豊穣の森

小褄取草(コツマトリソウ)
(Trientalis europaea var. arctica)

6月初旬、北海道の森に咲く小褄取草 1cm余りの清楚な白い花


植物界 被子植物門 双子葉植物綱  合弁花植物亜綱   ツツジ目   ヤブコウジ科   ツマトリソウ属  コツマトリソウ亜種
Plantae Magnoliophyta Magnoliopsida Sympetalae Ericales  Myrsinaceae Trientalis Trietalis eueropaea var. arctica
 
   6月初旬の北海道の森の中、車葉草の群落の周囲に可憐な白い花が咲いているのに気がつきました。
背丈が10cm ほど、花の大きさも1cm余りと小さく目立たないので何時やって来たのかは不明です。
 何時ものように植物図鑑をしらみつぶしに探して、どうやら褄取草 (Trientalis europaea) らしいと判明しました。
 北半球の亜寒帯と高山帯とに広く繁殖しています。その後色々と調べると、葉の先端が丸くなっている変種の小褄取草とするのが正しいようです。
 もっともその差はごく僅かで、地域や個体による違いといっても良いほどのように思われます。花弁は6枚〜8枚です。
 和名の由来は花弁の縁がうっすらと赤味を帯びるものがあるため、着物の裾(褄)を連想させることに由来するのだそうです。
 端取草とも、或いは妻取草と、なかなか風情のある呼び名です。
 一方、学名の "trientalis : 足の三分の一" とはこの花の背丈に由来しますが、如何にも苦し紛れの命名ですね。
 
 分類は日本語の全ての資料でサクラソウ科となっています。
 花も葉もまるで似ていないのに何故サクラソウ科の花なのか?
Wikipedia の英語版で調べると全く別のツツジ目ヤブコウジ科となっています。確かに褄取草はヤブコウジの方に似ています。
 植物の分類については私は全くの素人ですが、英語版による新しい分類のツツジ目、ヤブコウジ科を採用します。

 植物の分類はリンネの形態による分類法に基づいて19世紀末にドイツの植物学者A.エングラー (Adolf Engler) が確立した分類学が全植物を分類する基準として現在も広範に使われています。
 しかしながら、1980年代にアメリカの植物学者、A.クロンキスト (Arthur Cronquist : 1919−1992) による被子植物の進化を前提とした分類へと発展し、さらに1990年代以降はDNA解析による系統発生論によるAGP (Angiosperm Phylogeny Group : 被子植物系統発生論グループ) 分類法への移行中なのだそうです。
 膨大な植物群の全てのDNA 分析はその途上にありますから、古い分類と新しい分類とが混在するための混乱が起きているようです。
 分類がどうであれ、こんな清楚な花が何処からか我が庭にやって来て定着し繁殖しているのは嬉しい限りです。地下茎で繁殖するのだそうで、次の夏が楽しみです。


車葉草の群落の周囲にいつの間にかやって来てひっそりと咲き始めた小褄取草

褄取草(Trientalis europaea)
名前の由来となった花弁の
縁が紅を差した褄取草
が、殆どの花は純白


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