豊穣の森


ツバメオモト・燕万年青
(Clintonia udensis)


     
北海道から奈良県以北の亜高山帯に分布し、初夏に咲くツバメオモトの白い花  晩夏の青い実 


     
 夕張山のツバメオモト 7月初旬 美深、松湿原山付近に咲くツバメオモト  8月末の青い実 


 
スズラン亜科のオモト(万年青) 


被子植物   単子葉類   ユリ目  ユリ科   ツバメオモト属   ツバメオモト種 
 Angiosperms   Monocots   Liliales   Liliaceae  Clintonia  C.udensis 
 もう 20 年余り昔のことですが、北海道に移り住んで、札幌近郊の山歩きをしていた頃、山道に何とも可憐で清楚な白い花を初夏に、晩夏の頃には目に染みるような青い実をつける植物に何度となく出会いました。
 植物には疎かったのですが、何故かこれがツバメオモトであると、分かりました。
恐らく子供のころ、どこかの家で見かけて名前を教えられ、この清廉な印象の白い花と、夏の盛りに成る青い実の色とが記憶に残っていたのでしょう。

名前について

 オモト(万年青)は、中国から日本の暖かい山地に自生するスズラン亜科の常緑多年草です。
江戸時代ころから緑の葉と赤い実の組み合わせが愛好され、広範に栽培されていました。
 戦後、未だ、現在の様な多様な園芸植物が数少なかったころは、日本に自生するオモトは人気のある園芸植物として多くの家庭で見かけたものです。
 ツバメオモトは、ユリ科、ツバメオモト属と、分類こそ異なりますが、オモトによく似た葉と、清楚な白い花と、青い実とが好まれて、同様に園芸植物として広範に栽培されていたでありましょう。
 青い実の色がツバメの頭の色に似ているためにツバメオモトと命名されたとのこと。
実際、この深い紺色は、ツバメの頭の色を思わせます。

 ツバメオモトは東南アジア、日本の北海道から奈良県以北の亜高山帯の林内に分布します。
学名の Clintonia はアメリカの博物学者、かつ政治家の DeWitt Clinton (1769 - 1828) に、種名 Udensis とはシベリアの Uda 川に因みます。  
そんなわけで、ごく普通に山歩きをしていてもよく見かけるのですが、近年、北海道を始め、東北の山地にはヒグマやツキノワグマが頻繁に出没するようになってしまい、到底一人で山歩きなど出来ないような環境になってしまいました。
 
 写真は2010年~2015年頃、、夕張岳や雨竜山地、村上春樹の”羊をめぐる冒険” の舞台となったと考えられる美深松山湿原周囲の山地巡りの際に見かけたツバメオモトの写真です。
 当時も山に入る際には、笛やタンバリン、幸いなことに、試したことはありませんが、万一の際に熊避けが期待できる大音響発生装置等々、入念な準備の下に出かけたものです。
 しかし、現在、北海道や東北では町中でさえも熊が頻繁に出没するような有様となってしまい、到底山に入れるような状況ではなくなってしまいました。 

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