豊穣の森
ビロードモウズイカ(天鵞絨網蕊花)
(Verbascum thapsus)
日当たりのよい斜面の上に5株ほど姿を現したビロードモウズイカ |
50㎝に達する1年目のロゼット | 世界の温帯地方に広範に繁殖するビロードモウズイカの、2mに達する偉容 |
被子植物 | 真正双子葉類 | キク類 | シソ目 | ゴマノハグサ科 | モウズイ属 | ビロードモウズイ種 |
Angiospermus | Eudicots | Asterids | Lamiales | Scrophulariaceae | Verbascum | thapsus |
ヨーロッパ、北アフリカ、アジア原産の二年生の双子葉植物。
北ヨーロッパでは低地から標高1850mまで、中国では1400mー4200mと広範な気候に適応して、世界の温帯地方の至る所に見られる。
日本には明治時代に観賞用として導入され、現在では30以上の都道府県に分布している。
最初の年は径50cmに達する大きなロゼットが姿を現す。
2年目に高さが2mに達する茎が伸び、その先端に50㎝程の花穂が伸び、数百の蕾が付き、小さく黄色の花を咲かせる。
花は一日花だが、初夏から晩夏にかけて次々と、3か月以上咲き続ける。
一つの花から700以上の種ができるから、一本のビロードモウズイカからは総数で18万~24万の種が出来ることになる。
しかし、種は1m以内に散布されるのみで広範に広がらず、さらに日当たりの良い半乾燥地を好んで、他の植物と競合して繁殖が出来ない。
つまり、ルピナスやセイタカアワダチソウのように他の植物を排除して一面に生い茂ることがないため、深刻な農業雑草とはならない。
学名の thapsus は、シチリアにあった古代ギリシアの植民都市,タプソスに因み、この地方産の種不明の薬草の名に使われていたとのこと。
この花からとれる精油にサポニン、クマリンや多糖体が含まれ、殺菌作用、去痰作用、抗腫瘍作用を持つため、古くから薬草として使われていた。
わが庭には、2年ほど前から日当たりのよい斜面にロゼットが姿を見せていたのが、今年になって5株ほどが一斉に伸び花を咲かせるようになりました。
二年生で冬を越さないと花が咲かない植物は、チューリップやルピナス、苧環等々、数多くありますが、これは冬の休眠期間中に低温によって根の澱粉質の分解が活性化されるためとのことです。
漢字の天鵞絨網蕊花といういかめしい名前に加えて、日当たりの良い乾燥地に聳え立つ様に咲くこの植物は一度見ると、その存在感に思わず感嘆してしまいます。