豊穣の森

ネジバナ(捩花)・モジズリ(綟摺)
(Spiranthes sinensis)


     
高さ20㎝程の株を単独、あるいは群生で陽当りのよい空き地や芝生に見かけます 
         
       
2~3㎜程の小さな花ですが、拡大してみれば紛れもなく蘭の姿 
       
 被子植物門  単子葉植物綱  ラン目  ラン科   ネジバナ属   ネジバナ種 
 Magnoliophyta  Liliopsida   Orchidales   Orchidaceae   Spiranthes sinensis 
  日本全土、ヨーロッパからシベリアにかけて温帯、熱帯アジア全域、オセアニア等広範に分布する野生の蘭です。
 陽当りの良い空き地や芝生に単独、或いはまとまって生え、7月~8月にかけて花を咲かせます。
 蘭とは言え、高さが20㎝程度ですから花の大きさは2㎜程度なので、虫眼鏡で確認しない限り、とても蘭のようには見えず、踏みつぶされたり、草刈りで一掃されてしまうこともしばしばです。
 それでも、どこからか飛んできた種が根付いて、庭の片隅や芝生の中に毎年花を咲かせます。
 可憐な姿と色合いに人気があり、園芸店で見かけることもありますが、ポットに植えたままでは、毎年咲かせることは至難の業です。
 というのは、ネジバナは根粒菌と共生して繁殖しているので、ポット植え、あるいは野生の株を移植しても長生きできないことが多いのです。白花種もありますが、野生では滅多に見かけません。

名前の由来


 学名の Spiranthes はギリシア語の " speira(螺旋) と anthos(花)”と、花序が捻じれて咲くことに因みます。種名の sinensis は中国原産ということです。
 和名のネジバナも捻じれて咲くことから。
もう一つの呼び名の ”もじずり”には多少の説明が必要です; 
 陸奥(みちのく)の国、忍夫(福島県信夫郡)のシノブズリの里では古来よりシノブ草(シダ科の植物)を染料にして、模様のある石に被せた布に染料を擦り付けて染めた、その模様が捻じれ乱れていることから綟摺り(もじずり)と呼ばれ、ネジバナの咲き方が、この染色の模様を偲ばせるため花の呼び名となったもの。
 この呼び名は平安時代、嵯峨天皇の皇子、後に河原の左大臣と呼ばれた、源 融(みなもとの とおる)が詠んだ歌 ;

陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆえに 乱れそめにし われならなくに   古今集 恋4・724

 にて遍く知られるようになり、これを本歌に 

春日野の若紫の摺衣(すりごろも)しのぶの乱れ 限り知られず     伊勢物語初段 在原業平

陸奥の信夫もぢずり 乱れつつ 色にを恋ひむ 思ひそめてき      藤原定家

等の本歌取りの名歌が続出したため未だに人々の記憶に残されています。 



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