だったのですね。
キンポウゲ科にはオキナグサの他にもアネモネ、オダマキ、デルフィニウム、トリカブト等々、野生の花とは思えないくらい華麗な姿と色合いを持つ花々が多く、園芸種として改良されています。
市販されているオキナグサの殆どはヨーロッパ原産のセイヨウオキナグサ (Pulsatilla vulgaris) の園芸種です。
青い花の他に変種の白、黄色、青紫、赤紫等多彩な色合いがあります。
キンポウゲ科の他の多くの植物同様、オキナグサも有毒植物です。
が、植物毒は使い方によっては有用な薬物となりますから、オキナグサも鎮痛、沈静作用を持つ薬草でもあります。
さてオキナグサの仲間は世界に30種類程ありますが、日本にはクリーム色の花を咲かせる高山性のツクモグサ (Pulsatilla nipponica) とオキナグサの2種が自生しています。
オキナグサはかつては本州以南の至る所に繁殖していたそうですが、開発と乱掘とで激減し、今では絶滅危惧種となってしまっています。
そのため、愛好家による復活の活動が日本各地で盛んに繰り広げられています。
図鑑等では北海道には自生しない筈のオキナグサですが、渡り鳥の羽にでも綿毛が着いて来たのでしょうか、切り開いて陽光が入るようになった森に植えた西洋プラムの木の根元に花咲いていました。
5年も経った今では周囲に広がり、7株もの大きな群落となっています。
調べたところ、さらに北の旭川でも自生が報告されています。最寒期には氷点下30度にもなる土地でも自生するほど耐寒性が強いのでしょう。
もっとも北海道の北西部は11月末から3月末まで深い雪に覆われているため、地中の温度は意外と暖かく摂氏零度付近以下にはなりません。
寒風に曝される剥き出しの地面よりは雪の布団の下のほうが過ごし易い環境なのかもしれません。
北海道では早春の5月中旬 スモモの木の下に最初に咲いた オキナグサ |
大きな群落となったオキナグサ | 花の後の綿毛 | 綿毛の拡大 |
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